No3 妹の策略
今度という今度は許せない!
わたしは2階にドンドン、という音をわざと立てながら階段をあがった。
ノックもせずにドアを勢い良く開ける。
「アイス!食べたな!」
「おねえちゃんのだったのー?ごめーん」
悪びれもせずベッドでスマホの画面をいじっている、
父に似た顔を持つわたしの妹。
「なんで毎回わたしの食べかけだって分かってるのに食べちゃうのよ!」
そう、妹はわたしの食べかけばかり狙って食べるのだ。
自分の分はあるし、なんならわたしに分けてくれる。
でも、最初から自分のアイスを食べてくれたらいいのに。
「だって、そっちのアイスもおいしそうだったんだもん」
「同じ抹茶味でしょ!」
「なんかおねえちゃんが食べてるとおいしそうに見えるんだよ、そっちのほうが」
「もう!」
怒ってはいるけど、こんな妹を嫌いになり切れない。
なんだかんだこの子はわたしにやってくれることが多い。
いつも助けてくれるし甘えてくるときはかわいい。
でも、それはそれとしてアイスは別だ。
「ごめんごめん。わたしのあげるから」
そういうと、スマホをおいてパタパタと階段を駆け下りていった。
自分の分のアイスを取りに行ったんだろう。
それなら最初から自分の食べてよね。
ピコーン。妹のスマホから通知音が鳴った。
気になったわたしは、アイスのおかえしだと
スマホに表示されたメッセージを勝手に見た。
そこには、「わたしも今日はふたりだけだからやるよ。そっちもがんばってね!」
と友達からのラインだった。
「ゆかちゃんからか」
この子は妹の友達で、私の友達の妹だ。
そういえば、今日は友達も暇だって言ってたし、
遊びに行こうかな?妹もつれて。
そんなことを考えていると
「おねえちゃん、はい」
妹が自分の食べかけのアイスをもって部屋に帰ってきた。
「食べさせてあげるね」
「いいよ、自分で食べるよ」
「いいからいいから」
あーんと口をあげて。食べさせてもらう。
自分で食べるっていうのに、悪いことしたからって
むりやり食べさせに来る。
一応抵抗はするんだけど、もう何度言っても
聞いてくれないからあきらめた。
「わたしのスマホみた?」
「見てないけどライン来てたよ」
「そっか」
妹がスマホを既読にして、そのままベッドにおいた。
「今日は友達のとこに行こうかと思ってるんだけど一緒にいかない?」
「ゆかちゃんのおねえちゃんのとこ?なら無理だよ。いまから二人きりで遊ぶって言ってたから」
「めぐちゃんとラインしてたんだ」
「そうそう」
それならやめとこうか。めぐちゃんはおねえちゃんにべったりだからなー。
うちもそうだけど、あんな風に見えるんだろうな。
「私たちもなんかしようか」
「そだね。今日はおかあさん達もいないしね」
親は今、久しぶりにふたりきりで旅行に行っている。
わたしたちがたまにはデートしてきなよって進めたのだ。
「でも、ちょっとだけ寝てからでいい?」
なんだか急に眠くなってきた。
ご飯をたべて、甘いものを食べたからかな?
遊ぶのはそれからにしよう。
「もちろんいいよ!部屋までいくの大変でしょ?わたしのベッド使っていいよ」
そうだね。っと言葉に出すのも面倒なほど眠い。というより体が重い。
ここは妹の言葉に甘えよう。
「30分くらいしたら起こしてくれる?」
「眠いなら、もっと寝たほうがいいよ。ほら、はやくはやく!」
急かされるようにベッドに手を引かれて横たわる。
だめだ、まぶたが重い。
「おやすみ」
「ゆっくり寝ててね」
瞼が落ちきる前に見えた妹の表情は、
ゆかちゃんが姉を見るときと同じように艶めまかしく見えた。
妹がお姉ちゃんを襲う話でした