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お試し!即興短編小説集  作者: アルマンド
2/40

No2 体が軽い

 体が軽い。

 羽のように軽く体が浮いているようだと、そんな表現されるけど。

 その通りだと思う。おれの体はまさに羽だった。

 なんと、おれは空を飛んでいるのだ。ふわふわと。 

 どちらかというと宙に浮いているという感じかもしれない。


 世界がゆっくりと動く。地面に引かれて。

 こんな体験したら、もう地を這うように歩くことなんてできない。


 そういえば、約束がなかったっけ?

 なんで忘れていたんだろう。

 おれは約束してたんだ。あの子に会う約束。


 彼女との思い出が頭を駆け巡った。

 楽しく笑いあったこと。喧嘩しあったこと。

 将来のこと。


 プロポーズする予定だったんだ。

 今日のデートで。夜景の見えるレストランでサプライズも用意していた。

 でも、もうそれはできないな。


 おれは車にはねられたんだ。

 だから、これは走馬灯ってやつだろうな。

 ゆっくりと地面が近づいてくる。

 もういちど地面と触れ合うとき、おれはこの生涯を終えるんだろう。


 後悔がないといえばうそになる。けど、この体験はおれに希望をくれた。

 死んだら、こんな風に空を漂いたいな。

 地面が目の前に迫って、おれの意識は宙に浮いたまま消えていった。

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