第41話 それから
あれから、俺はなんとか手柄をアルトに押し付けることに成功した。
王様も、婚約のことについてそれ以上は言ってこなかった。
アルトは、王様から大量の金と、領地と爵位をもらったそうだ。
平民であるアルトが、晴れて貴族の仲間入りってわけだ。
あれだけ頑張ってくれたアルトが報われて、俺もうれしい。
根はいいやつだからな。善人がちゃんと報われるのはとてもいいことだ。
クレアとアルトの仲も、けっこううまくいってるみたいだ。
俺が完全にクレアを振る形になってしまったからな。
まあ、クレアとアルトがくっついてくれれば、俺としてもうれしい。
それはまあ、お互い奥手だろうから、長い目でみるか。
で、あれから数年が経った。
俺はアーデと仲良く楽しく暮らしている。
ハインリヒ貴族学園も卒業し、俺は20歳になっていた。
もう酒を飲める歳だ。
っていっても、それは日本でのことで、こっちでは16から飲めるんだけどな。
そんなある日のことだ。
俺の父である、ドフーン・シュマーケンが死んだ。
まあ、元々ろくでもない人間だったし、特に悲しみはない。
歳のせいもあって、病気で死んだのだ。
てなわけで、俺がシュマーケン家を継ぐことになった。
これからは、この家を俺の好きにできるというわけだ。
それに、魔王も討伐したことだし、俺は自由だ。
クレアやアルトのことも片付いた。
俺にはもう破滅フラグはやってこない。
すべての破滅フラグを回避したのだ。
「やったああああああああ!!!! 自由だあああああああああああ!!!!」
俺にはアーデという愛する人がいる。
それに、ドミンゴたちという忠実な奴隷たちもいる。
アルトのように、慕ってくれる仲間もいる。
もうなにも恐れることはない。
俺はこれから、自由に生きるんだ。
念のために貯めていた金も、腐るほどあるしな。
これはアーデと新婚旅行でもいくかな。
俺は、アーデと結婚することにした。
正式な結婚だ。
父ドフーンが生きているうちは、アーデのことはまだ伏せていた。
あの奴隷を嫌悪し差別していた親父のことだ、アーデのことを言ったら、どうなっていたかわかったもんじゃない。
親父が死んだことで、俺は晴れて正式にアーデと結ばれた。
式は、金をありったけ使って盛大に行った。
王都の教会を貸し切って、いろんな人を呼んだ。
魔王討伐隊のみんなや、学園でお世話になった人。
それから、セモンド伯爵に、ハレルヤにフレイヤ。
シャンディの一家にルミナ。
もちろんドミンゴやオットーたちもだ。
ちなみに、マードックは昨年亡くなった。
マードックの治療には結構な努力をしたが、さすがに寿命までは変えられないようだ。
王様やアルトも招待した。
ウエディングドレス姿のアーデは、それはもう綺麗だった。
「旦那様、私、今とっても幸せです」
「アーデ、俺もだよ」
俺とアーデは幸せなキスをした――。
◆
結婚式が終わったあと、俺とアーデは寝室で二人きりになる。
今はもう、この子が俺の奥さんなんだ……。
そう思うと、感慨深い。
そういえば、アーデと出会ったのはもう10年も前のことか。
あのころ俺はまだ10歳だったな。
アーデは俺より4つ年上で、もう24歳になる。
とはいっても、エルフは大体17歳で見た目がストップする。
だからアーデはまだまだ若いままだ。お肌もぴちぴちだ。
「旦那様、やっと二人きりになれましたね」
「そうだな、アーデ。これからも、一生よろしくな」
「はい……! それより、はやく旦那様と一つになりたいです」
「ああ、俺もだ。おいで」
そうだ、俺たちにはもうなにもしがらみはない。
俺たちを阻むものはなにもない。
俺たちはもう夫婦なんだ。
子供ができたら、俺はアーデとともに一生守っていくつもりだ。
きっと、俺たちの子供は賢くてキレイだろうな。
◆
そんな幸せな日々が続いた。
そして幸せな日々は、そのまま永遠に続くかとすら思えた。
だがある日、事件は突然起きたのだった――。




