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第32話 あ、これ詰んだわ


「――ぜひ、娘のクレアと結婚してくれ」

「はい…………?」


 あ、これ詰んだわ。

 俺は自分の耳を疑った。

 まじか……王様マジか……。

 クレアと結婚って……。

 ちらっとクレアのほうを見ると、向こうも乗り気な様子で、俺のことをキラキラと期待に満ちた目で見つめてくる。


 さすがにこれ、断れないよな……。

 いやこれ、アーデがなんていうか。

 アーデの方を見ると、アーデは虚空を見つめて、ものすごい神妙な顔をしていた。

 これ、絶対後でアーデにめっちゃ嫉妬されるぞ。

 奴隷だから大丈夫だとは思うが、アーデに刺されるのだけはごめんだ。あとで絶対フォロー必須だな。


 王様から娘を貰ってくれって言われて、それ絶対断れないじゃん。

 まあ、クレアは美人だし、姫さまだし、それはうれしいんだけど。

 姫様と結婚すれば、いろいろと安泰にはなるかもしれない。破滅フラグ回避の一助にもなるか?

 いや、いろいろと王族ってのもめんどくさそうだな。

 だが、そもそも断れないからな……。うーん。


 クレアに普通に告白されたとかなら、まだ断る手はあった。

 だが、これは断れない……。まさかの断った方が死亡フラグっていうね……。

 あれぇおっかしいなぁ……。


「わ、わかりましたぁ……よ、よろこんでぇ……(震え声)」

「うむ!」


 俺は仕方なく、OKの返事をするしかなかった。

 うわぁアーデがすごい目でこっちを見つめてくるよぉ……? これ、後で刺されないよね? マジで。

 しかも、ミレイのことも気になるな。ミレイとクレアは友達でもあったはずだ。

 クレアとの婚約が知れたら、絶対ミレイから恨み買うよな……。

 くそ、どう転んでも安全地帯がない。

 幸い、お姫さまと結婚して王族になれば、社会的地位も確立される。

 変な噂を流されたりして社会的に死ぬことにはならなさそうだが……。


 まああくまでまだ婚約だ。

 そのうちなんとかうまくいくだろう……。

 だがこれで、いよいよ引き返せなくなったな。

 クレアと婚約したら、そのまま魔王討伐させらるに決まってる。

 一応、魔王は討伐する気ではいたけど、本当に大丈夫なのか?

 俺、まだ戦闘経験とか全然ないからな。

 魔王復活までに、いろいろとやっておかないとだな……。


「それでなんだが、ぜひエルドくんには魔王討伐にも参加してもらいたいのだ。きみが魔王討伐の英雄となれば、クレアとの結婚に反対するものもいまい。もし本当に魔王を倒せた暁には、この王座を譲ってもいいと考えている」

「お、王座を……!? も、もちろんです」


 待てよ、それなら悪い話じゃないかもしれないな。王とまでなれば、外的要因で破滅されらることもそうそうないだろう。

 まあ、国が傾いてクーデターとかでもおこされれば別だが。幸い、今の国の状況は安定しているし。

 とにかく、これは破滅フラグ回避へとまた一歩近づいたかな。



 ◆



「すみません、父が勝手なことをいって」


 俺はクレアの部屋にいた。クレアは俺にそうあやまってきた。


「いや、別に……。姫様と婚約なんて、光栄な話だよ」

「お嫌でなければいいのですが。私としては、エルド様と婚約できてうれしゅうございます」

「お、俺も……別に嫌じゃないさ。うれしいよ」


 クレアは最高に美人だ。それに姫さまだし、願ったりかなったりだ。

 ただまあ、いろいろと問題はあるけど……。

 もう他に選択肢はない。逃げることはできないのだ。

 それに、さっきからクレアの胸の谷間に目が釘付けになって、俺の気持ちが揺れ始めている。

 なんのつもりか、クレアはめちゃくちゃ露出のある部屋着を着ていた。

 しかも、なんかいい匂いが部屋中に充満している。


「ねえ、エルド様」

「ひゃ、ひゃい……!?」


 俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

 クレアは胸を俺の腕にひっつけて、甘い声で囁く。

 あの……顔が近いんですが……!?

 正直、俺はこれまで、あまり女性経験が多くない。

 もちろん、奴隷とそういうことをすることは多々ある。

 だが、奴隷以外とは、まだあまり経験がない。

 しかもあいては姫様だ。


「既成事実、作っちゃいません……?」

「ふぇ……!?」


 そういうと、クレアは俺をベッドに押し倒した。

 なんて積極的なお姫様なんだ……。

 俺はそのまま、なすがままに服を脱がされる。

 くぅ……この胸板に当たるおっぱいの感触のせいで、抗えない。

 既成事実……これはなんとしても俺に魔王討伐させるつもりだこの親子。

 ええい、ままよ。

 俺はそのまま、クレアの唇を奪――。


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