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第1話 破滅しかない


 転生したのがいわゆるゲームの噛ませ犬――悪役転生だと気づいたのは、俺が6歳になってからのことだった。

 俺は生前、日本というところで暮らしていた。

 しかしどういうことか――目が覚めると、ファンタジー世界の貴族であるエルド・シュマーケンに転生していたというわけだ。


「あれ、なんかこの顔知ってるぞ」


 ひどく人相の悪い顔だ。悪人が染みついている。目つきが悪い。

 俺はそんな自分の人相に見覚えがあった。もちろん、前世でのことだ。


「そういえば、死ぬ直前にプレイしていたゲームのキャラに似てるわ……ああ、あいつだ」


 朝、鏡で顔を洗いながら、そんなことに気づく。

 しかしゲームのキャラとはいっても、それは主人公などではなかった。


 【エゴイスティック・ファンタジー】――リアルなグラフィックと多岐にわたる深いシナリオが評判の、本格ダークファンタジーもののRPGの金字塔的タイトルなのだが……。


 エルド・シュマーケンといえば、その中に出てくる、破滅フラグ必死の悪役貴族キャラなのだった。

 ラスボス直前に出てくるボスで、厄介な魔法を使ってくるので、ラスボスよりも強いんじゃないかと噂されるほどの強キャラ。


「あ、じゃあ俺もそのうち死ぬのかな……?」


 齢6歳にして、俺は自分の死期を悟った。


「このキャラ、どのルートでも悲惨な目にあって死ぬんだよなぁ……。まあ、そういう奴だししゃーない……」


 エルドはゲームの中で、どうプレイヤーが手を尽くしても、死んでしまう運命にあった。

 主人公に対する最凶の悪役として現れ、見事に倒され、死んでいく。まさにかませ犬としては、ばっちりな死にざまのキャラだった。

 いわゆるヘイトキャラというやつだ。

 だがしかし、そんなエルドに転生してしまった今、俺は死ぬわけにはいかない。

 せっかくこうしてゲームの世界に転生したんだから、当然だよな?


「だったら、いっちょ破滅回避めざしてみますか!」


 俺はいろいろ、小説とかで読んだことがある。

 こういう破滅ルートしかないキャラに転生した場合でも、やりようによっては生き残れたりもするもんだ。

 まだ気づけたのがこの歳でよかった。

 エルドが死ぬのは、もっと大人になってからのはずだからな。

 考えよう。自分がどうすれば、生き残れるのかを――。





 世は大奴隷時代――、

 あらゆる貴族が奴隷を買い、あらゆる商人が奴隷を取り扱っている――そういう時代だった。

 そんな中において、シュマーケン家は、代々奴隷商人の家系だった。


 ゲームの中のエルドは、それはもうひどい男だった。

 いくら奴隷とはいえ、普通扱いってもんがあるだろう?


 ましてや商人からすれば、奴隷も大事な商品だ。そんな商品を自ら傷つけたり、その管理を怠ったりするようなやつは商人失格。だけど、エルドはまさにそういうやつだった。


 そのせいで、エルドは最後、破滅してから、元奴隷たちからひどい扱いを受けるんだ。

 手足がちぎれても治療してもらえずに、死ぬまで欠損奴隷としてこきつかわれる。

 俺は、そんな未来はごめんだ。


「そういえば、エルドってどのルートでも欠損奴隷になってたっけ……」


 ということは、自分で治療できれば問題ないのでは……?

 幼い俺は、そう考えた。


「そうだ!死なないために、今から回復魔法を修行しよう!」


 まだ俺は6歳だ。魔法の適性なんかも固まっていない。

 今からなら、そこそこの回復魔法を身に着けられるんじゃないのか?

 ゲームのエルドは、暗黒魔法や奴隷魔法、その他悪さに使えそうな魔法ばかりを使うキャラだったっけ……。

 まあ、元のエルドの性格からすればそうなるんだろうな。


 だが、俺は死にたくないから、自分のために回復魔法を勉強することにするぜ!

 エルドのもともとの魔法適正や才能を考えれば、それくらいたやすいだろう。

 これでも一応、ボスの中では最強格として登場するんだ。そんじょそこらのモブよりは才能もあるだろう。

 まして攻撃魔法とかに費やす才能を、全部回復魔法に費やしたりなんかしたら……いったいどうなるんだ……!?

 もしかしたら、俺は最強の回復魔法使いになれるかもしれないじゃないか!


 その日から、俺の回復魔法の修行が始まった。





 幸いなことに、シュマーケン家はけっこう――いや、かなり裕福な家庭だった。

 奴隷商として、かなりの成功を収めていた。

 そのおかげもあって、家にはたくさんの本があった。

 一度大人まで人生をやってる俺にとって、本の内容を理解することはそれほど難しいことではなかった。

 6歳から回復魔法だけに専念しているおかげで、サクサク学習が進む。

 正直、初めて勉強を楽しいと思えた。


「あれ、もしかして俺、回復魔法の適性けっこうあるな?」


 ゲームのエルドにこんな回復魔法の適性があるとは、思わなかった。イメージが違いすぎる。

 これはエルドのもともとの魔法適正自体が優れているということなのかな。

 まあ、元のエルドは性格的にも絶対回復魔法なんか覚えようとはしなかったのだろう。

 それにエルドは真面目に修行するような奴でもないしな……。


 だが俺がこうやってちゃんと回復魔法を身に着けておけば――将来破滅したときに、自分で自分を治せる!

 正直、この作戦は完璧だと思った。最強クラスまで回復魔法を身につけておけば、あらゆる状況に対処できる!





「自分だけじゃ回復魔法の修行も限界だな……」


 そう思った俺は、誰かけが人を探すことにした。

 シュマーケン家では、とにかくけが人に事欠かない。

 どういうことか――。


「このウスノロめ! 使えない奴隷だ! 死ね!」

「ひぃ! 旦那様、お許しを……!」


 ちょうど、今日も奴隷の一人が父にいびられている。

 エルドの父であるドフーンも、またひどい性格の持ち主だった。

 いくら奴隷とはいえ、まるで人間扱いしていない。ストレスのはけ口に、自分の奴隷を使っていた。

 俺は殴られていた中年の奴隷に、あとから話しかける。


「おい……」

「ひぃ……エルド坊ちゃま……! 殴らないでくださいまし……!」

「殴らないよ……」


 まったく、元のエルドはいったいどんな行動をしていたんだよ……。まだ6歳だってのに、邪悪なもんだな。ま、そんなんだからロクな目にあわなかったんだけど。


「俺が回復魔法で治療してやるよ。動くな」

「え……? あ、ありがとうございます……?」

「ほい、これで動けるか……?」

「坊ちゃま……お優しいのですね……」

「俺は優しくない。これは自分の練習のためだ」


 そうだ。俺は別に優しくなどない。本当に優しいやつなら、今すぐ奴隷をここから逃がしてやるだろう。

 だけど、そんなことができるような状況でもないし、するつもりもない。

 父に奴隷を殴るのをやめさせるような面倒なことをする気もない。

 ただ、これは将来の俺のために、回復魔法の練習台にしただけだ。

 だから、俺は決して優しくなどはないのだ。

 不思議なことに、元のエルドの性格が乗っかっているのだろうか。俺の中から、優しさや同情といった感情が薄れているのを感じた。

 まあ、そんなことはどうでもいい。俺は、俺が生き残るためにベストを尽くすまでだ。


 ふと、治療してやった奴隷の顔を見て思い出す。

 そういえば……破滅したあとにコイツに仕返しされるんだったよなぁ……。

 本来ならエルドは破滅して奴隷の身分に落とされることになる。

 そのときに、エルドは今までの仕返しとばかりに、奴隷仲間たちからひどい仕打ちをうけるのだ。

 まあ、回復魔法でそうならないようにはするつもりだけど……。

 一応、媚びを売っておこう。


「おい、また父に殴られたら、俺のところにこい。治してやる」

「あ、ありがとうございます……! やっぱり坊ちゃんはおやさしい!」


 こうして、俺の回復魔法はすくすく成長していった。


まずは読んでくださりありがとうございます!

読者の皆様に、大切なお願いがあります。


もしすこしでも、

「面白そう!」

「続きがきになる!」

「期待できそう!」


そう思っていただけましたら、

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