小六のときの天才
「江本、三か月ぶりだな、会うの」
緑道を通っていたら、高本が後ろから声をかけてきた。
「そうだね、大学どう?」
「そんなことより、とんでもないことが分かってさ」
高本は少し興奮しながら話し始めた。
「俺、塾講師のアルバイトを始めたんだけど」
たしか高本自身も通っていた大手塾で、テレビや電車の広告もやっている有名なところだ。
「やっぱり、あいつ天才だったんだよ」
あいつというのは、同級生(男)のことだ。小学六年生で、すでに身長が百七十センチを超えていた。見た感じ高校生に間違えられる風貌で、本人も「俺、変質者だから」と自虐で言っていた。
彼は高本と幼稚園がいっしょで、小学受験もしていた。しかし、第一希望に受からなかったということで母校に通うことにした。中学受験では、国内でも一番難しいと言われる中学に合格。これは母校はもちろん、近隣十校くらいを含めても初めて合格という快挙だった。
授業参観の算数の授業で、先生も分からないような解答をして皆を驚かせたことがあった。それを見た父親は「一人、とんでもないのがいたな。あれは間違いなく天才だ」と言った。僕も「あいつ天才の可能性がある」と言ったが母親には「頭のいい集団に入ったら、普通くらいかもね」と言われ、否定された。
「六年生は、毎月のように模試があるんだけど、あいつの順位何位だったと思う?」
高本が聞いてきた。僕が数秒間、考えていると衝撃の答えが返ってきた。
「国語、算数、理科、社会、四教科の合計点で、全国一位」
僕はそれを聞いて、空いた口が塞がらなかった。と同時に自分の感覚が間違ってなかったんだと安心した。
「なっ、すごいだろ。教室の壁に名前、出身校、全国一位って書いてある紙が貼ってあってさ。俺も最初は見て、びっくりしたよ」
母校は都内ではワーストに入るくらい学力が低いといわれている学校だ。それなのに、全国一位が在籍してたなんて。
「だけど、今はどうしてるか知ってる?」
高本に聞かれたので、僕は少し考えてから言った。
「最後に見たのが、高二のときだよな。神社の祭りで、一人でいるところを見たよ」
「だよな。だけど、ひきこもりになったらしいよ」
高本がさらっと言った。僕は少しショックを受けたが、本当なの?情報の出どころは?という感じだ。
「たぶん、頭が良すぎたんだろうな」
今回の話ですが、信じられないと思いますが本当の話です。
同級生の母親が「銀行でお金をおろしているところを見た」と言うのが、最後の目撃情報です。そのとき「二十歳には全く見えないくらい老けてて、三十過ぎたおじさんみたいだった」と言ってました。
彼の家にも行ったことがあります。みんなで、マリオカート64を遊びました。彼の腕前は、64マリオスタジアム(テレビ東京の番組)に出演できるレベルでしたが、本人は「別にいいや」と言ってました。今みたいに簡単に応募できる環境ではなかったので、面倒だったんでしょう。家ですが二十歳前後に引っ越したので、現在は分かりません。




