大学入試のアルバイト
一月は二週間ほど授業をやったあと、すぐにテスト期間に入った。僕は春学期の反省を踏まえて、計画的にレポートを作成したり、勉強をしていた。おそらく単位は取れているだろう。
僕は学内の大学入試のアルバイトに応募した。すると職員から「付属校でやってくれないか?」と言われた。毎年、希望する人が少なくて困っているとのこと。最寄り駅を聞いても全くピンと来なかったが、路線図が書かれた地図を見たら意外と家から近い場所だった。僕は「大丈夫です」と答え、参加することにした。
当日、家から一時間ほどで着いた。駅から徒歩十分かからないし、アクセスも悪くない。校舎は少し古そうな感じがしたが、中に入るときれいだった。先にいた職員の指示で、控室に進む。
「あれっ、江本じゃん」
控室に入ると、谷岡がいた。
「どうも、相沢です」
時間になると、職員がやってきて説明が始まった。時間厳守はもちろん、身だしなみ、心構えなど当たり前のことばかり。しかし、教室を見渡すと、少しあやしいメンバーもいた。埼京大は、もうひとつキャンパスがあり、そっちの方だろう。何度か「ヤンキーが多い大学だよね?」と言われたことがあった。その度に「埼玉にあるキャンパスに通ってて」と訂正していた。
この日は、入試の前日準備だった。職員の指示で机を運んだり看板を立てたり。あらかじめ剥がしてあるはずだが、教室の掲示物が剥がし忘れてないかを確認したりもした。というのも、受験で使用する教室は、普段は生徒が使っている教室もあったからだ。
二日目以降の業務は、主に二つに分かれていた。一番のメインは、受験している教室の監視だ。解答用紙や問題文を配ったりするのは職員(教授)だが、後ろで監視する役がアルバイトの学生だった。スーツ着用で女性中心でやることになっていた。
もうひとつは、何かあったときの伝達役。受験している教室のすぐ近くにいて、何かあった場合は本部まで連絡する。廊下なので暖房もなく、かなり寒い。女性が体調不良を訴えることが多かったため、男性中心になったということだった。それと駅から試験会場まで誘導だ。
三日間とも、試験会場の誘導と伝達役だった。付属高出身の人は、最寄り駅の近くで看板持ちをした。遅刻者がいた場合、会場まで連れて行くのだが誰も遅刻をしなかったとのこと。けっこうな人数が受験しているので、無事に受けられてよかったと思った。しかも、一教科目の途中まで駅にいるので、休憩時間が他の人より多くてラッキーなんて話をしていた。
控室では学部、学年関係なく楽しく話すこともできた。一部、態度の悪い学生もいたが、最終的には次年度以降は出禁になった。少しでも新年度に入る受験生のためになれただろうか。僕の大学生活で数少ない四年間続けた活動のひとつだった。




