クラス別オリエンテーション
学部別の新入生オリエンテーションは、少し早く終わったようだ。次はクラス別のオリエンテーションと予定表に書かれているが、どこの教室かは書かれていない。
「新入生のみなさーん、こちらで教室を確認してください」
7号館を出て困ったなと思っていたところで、職員の声が聞こえてきた。掲示板に人が群がっていたので、張り出されているようだ。
「教育学部は、各専修ごとになります」
僕は自分の所属する社会専修を探す。すぐに見つかり「11号館」と書かれている。
どこだ?と思い、ふと左を見たら…11号館と書かれた看板があった。外観は7号館よりはきれいだが、そんなに新しいという感じはしない。近くでよかったと思い、建物に向かった。僕と同じように何人か入っていくのが見える。
「二階の奥の部屋でやるので、階段を上がってください」
五十代くらいの女性の指示で、二階に向かう。二階に着くと、こっちと言いながら手招きをしている女性と男性がいた。私服だから同じ専修の先輩かなと思いながら教室へ向かう。
僕は軽くお辞儀をして教室に入った。黒板に「学籍番号と同じ場所に座ってください」と書かれていて学生証を出して番号を確認して席を探した。
「おっ、どれどれ?」
教室の前にいた男性が、後ろからのぞき込むように見てきた。体格もいいし、僕は少しドキッとしたがすぐに「そこだな」と言いながら指で場所をさしてくれたので安心した。
「中学生みたいだな」
やっぱりそう見えるかと同時に初対面で失礼なと思いつつ「ありがとうございます」と一言だけ言って座った。周りを見渡すと、みんな緊張してるなって感じだった。
キーン コーン カーン コーン。
どうやら二次限目の始まりのチャイムのようだ。教室の前方にある時計を見ると、十時半を指していた。
「おっ、今年の新入生は、おとなしいのかな」
少し身長の高い男性が前方から入ってきた。続いて男性が三人入ってくる。
「えーっ」
大きな声が聞こえてきた。何だと思い、後ろを振り返ってしまった。
「ちょっと驚きすぎじゃないか」
一番最後に入ってきた男性が眉間にしわを寄せて言った。
「全員、揃ってますか?」
階段の下にいた女性が教室の後ろの扉を閉めながら、揃っているか確認しているようだ。
「席は埋まっているから大丈夫そうですね」
二番目に入ってきた男性が言うと、にっこりと笑顔になった。
「新入生のみなさん、ようこそ教育学部社会専修へ」
そういうと、全員が軽くお辞儀をした。
「まず、我々から自己紹介します。片山昭夫といいます。埼玉県の公立小学校で、三十年教えてきました。縁あって埼京大学の教授となり、気づけば五年。一応、私が社会専修の中では、一番偉い先生になります。これから四年間よろしくお願いします」
元小学校の先生って言われたら、あーやっぱりって感じがする。見た目は、優しそうなじいちゃんだ。
「木本裕次郎といいます。私はかれこれ埼京大の教授になって、三十年くらいかな経ちました。この四人の中では、一番歴は長いです。早速、来週から授業があるので楽しみにしています」
一番最初に教室に入ってきた先生で、一番背も高く一番歴が長い。それなのに、ポジション的には下なのは、なぜだろうと思った。
「佐村憲悟です。四人の中では一番若く、今年で三十九歳です。私の授業も来週からあるので、よろしくお願いします」
大学の先生なんて五十歳以上なんて思ってたから、まさか三十台の先生がいると思わなかった。パッと見た感じだと、サザエさんに出てくるマスオさんみたいだ。
「最後になりますが、今年から教授になった根本雅則といいます。この三月まで、付属高校の教頭をやってました。驚いたと思うけど、あんなに大きな声を出さないように。知ってると思うけど、私は厳しいから、よろしく」
話し方から厳しそうというのが伝わってきた。
「あと後ろにいる女性は、事務の戸村さん。それと事務の補佐が、高市さんと池村くん。この三月に社会専修を卒業した君たちの先輩だから、いろいろと分からないことを聞くといいかもね」
三人とも軽くお辞儀をした。