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台風と授業

「週末、台風が来るみたいね」

 テレビの天気予報を見て、母が言った。

「その場合、授業はどうなるの?」

「たしか電車の運行次第だと思うんだけど」

 僕は入学時にもらった冊子を見て確認した。〇時~〇時まで〇〇線が止まっていた場合、午前中は休講。〇時まで〇〇線が止まってた場合、午後も休講など何パターンか書かれていた。しかし、午後から止まった場合は書かれていなかった。

「予報だと、どんなに早くても台風が来るのは土曜日の午後だから。たぶん休講になると思う」


 金曜日、同級生と話しになった。

「明日、台風だけど、授業やるのかな?」

「まだ大学から何も連絡ないよな」

 予報だと台風は離れているが、朝から大雨予報になっていた。上陸はしないようだが、午後は強風に注意とのこと。おそらく公共交通機関も影響は受けるだろう。


「仮に午前中は電車が動いていても、午後は動かなくなるね」

「大学に行けても帰れないんじゃ困るし」

 大学には一人暮らしの学生がいるから、泊めてもらうということは可能ではある。しかし、狙っていたわけではないが、仲のいい同級生は揃って通いだった。しかも、僕と同じくらいの遠距離通学もいた。


「俺は休むよ。通学途中でケガとかしたくないし。もし、それで成績が下げられたら、大学に文句を言えばいい」

 山滝が言った。おそらく、クラスで一番成績のいい彼が言うから、みんな納得した。

「大学が授業やるって言ったら、出る人いる?」

 すると、一人暮らしをしている人を中心に手は上がった。

「悪いんだけど、プリントの確保をお願い。あと、ボイスレコーダー持ってきてるから、録音してほしい。あの先生だったら言えば大丈夫だと思うけど、ダメって言われたら困るから内緒で。もちろん、聞いたら即消すよ」

 僕はすごく用意がいいし、彼は真面目だと思った。


 家に帰ると、母に聞かれた。

「明日は、どうなの?」

「まだ連絡が来てないから、授業をやるみたい」

 それを聞いた父親が話に割って入る。

「明日は休んでいい。一回くらいなら問題ないだろ」

「もちろん、休むつもりだよ」

「大学も何を考えてるんだか」

 父親は大学の対応に怒っていた。


 夜七時頃、大学から一通のメールが来た。内容は「自分が取っていた二限の授業が休講」

 受講している科目だけしか書かれていないので、他の学部の授業のことは分からなかった。


 結局、土曜日の授業は、予定通り行われた。授業に参加した同級生は、かなり人数が少なかったと言っていた。先生も茅ケ崎から東海道線に乗ってきていたので、二時間越えの遠距離通勤だ。授業が終わったら、電車が動かなくなる前に帰ると言っていたそうだ。


 翌週の授業で、休講にした先生が大学とバトルになったことを話してくれた。大学の言い分は、規定があるため休みにできない。それなら私の判断で学生の安全を守るため、休講にすると言ったそうだ。だから、メールが届いたのも、夜七時過ぎだったとのこと。この件で、規定が変わったかどうかは分からなかった。

2025年では、確実に休講になっていると思います。

あるいは、オンライン授業のみとか。もしくは出席を取っている授業なら、この回のみノーカウント。

今となっては信じられない話です。

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