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大学とドラマ撮影

 二限の授業は、国語だった。同級生と生活科について話しながら、教室を移動する。先生によっては座席指定もあったりするが、初回の授業なので先生が来るまで分からない。とりあえず、チャイムが鳴り終わるまでに着席はしておく。

 定刻通りにチャイムは鳴ったが、まだ先生は来ない。これは珍しいことではないので、まわりの同級生も、おしゃべりをしていた。しかし、五分ほど過ぎても来ない。


「あれっ、来ないね?」

 学生が教室を間違えるというのは、よくあることだ。その日に限って、教室変更というのもある。もちろん、そういった場合、大学からメールが届くことになっているが。

「もしかして、先生が教室を間違えているのかな?」

 初回なので、ありえない話ではない。実際、行き違いがあったという話も聞いたことがあった。


「いやー、みなさん、遅くなりました」

 約十五分ほど遅れて先生がやってきた。僕は履修登録をするときに分かっていたが、オリエンテーションで話していた宮森先生だ。しかも、安定のジーンズという恰好なので、ぱっと見だと先生に見えない。

「今、一階でドラマの撮影をやってて、スタッフの人と話してました。阿部ちゃん、来てるんだよ。みんな、知ってるよね?阿部寛だよ、トリックに出てる」

 相変わらず、話すのが早い。それに先生がフレンドリー過ぎて、みんな反応できてないようだ。そもそも、何人か先生だということに気づいてないようだ。

「あれっ、みなさん僕のことを覚えてない?ほら、オリエンテーションで話していた」

 そう言われて、何人かが「あー」という感じになった。後ろのほうから小さい声だが、先生だったの?と聞こえてきた。


「じゃあ、授業を始めましょうか?まず、この授業を取っているのは、社会専修、理科専修、音楽専修、美術専修になります。おやっ、家庭専修の方が一人いるけど、どういうこと?いましたら、手をあげてください」

 すると、女性が手を挙げた。


「すいません、クラス分けを見て登録したんですが間違えてしまって、大丈夫ですか?」

 授業によっては、クラス分けというのがあった。春学期、秋学期両方とも開講しているが、どちらか指定されていることがあった。学部の必修科目や選択必修科目で、受講人数が多いから分けているようだ。なお、二年生以上は、クラス関係なしに受けることができる。


「この授業、選択必修だから取らなくても大丈夫なんだけど、あなたが受けたいならいいです」

 そう言われて、女性はほっとしていた。

「登録するときにエラーとか出ないのかな?それこそ必修科目だった場合、困るよね。大学に言っておかなきゃ」

 その後、授業の進め方を説明して終わった。なお、ドラマの撮影は、学生が授業中に終わらせていて、誰ひとりとして見ていないようだ。ドラマや映画の撮影に使われることは、大学にとって貴重な収入源のひとつだということを僕は後から知った。

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