高校時代の同級生逮捕
八月が終わり、九月になった。小中高だと新学期が始まるが、大学はまだだ。大学生は休みが長く、遊んでばかりという話を聞いたことがある。実際のところは、人によると言ったところだ。僕はお金がなかったこともあり、全然遊んでいない。そもそも友達が少ないというのもあるのだけれど。
そんな中、卒業して以来初めて高校の同級生に誘われた。なんでも野球をするらしい。場所も遠くなかったし、せっかくの機会なので参加することにした。
「おー、久しぶり」
野球場に着くと、十人超えるくらいの人数が集まっていた。
「江本、元気だった?」
「ぼちぼちかな」
「相変わらずって感じだな」
集まったメンバーは、高校の同級生ってこと以外はバラバラだった。クラスも違えば、部活も違う。お互い名前と顔は一致するという感じだ。野球が終わると、普通に解散となった。
僕は最寄り駅まで行こうとすると、高三のときの同級生に声をかけられた。
「江本、このあと時間ある?」
「予定とかないよ」
「軽く一杯やってかない?」
もう一人も誘って、同じクラスだった三人で飲むことになった。
「カンパーイ」
おそらく最初で最後の三人だ。近況を中心に盛り上がった。楽しい話が続いていたが、少し酔いが出てきて会話が途切れたところで切り出された。
「実はさ、○○のやつ逮捕されたんだ」
そう言われて、僕ともう一人は一気に酔いが吹っ飛んだ。彼の話だと、バイクに乗ってて事故を起こしたとのこと。原因はスピードの出しすぎ。横断歩行中の見ず知らずの八十代の女性をはねてしまい、死亡させてしまったのだ。なお、横断歩道の信号は青、車の方は赤。完全に運転している側の過失だ。もう一人は、ショックで目に涙を浮かべていた。
「このことは、みんなに内緒な」
僕はショックだったが、同時にこんなことも思った。
「やっぱりな」
理由としては、学年の雰囲気があまりよくなかったこと。僕にとって同級生が逮捕されることは初めてではないから、なんとなく想像できたからだ。一時行方不明になった子もいたし、なにより他のクラスの担任をしていた先生が逮捕されていた。学校名こそ出なかったが新聞にも載り、当時は話題にもなった。
僕は教えてくれた彼が嘘をついたとは思っていない。ただ、何で知っていたのか?という疑問が残っている。結局、今も謎のままだ。高校のホームページに彼が所属していた部活が「創部〇〇周年」という記事が載ったことがあった。そこに彼は映っていない。彼は公式試合で初めて勝ったときも出場していたし、なにより部長だった。
僕にとって身近な人が逮捕されるのは、四人目だった。
小学5年生のときの同級生の父親逮捕
https://syosetu.com/usernoveldatamanage/top/ncode/2097070/noveldataid/26590116/
私にとって初めて身近な人が逮捕されたときのことです。よければ、のぞいてください。
2025年11月20日(木)追記
高校時代の同級生が、2004年8月に死亡事故を起こして逮捕されたというのは、本当の話です。ただ、作中にも書いたとおり、なぜ教えてくれた彼が知っていたかというのは謎のままです。
また、同級生が一時行方不明になったこと、他のクラスの担任の先生が逮捕されたというのも本当の話です。




