大学生と定期代
四月に買った通学定期(三か月分)が、そろそろ切れそうだ。七月は授業とテスト期間があるが、八月、九月は休み。サークル、部活をやってない僕は、大学に行くことはほぼないだろう。今回は一か月分を購入する予定だ。
夕飯を食べ終わると、母親と世間話になった。
「近所の人に大学生なのに定期代払ってるなんて、ずいぶん過保護ねって言われて」
母は言われたことを真に受けるタイプだ。僕は近所の人間はバカばかりなんだから、そんなこと気にするなと思った。そもそも、そいつらの子どもは大学に行ってるのか?大学に行ってないから、払いたくても払えないんじゃないかと思ってしまった。
「うちは遠いし、時間の制約もあるし、値段も高いからって言い返したんだけど」
僕はそう言われて、母がお金に困ってるんだと思った。高校二年のとき、お金がなくて部活の合宿に行けなかったことを思い出す。そのときも、はっきりとは言わず、少し濁しながら言った。
「いいよ、分かった。自分で出すから」
「いや、そう言うつもりで言ったんじゃなくて」
「入学時に貰った埼京大の卒業生のアドバイスみたいな本があるんだけど、定期代くらい払って親孝行しようって書いてあったし。なんとかするから」
僕は少しイラっとしながら言った。何より腹が立つのは、お金がないと言わないことだ。ないなら、はっきり言ってほしい。僕がアルバイトをすればいいだけの話だ。
通学定期代一か月、約一万一千円。
駐輪場代一か月、千五百円。
毎月の携帯代、約五千円。
教科書代(一番高くても三千円いかないくらいで、四年間で十万は超えてない)
別で徴収された科目履修費、おそらく七、八万円。
僕はすべて毎月のアルバイト代から払った。今でも母は知らない。
なお、妹も大学に進学するのだが、すべて払ってもらっていた。これに関しては今も許していない。




