教員と喫煙
「みなさん、タバコは吸いますか?」
出席を取り終わった後、根本は全員に聞いた。
「先週、何部とは言いませんが、部室でタバコを吸っている学生がいました。埼京大は所定の喫煙所以外では、吸ってはいけないことになってます」
僕はタバコを吸わないので、そうなんだくらいにしか思わなかった。
「私はそこで吸っちゃダメだよと優しく注意しましたが、睨みつけられたうえに舌打ちをされました」
はっ、そんなひどい態度を取った学生がいるのかと僕は思った。
「私も頭に来て他の学生から話を聞いて、その学生を特定しました。学部は違いますが、みなさんと同じ一年生。しかも、まだ未成年。そもそも、タバコは二十歳からですよ。分かってますか?」
数人が「はい、大丈夫です」と言って、うなづいた。
「本当に大丈夫ですか?何人か喫煙所で吸ってるの見てますよ」
根本は続ける。
「特に廣川君、君は吸い過ぎじゃないか?二十歳は超えてると思うけど、喫煙所を見るたびに見かけるよ」
廣川を見ると、見られていて恥ずかしいという感じがした。
「学校の先生になったら、吸うところ少ないですよ。特に東京都は、勤務時間中はもちろん敷地内も禁止。場合によっては、処分されることもあります。吸っている方は、今から少しずつ減らしていくのを勧めます」
授業が終わった後、みんなでタバコの話になった。
「あの先生、けっこう見てるな。まさか見られてると思わなかった」
廣川が言うと、古庭も続けて言った。
「実は吸ってるところを見られて注意された」
「えっ、そうなの?」
「部活のメンバーで喫煙所で吸ってたんだけど、まだ未成年じゃないか?って言われて。それ以来、あの先生が、うろつきそうなところでは吸わないようにしてる」
古庭の告白に、みんなドキッとした。
「まっ、未成年で吸ってるのが悪いんだけどね。みんな吸うなよ」
古庭は自虐しつつ、少し笑いを交えて言った。
「てか、学校の先生って、どのくらい吸うんだろう?」
「小学校の先生は低いんじゃない?女性の方が多いし」
「中高の方が高そうだよね。部活の顧問、普通にタバコ吸ってたよ」
「吸ったとしても、校内で堂々とはなかったな。それに東京都は処分されるんだろ」
それに対して、僕は言った。
「妹から聞いた話なんだけど、教室内で吸ってた先生いるよ」
「えっ、教室って、普通の?」
「そう。しかも、給食の時間に」
僕が言った瞬間、みんな驚いていた。
「それ、ヤバいんじゃね?どんな先生?」
「技術の先生で、三十台半ばの男。生活指導してたというのもあるけど、厳しい先生。体罰も少しだけしてたよ。家が遠いのか分からないけど、車で通勤してたり」
みんなの顔が曇っていく。
「たしか東京って、車通勤ダメじゃなかったっけ?」
「その前にクレームとか入らないの?」
僕は答えた。
「うちの地域は、クレームとかほとんどないよ。自分が卒業してから聞かなくなったけど、体罰があっても放置。むしろ、やってくださいって感じの親がいるしね」
「江本の出身校、大丈夫?」
僕は少し間を開けて答えた。
「大丈夫じゃないよ」
ちなみにタバコを吸った前の時間が、保健の授業で副流煙を扱っていた。その際「教室で吸わないでください」と注意したのは、僕の妹だ。よく言えたなと思ったが、その先が全くないのも問題だ。なぜ、大人(教員、保護者)が誰も注意しない。僕は高校生だったし、直接見たわけではないので言えなかった。
この先生、現在は校長先生をやってます。心を入れ替えてやってればと思うが果たして?
2025年12月3日(水)追記
作中に出てくる技術科の校長先生ですが、本当の話です。
現在も都内の公立中学校に勤務しています。
過去にさかのぼって処分しろとは思っていません。
犯罪ではないので、それをやっていたらキリがないです
しかし、今でも思うのは、なぜ誰も指摘をしなかったのかということ。
クレームの多い時代ですが、適切なクレームは入れるべきだと思っています。




