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一限目と遅刻

 オープンキャンパスのアルバイトが終わり、僕は疲れてたのか夜九時過ぎに寝てしまった。起きたら、朝の四時くらいだった。さすがに起きるには早すぎるので、もう少し仮眠を取ることにした。ずいぶん寝たような気がして時計を見ると、七時半を過ぎていた。僕は時計を見て、やってしまったと思った。


 部屋から出ると、母親に言われた。

「おはよう。今まで一度もなかったけど、ついに寝坊したわね」

「朝四時くらいに目が覚めて、早すぎると思って寝たら」

「まあ、焦って行っても危ないから、諦めてゆっくり行きなさい。それと昨日は、どこに行ってたの?」

 僕は「大学のオープンキャンパスのアルバイトに行った」と答えたら、母親はしかめ面をしながら「そんな無理しないで、しっかり疲れを取って学業を優先しなさい」と言われた。

「そんなことは分かってる。だけど、お金が足りない」と僕は言いたかったが、これ以上揉めたくなかったので言うのをやめた。そもそも、寝坊をした僕が悪い。


「一限目の授業、まさか体育じゃないよな?」

 父親も話に割ってきた。

「いや、違うよ。世界史なんだけど、出席は取ってない」

「そうか。まあ、体育だけは絶対に出席しろよ。体育の成績だけは必ず見てるから」

 僕は「何で?」と聞いたら「体育は出席してるか、してないかで成績が決まるから。優が取れてないやつは、だいたい遅刻癖やサボり癖があったりして続かないしな」

 他の科目のことを聞いたら、大学や学部、特に担当教授によって違うから気にしてないとのこと。もちろん成績がよければいいが、そこまでいい人は、うちの会社に来ないなんて自虐を言っていた。


 僕は八時過ぎに家を出発した。分かっていたが、この時間が一番混んでいてツライ。それでも、同級生からメールが来るので、少しだけ気が楽だ。


「今日はどうしたの?」

「寝坊した!」

「そっか。今日は自主休講多いね。十人くらい来てないよ」

 自主休講というのは、自身の都合で休むことだ。

「そんなに休んでるんだ」

「しかも、寝てる人が多いわ。今日はいつも以上に話がつまらなくて眠い」

「メールしてるけど、大丈夫?」

「全然、大丈夫だよ。バレてるかもしれないけど、注意されないし。もちろん、ノートは取ってるよ。あとでよかったら、コピーして」

「ありがとう、助かる」


 電車の遅延もあったので、大学に着いたのは十時過ぎだった。

「何時に起きたの?」

 二限が始まる前に同級生に聞かれて、僕は「七時半」と答えた。

「えっ、そんなに早いの?俺、今日は八時に起きたんだけど」

「甘いな。俺なんて八時半」

「おい、ギリギリ過ぎだろ」

 みんなで爆笑した。一人暮らしの人は、ギリギリまで寝られるなんて話を聞いていたけど、本当だった。僕はうらやましく思ったが、金銭面で一人暮らしは絶対にない。仮にあったとしても、地域的に世間体を気にしないといけないから無理。僕は自分の学習環境を恨んでいた。

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