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登校初日 小中高の先輩と遭遇

 電車を降りて改札を出ると、私服姿の若者が大学の方へ進んでいた。

みんな埼京大生か。僕は後ろをつけるつもりではないが、同じように進んだ。

駅を出ると、見覚えのある女性の姿が見えた。声はかけていないが、パッと女性が振り返った。


「あれっ、江本君じゃない?」

 女性は僕を見て名前を呼んだ。

「白石先輩、お久しぶりです」

 僕も先輩の名前を言った。


 白石先輩とは、小学校、中学校、高等学校がすべて同じだ。学年だと、二つ上。

小中では一度も話したことがなく、高校で初めて話した。

同じ吹奏楽部に所属したことで、先輩のことを知った。


「まさか埼京大に進むとは思わなかったわ。しかも、教育学部」

「えっ、なんで知ってるんですか?」

 僕は恥ずかしかったのと、あれこれ言われるのが分かっていた。

だから、小中時代の同級生には、ほとんど話していなかった。続けて聞いた。


「誰から聞いたんですか?」

「春休みに高校に行ったとき、前川先生から聞いたんだ」

「そうだったんですか」

 高校経由から知ったようなので、僕は少し安心した。


「吹奏楽部には、入るの?」

 僕はドキッとしたが、普通に答えた。

「いや、入らないです」

「そっかあ」


 僕は吹奏楽部のことは触れないつもりでいたので、その質問が来ると思ってなかった。

なぜなら、白石先輩は大学でも入るつもりでいた。しかし、先輩の母親が猛反対。

趣味で続けるなら構わないけど、大学ではダメ。理由は金銭面で厳しいから。

これは先輩の母親から僕の母親を通じて知ったことだ。間違っても、先輩の前では言えない。


「家から通う感じ?」

「そうです」

「遠いから大変だよね」


 一人暮らしはさせてと言ったらしいが、それもダメと言った話も母親から聞いていた。

皮肉かもしれないが、そのおかげで僕は埼京大に進むことができた。

通えたのは、自宅から通う先輩がいたからだ。


「もうそろそろ大学に着くよ」

 先輩が指を差す方向を見ると、大学の校舎が見えた。

「今年も桜が満開ね」

 先輩の言う通り、きれいな桜並木が続いていた。まるで新入生を歓迎しているようだ。


「うわっ、すごいきれいですね」

 思わず口にしてしまうくらい桜が満開だった。

「じゃあ、あたしは4号館だから」

 先輩と別れ、僕は7号館に進んだ。

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