学内の掲示板
「どんなに忙しくても、週一回は必ず掲示板を見るように」
オリエンテーションのときに大学の職員が言ったことだ。小中高と違い、朝の会や帰りの会なんてものはない。授業の休講は携帯のメールに届くが、説明会などは学内にある掲示板だけだった。
「まだ授業が始まるまで時間があるから、掲示板を見てくか」
そう言われて、みんなで見に行く。
「そーいや、個人の呼び出しって、あるのかな?」
まず、ないだろうと思って見たら、自分の学籍番号が貼られていた。
「貼ってあるんだけど、どうするんだっけ?」
僕はみんなに聞いた。
「えっ、貼られてるの?たしか紙を持って書かれてある窓口まで行くんだよ」
そう言われて、僕も最初のオリエンテーションで言われたことを思い出した。掲示板の扉をスライドさせて開けて、僕は自分の学籍番号を書かれた紙を取って書かれている窓口へ向かった。
窓口に着いたあと、少しだけ順番を待って受付の職員に紙を渡した。
「本人確認のため、学生証も出してください」
僕は学生証を出した。職員は顔と学籍番号が一致するか見ているようだ。
「少々、お待ちください」
職員はそう言って窓口を離れたが、すぐに紙を持って戻ってきた。
「掲示板ですが、どのくらいの頻度で見てますか?」
表情を見ると、渋そうな感じだ。
「えっと、最後に見たのが、一週間以上前です」
僕は正直に答えた。
「一年生だから、週四から五は大学に来てますよね。もう少し、掲示板を見る頻度を上げてください」
職員が持ってきた紙を見ると、奨学金の説明会と日時が書かれていた。
「この説明会は、四月末に一度行われています。次からは必ず出席するようにしてください。今回、無断欠席という扱いになっているので、次にやった場合は奨学金の打ち切りの可能性が出てくるので注意してください。来週、欠席者を対象とした説明会をやるので必ず出てください。いいですね」
「はい、すいません、次からは気をつけます」
僕は軽く頭を下げた。
「どうだった?」
同級生から聞かれた。
「いや、提出した書類の確認だったよ」
僕は奨学金を借りているというのが言いにくかったので、とっさに嘘をついてしまった。
「ふーん、そうだったんだ」
それ以上、何も突っ込まれることはなかった。
翌週、僕はちゃんと説明会に出席した。
「今日の説明会は、前回の説明会を休んだ人のためです。ちゃんと連絡をくれた方はいいですが、無断欠席の方も多くいます。みなさん、学生として自覚を持つようにしてください」
たしかに、その通りで僕は反省した。しかし、一番広い教室の七割~八割は埋まっていた。こんなにいるってことは、大学側も急に設定したのでは?今となっては分からないが、どうなんだろう?そもそも、休講情報と同じように携帯電話に連絡もしてくれたらなと思った。




