小学5年生のときの同級生の父親逮捕
1996年10月、月曜日の朝。当時四十歳の男性の担任が、開口一番にこう言った。
「今日から一週間、〇〇君、休みます」
それを聞いて教室が少しざわつく。
「えっ、何で?」
同級生の男子数人が担任の先生に聞く。すると担任は答えた。
「言えない、言えない」
担任は手で口を覆いながら言った。そして「家にも行かないように」と念を押すように言った。当然、みんな何でだろう?となっていたはずだ。
翌日の朝、同級生の男子数人が担任のいないところで言った。
「昨日の放課後、〇〇の家に行ったけど、あいつ元気だったよ」
それを聞いて安心するとともに、僕は「行くなって言われてたじゃん」と言い返した。
「そんな怒るなって。それで理由を聞いたら、ごめん、それは言えないって言われた」
言えないって何だろう?僕は気になったが、どうにもできない。
一週間経って、月曜日の朝。担任の先生が言った。
「〇〇くんですが、お母さんの実家がある〇〇(都道府県)に帰ることになりました」
そう言われて、僕はショックだった。他の同級生も「お別れ会ぐらいやりたかったな」と言っていたが、同級生の転出は慣れていたんだろう。入学時に九十六人でスタートしたらしいが、最後は七十八人で卒業した学年だ。自分を含め、転入者は少なくとも十人くらいいる。つまり、六年間で三十人近くが転出しているという特殊な状況だ。
1999年、僕は中学二年生になっていた。給食の配膳中、同級生の男子に聞かれた。
「小五のときに転校した〇〇覚えてる?」
突然のことだったので少し驚いたが「あー、覚えてるよ」と僕は言った。
「何で転校したか知ってる?」
そう聞かれたので、僕は「母親の実家に帰ったって聞いたよ」と返した。すると彼の口から、とんでもない言葉が返ってきた。
「あいつ、〇〇(都道府県)に帰ってないよ。そもそも、帰れるわけない」
「どういうこと?」
「父親が逮捕されたからだよ」
彼は少し半笑いで言った。こいつ大丈夫か?という思いと、僕は逮捕という言葉に驚いた。
「おい、誰に聞いたんだよ」
一瞬、嘘でしょ?と思ってしまい、僕は本当なのか?という意味を込めて少し強い口調で聞いた。
「父ちゃんだよ」
彼も僕の言い方に少しびっくりしたのか、一言だけ返した。僕は続けて、
「父ちゃんは誰に聞いたんだ?」
僕は彼の言ったことを疑ってはいなかったが、まさか嘘ついてないよね?という感じで言った。
「お客さんだよ」
彼の家は自営業だったので、店を経営していた。そのお客さんは、彼の住んでいた家のすぐ近くに住んでいるらしい。それで二年ほど経ったから、実はという感じで話したそうだ。そして、僕は最後に聞いた。
「いったい、何をやったんだ?」
彼は一言だけ答えた。
「殺人」
僕は衝撃を受けた。えっ、殺人?頭の中で殺人なら新聞に名前が載るはず。いや、名前が載ったとしたら、みんなも知ってるはず。でも、今までそんな話を聞いたことないし、みんなも知らなそうだ。だけど、何も言わずに引っ越していったという事実もある。教えてくれた彼は少し狂っているが、そんな嘘はつかないはずだ。それにそんな嘘をつく必要がない。
十秒ほど経って、少し冷静になった僕はこう思った。
「あー、やっぱりな」
2025年11月18日 追記
今回の話ですが、本当にあったことです。
ただし、いつ? どこで? どうやって? 動機は? など肝心の内容が全く分かりません。
近々、国立国会図書館で調べようと思っています。




