新入生歓迎スポーツ大会の練習
金曜日、授業が終わったあと、新入生歓迎スポーツ大会の練習に行くことになった。行われる種目は、フットサル、バスケ、卓球、テニス、ソフトボールの五競技。経験者から埋めていって、そのあとは話し合いやジャンケンで決めた。僕はどれもできないが、一番できそうな卓球になったのが救いだ。
「よし、まずは体育館に行く前にキャンパス外のグラウンドを確認しようぜ」
埼京大は、他の大学と比べたらキャンパスが狭い。体育館、プール、テニスコート、五十メートル走を測れないくらい狭い校庭があるくらい。そのため、キャンパスの敷地外に三つほど借りていた。
出場競技ごとに分かれて歩いていったが、駅よりも遠い。
「野球部、サッカー部とかは、毎回ここまで行くのか。しんどいな」
自転車の置くスペースも限られており、大半は歩いて向かうのだそう。
「グラウンドに行くまでがトレーニングになるね」
そして、駅まで歩き、バスに乗って市内の体育館へ向かった。そういえば、駅の反対側に行くのは初めてだ。十五分ほど乗ると、体育館に着いた。
入口を見るとポスターが貼ってあった。
「プロレスリング・ノアだって、知ってる?」
「知ってるよ。真ん中に映っている三沢が作った団体だよ」
ポスターには大会の開催日時も書いてあった。
「おっ、江本君、詳しいね。格闘技、好きなの?」
絡んできたのは、リーダーの廣川だ。
「たまに見るくらい。年末も見てたけど、三局は多すぎだったね」
「話し合いそうじゃん。ちなみに武藤、蝶野は、この体育館でデビューしたんだよ」
それに対して、みんなも反応した。
「その二人は、バラエティに出てるから分かるよ。こんな学校の体育館みたいなところでスタートしたんだね」
それに対して、みんな大笑いだ。
「本当だ、市の体育館じゃないよね」
中に入ると、すでに先輩や同級生が分かれて練習していた。
「来てくれてありがとう。みんなで楽しくやってくれればいいから」
そう言われ、リラックスして練習した。体育の延長という感じで、あっという間に七時過ぎだ。この練習で、何人かと距離が縮まったような気がした。
翌週の木曜日、快晴の中で大会が行われた。Tシャツは前日までに届き、当日の朝に配られた。七千円ほどしたので、出費は痛かったが仕方ない。お金のことを言うと何か言われそうなので、僕は春休みに貯めたアルバイト代で払うことにした。入学したばかりとはいえ、どんどんお金が出ていく。
肝心の大会はクラスだけでなくサークル単位のチームもあり、ものすごいチーム数だった。中にはいくつもエントリーした結果、ブッキングして出れないなんて人も。僕は数分プレーしてだけで終わってしまい、ほとんどが応援だった。大会終了後、つまらなかったという意見が大半を占め、僕だけでなく半分くらいの同級生は、以降一度も出ることがなかった。




