クラスTシャツ
みんな、おはよう。
クラスリーダーになった廣川雅人です。
急な話で悪いんだけど、先輩たちや他のクラスはどこもお揃いのTシャツを作っているそうです。
来週の新入生歓迎スポーツ大会に間に合わせたいので、デザインを決めます。
スポーツ選手みたいに背中に名前を入れます。苗字、下の名前、あだ名、どれにするかは自由。
それと背番号も入るから何番がいいかも考えてね。
今日の朝は、みんな授業ないと思うから時間があったらホームに来てください。
家を出発すると同時にメールが届いた。八時半だから、どんなに早くても着くのが十時二十分くらい。僕は話し合いに参加したいと思ったが、できないことが確定した。せめて前日までに言ってくれればと思った。
「おはよう、メール見た?急すぎて困ったよね」
駅で同級生と会い、早速その話になった。
「クラスTシャツ作るのはいいけど、もっと早く言ってほしかったな」
「それにいくらかかるんだろう?」
そんな話をしていると教室に着いた。他のみんなも不満に思っていたのか、授業が始まってからヒソヒソと話していたがすぐに「ほら、授業が始まったぞ。おしゃべり終わり」と注意された。
授業が終わり、一斉にメールが届いた。
朝の話し合いに参加したくてもできなかった人、朝も出たけど参加したい人、昼休みにホームに来てください。みんな、それぞれ予定があるかもだから強制ではないから。待ってま~す。
「どうする?行く?」
「せっかくだから行こうよ」
僕はそう言って、参加することにした。
ホームに着くと、けっこうな人数が揃っていた。和気あいあいとした感じで待ってる人、少し不満そうな顔して待ってる人がいた。僕は通学中に駅のコンビニで買った軽食を食べながら待っていた。十分くらい経って、廣川と田熊、さらに先輩が数人いた。
「まだ全員じゃないけど、みんな集まってくれて、ありがとう」
ほっとした顔をした廣川が頭を下げた。
「えっと、Tシャツのデザインだけど、今日の朝に何人かで話し合って、これにしようかってなって」
それに対して、すぐに山滝がパッと手を挙げて意見を言う。
「クラスTシャツを作るのはいいんだけど、デザインって大事だと思う。数人で決めるんじゃなくて、みんなで多数決で決めるべきだと思うんだけど」
もっともな意見が出て、みんなそうだって感じだ。
「それにタダじゃなくて、お金もかかるわけだし」
それに対して廣川が答える。
「今日中に決めないと間に合わないかもって先輩に言われて」
廣川が言うと、すぐに山滝が言った。
「じゃあ、パッと見て決めるから、それで多数決を取ろうよ」
少し語気を強めて言った。
「それに大事な話し合いだから、今日の朝八時半に連絡は急すぎる。通いの人が大半なんだから、せめて前日までには言ってほしい」
すると先輩が出てきた。
「一年生のみなさん、すいません。自分たちが伝えるのが遅くなってしまって迷惑かけてます」
先輩たちが頭を下げた。
「今回の件は、うちらのせいだから廣川を責めないでください。廣川も大事なことだから、ちゃんと話し合って決めないとダメだよ。おいてけぼりにされたって思っちゃうよ。全部うちらのせいにしていいから、みんなで決めな」
廣川が「はい」と言って、うなづいた。
「あと、みんなに集まってもらったのは、お知らせがあります。新スポに向けた練習を今週金曜日の夕方にやろうと思ってます。場所は市内の体育館で、すでに抑えてます。費用なんですが、みんなが参加すればするほど安くなります。かかっても百円なので、ふるって参加を」
最後に先輩が、もう一度頭を下げた。廣川も「みんな、勝手に進めてごめん」と言って頭を下げた。結局、自分がいいと思ったデザインが選ばれなかったが、ちゃんと多数決を取って決めることができたのはよかった。




