新入生歓迎部活・サークル発表会
「あれっ、どっか行くの?」
「大学だよ」
「えっ、今日も授業なの?」
「いや、部活とサークルの発表会があって観に行くだけ」
母にそう言うと、僕は家を出た。土曜日の朝九時過ぎ、天気は晴れ。
土曜日に大学へ向かうのは初めてだ。いつも通り駅まで自転車で行ったが、大通りの車が少ないように感じた。電車も平日の朝と違って、だいぶ空いていた。それでも、たまたま混んでいる車両に乗ったかもしれないけど、十分ほど座れなかった。ただ、いつもよりは楽に行けるし、授業ではないから遅れてもいいということもあって気楽だった。同級生とは、十一時くらいにホームで待ち合わせをしていた。
「おっ、来た来た」
着いたら、すでに何人か来ていて話をしているようだった。
「今、統計を取っているところなんだけど、何部だった?」
僕は聞かれて「吹奏楽」と答えた。
「吹奏楽やってたの?けっこう多いな」
統計の紙をちらっと見ると、サッカー部に次いで多かった。全国大会で金賞なので自分以外にもいるとは思っていたが、こんなにいるとは。しかも、男の方が多いクラスで、まさか二番手につけるなんて。
「でも、ここに来るってことは、吹奏楽部には入らないんだ?」
僕は「うん」とうなづいた。
「この間、テレビでやってたけど、体育会系なんだよな」
「そうそう、めっちゃ厳しいよね」
「でも、学校によって差はあるでしょ?」
そんな感じで吹奏楽部の話が続き、やってた身としては嬉しく感じた。
「少し早いけど、学食が混むだろうから昼にしようよ」
そう言われて、みんなで食堂に向かった。
午後一時、体育館で発表が始まった。
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。埼京大には、さまざまな部活・サークルがあります。途中入室、途中退場して構いません。気になったのがあれば、各ブースに寄ってもらえばと思います」
入場時に配られた紙に、各部活・サークルの場所が書かれていた。
「一番最初に発表するのは野球部です。どうぞ」
急に照明が落とされ、部員が舞台の袖からゾロゾロ出てきたが、よく見えない。
「それでは、毎年恒例。野球部の武富士ダンス見てください」
まさかの展開に体育館は笑いに包まれた。おい、野球と全く関係ないじゃんと言った声が聞こえてきた。最後に活動日、活動時間、部員数、目標を代表者(部長)が発表していた。最初は楽しかったが、その後も似たような感じの発表が続き、次第に飽きてしまった。みんなで、もういいよねと目で合図を送り合い、キリのいいところで出ることにした。




