授業2日目
火曜日の一限は取れる授業がないため、二限以降が確定。十時半からなので、僕は七時過ぎに起きた。
「今日は何時からなの?」
「十時半だから、八時過ぎに出れば間に合う」
母に聞かれて僕は答えた。いつもより少しだけゆっくり朝食を食べて出発した。
駅に着くと少し人が減ったなと思ったが、電車は普通に混んでいた。二つ目の路線に乗り換えるまでは立ちっぱなしだから、やはりつらい。そして、三つ目の路線に乗ろうとしたら、遅延の文字が表示されていた。理由は「朝のラッシュによるため」乗降時間に時間がかかり、少しずつ遅れが出るみたいだ。普段なら五分待つことなくやって来るが、十分以上経って来た。結局、二時間かかってしまった。
まだ授業まで時間があるので、僕は購買部に寄ることにした。中はそれほど広くないが、ぎっしり教科書と文房具が置いてあった。先輩の話だと「だいたい揃っていて少し値段も安いから、学内で買うのがベスト」と言われていた。昨日、授業で言われた教科書を見つけて購入。授業によっては万単位の教科書を買わされるという話を聞いたことがあったが、千円ほどだったので安心した。それでも、あれこれ言われると思い、僕は教科書代は自分で出すと決めていた。
ちょうどチャイムがなったので、授業が行われる7号館へ向かった。途中で何人かの同級生に「おはよう」と声をかけられた。まだまだ、ぎこちない雰囲気だが少しずつ柔らかくはなっていた。わりと広い教室で、国語専修、特別支援教育専修の学生もいた。
チャイムが鳴ると、先生が入ってきた。
「新入生のみなさん、おはようございます。この科目を担当する塚本です」
なんか不機嫌な感じがして気難しそうに見えた。
「授業を始める前に、この授業の進め方を説明します。まず、出席は取りません。大学からは、なるべく取るようにと言われてますが、大学生にもなって取る必要があるのかと私は思っているので取りません」
怒っているわけではないが、教室の空気がビシッとなった。
「それと授業中のおしゃべりは厳禁です。真面目に受けたい学生のためなので守ってください。私の授業がつまらなければ、出なくていいのです。はじめに言ったとおり、出席は取りません」
初回だからかもしれないが、すごく厳しく言ってるように聞こえた。
「それから、みなさん挨拶はできてますか?」
それに対して、僕はあって思ったが、ほとんどの学生がキョトンとしていた。
「数年前から橋のところに女性の警備員が何人かいますが、歩く信号機ではないんですよ。道幅が狭いので混んでしまうのは仕方ないですが、近隣から通れなくて困ると苦情も来ています。だから、交通整理をしていただいてるのですが、ここ数年、何も見向きもしない学生が増えています。みなさんが逆の立場だったら、どうですか?」
それを言われて、はっとしてる学生はいた。
「それでは、授業をはじめます」
板書もするが、基本的に先生が一方的に話をするスタイルだ。しかし、他の先生と違うのは、話が面白い。最初は怖い感じがしたが、普通に受けていれば問題なさそうだ。ほとんど表情を変えず、話し続けて九十分の授業が終了した。よく話を続けられるなと僕は思った。
「間違ったことは言ってないけど、なんだかなー」
昼休み、食堂で同級生と話していた。何人かは合わないと思っているようだが、塚本先生は間違ったことは言ってない。ただ、第一印象が非常に悪かったように思った。
午後は日本史だ。授業の初めに小テストがあり、これが出席替わりとなる。ちょうど眠くなる時間帯で少しぼーっとしてると、いつの間にか先へ進んでいた。
四限は選択必修科目の数学だった。思っていた以上に難しい計算をするので、けっこう苦戦した。そもそも理系よりは文系の学生が多い。授業後、まだ履修登録の修正がきくから何人かは取らないとなった。僕も単位はひとつも落としたくないと思ってたので、安全策を取って取らないことにした。




