授業初日
土日が連休だったので少し疲れが取れ、僕は朝六時過ぎに起きることができた。
「今日から授業?」
母親に言われ、そうだよと返事をした。七時過ぎに家を出て、予定通り大学の最寄り駅に着いた。
「おはよう」
同級生に声をかけられ、僕も返した。
「今日から授業だから人が多いね」
駅から大学に向かう道は、埼京生だらけだ。先週までは、学年別のオリエンテーションがあったりしたため、登校時間も分かれていた。四年生は分からないけど、おそらくフル稼働って感じなんだろう。
学生が多いため、なかなか進みづらい。特に大学の近くにある橋は幅と人数が合ってないため、警備服を来たおばちゃん達が交通整理をしているくらいだ。おはようございますと声をかけられたので、僕は軽くお辞儀をした。しかし、同級生をはじめ、多くの学生は気にすることなく進んでいた。シカトしているつもりはないんだろうけど、なんか冷たいなと思った。
一限は世界史で、教室の場所は7号館だった。すでに何度も訪れているので、迷うことなく教室に着いた。八時五十三分に到着したが、クラスメイトのほとんどがいる感じだった。まだ、なんとなくぎこちない雰囲気だ。
「おっ、ギリギリだな」
世界史を担当する木本が入ってきた。教卓に着くと同時にチャイムが鳴り、少しざわざわしていた教室も静かになった。
「新入生のみなさん、おはようございます。木本裕次郎です」
基本的に出席は取らないが、初回だったので全員が自己紹介をするという形で取った。また、自己紹介するとは思ってなかったが、人によっては新たな一面を知ることができた。評価方法は、記述式のテストのみ。だから、一回も出ないで単位を取ることも可能だけど、全部出席しても取れるとは限らないなんて言っていた。あとは最近のニュースを中心に世間話だった。
「それじゃあ、ちょっと早いけど、今日は終わり。来週から本格的にやります」
大学一発目の授業は、特に何もなく終わってしまった。
二時限目は、外国語だった。英語、フランス語、韓国語、中国語の中から、ひとつ選択。大学では英語以外に第二外国語を学ぶというのを聞いていたが、教育学部はひとつだけでいいらしい。僕は語学が得意ではないので、無難に英語を選択した。教室に着くと学籍番号順に座るようにという指示があり、端の列には国語専修の人たちがいた。また、自己紹介をすることになったが、英語でと言われたので新鮮だったと同時に自分の英語力のなさを痛感した。
昼休憩を挟み、三限目は日本国憲法。一般教養科目なので、他の学部の人たちも受けていた。ただし、教育学部は必修なので、一番広い13号館の教室が埋まっていた。紙を配られるが基本的に教授の話したことをメモするので眠くなる。四限目も一般教養科目で、再び7号館へ移動した。この授業も先生が板書してくれるが、基本的に話が多く眠くなる。少しウトウトしつつも、なんとか耐えた。
チャイムが鳴ったので、一日の授業が終了。みんなで初日の感想を話しながら駅まで向かった。
「いやー、一日に四限って疲れるね」
「九十分×四だから、三百六十分か」
それを聞いて、僕は高校のときの授業時間を計算した。
「高校は五十分×六だから、三百分。今日は一時間も多く勉強したってことか」
僕が言うと、みんな反応した。
「それヤバいね。しかも、今日の一時間目は授業っぽいことしてないし」
「話は聞いてたけど、一年次は基本的に一方通行の授業が多いみたいだよ」
「授業、減らそうかな、まだ修正間に合うし」
「でも、最終的には取らなきゃいけないんだよな」
そんな話をしていると駅に着いた。まさか初日から、こんなに多く勉強するとは思ってなかった。




