入学式2
僕は会場の中に入った。
演奏会が行われることもある大きいホール。
うわっ、広いなと思いながら、座席を探していた。
「こちらへどうぞ」という感じで職員が案内していたので、僕は空いていた席に座った。
新入生だけでなく保護者もいるので、けっこう埋まっているようだ。
僕はちらっと周りを見渡した。母親だけでなく、父親も多い。中には祖父母も来ているようだ。
やっぱり私立って金持ちが多くて、真面目な保護者が多いんだな。
顔つき、目つきが違う。それに比べて、自分の母校(小中学校)は…
なんてことを考えていると、場内アナウンスが流れた。
「これより平成十六年 埼京大学 入学式を挙行します」
照明が落ちて客席が暗くなり、今度は舞台が明るくなった。
そこには楽器を構えた演奏者たちがいた。
指揮者が振ると、一斉に音が鳴り出した。
これが全国トップレベルの埼京大学吹奏楽部の演奏。すごい迫力だ。
曲が終わると、自然に会場から拍手が沸き起こった。
続いて学長の挨拶だ。
舞台の真ん中まで進み、マイクを握った。
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます」
優しい声をした、おじいさんという感じだ。
元小学校の先生で、本を出版するなど教育界では有名な人らしい。
僕は本も読んだことなければ、名前も初めて聞いたが。
「最近、新聞に書かれていましたが、学生が電車の中で座席を譲ったそうです」
まあ、よくある話だよな、自分だって譲ったことあるなんて思いながら聞いてると…
「これが埼京生…」
声は出てないけど、会場がおーって感じで少しざわついたような。僕もドキッとした。
「だったら、いいなあ」
えっ、違うの?しかも、少しためた後の一言だったので、一転してなんか残念な雰囲気に。
その後は軽く聞き流す感じで、学長の挨拶は終了。
他にも現役の学生さんや教授がインタビューに答えた映像が流れたり。
約二時間ほどで、入学式が終了。僕は特に何もすることなく帰宅するのだった。