図書館
ピアノレッスン棟を見たあとは、テニスコート、グラウンド、体育館を見に行った。そんな広くないというより、むしろこじんまりした感じだ。授業、部活、サークルが優先だけど、誰も使ってなければ借りることもできるみたいだ。
他のクラスも、かぶらないように回っているようだ。お互い知らないけど、どうもって感じで軽く会釈してしまう。隣にいた谷岡宗平が「他のクラスの子の方が、かわいい子多いな」って言った。
「おいおい、もう少し小さい声で言えよ。女子に聞こえたら、マズイって」
数人で笑いながらも軽く注意する。とはいえ、僕も失礼だけど、他のクラスの子たちの方がかわいいって思ってしまった。
「いろいろ見て回ったけど、図書館が最後になります」
図書館は一般の人も使う道を渡ったところにあった。車は通らないけど、自転車は通るから轢かれないようにと注意された。道は木が生い茂っていて、昼間なのに薄暗い感じだ。
「今日はいいけど、図書館の中に入るには学生証をかざします」
中に入るとすぐにゲートがあり、そこを通らなければならない。館内は司書の人が説明してくれた。雑誌、新聞も置いてあり、小中高の図書室とは大違いだ。グループで借りれる部屋だけでなく、個別に勉強ができるスペースもあった。CDを聞いたり、映画などDVDを見れるスペースもあって充実していた。一番驚いたのは、地下もあったこと。蔵書スペース確保のため、スイッチひとつで棚が動くのは感動した。
「あれっ、何か反応が薄いね」
僕は谷岡に声をかけた。
「いや、付属高の図書室もあったから、大学もあるんだって感じで」
「だから、反応が薄いのか」
なんか変な空気になってしまった。
「自分もみんなみたいに付属高で初めて見たときは感動したよ。説明なかったけど、人がいたらセンサーが反応して動かないから挟まれることはないはずだよ」
谷岡は変な空気を戻そうと言った。へぇー、そうなんだと他の同級生も反応した。
「だけど、手とか小さい物だと反応しないかも。図書室の先生に、ねずみが挟まれてて死んでたことがあるって聞いたことあるし」
グロい話を聞いてしまい、せっかく戻った空気がまた違った形で変になってしまった。
「なんか、ごめん。言わない方がよかったかな」
谷岡が軽く謝ると前から声が聞こえてきた。
「このあとは、ホームに戻ってテストを受けてもらいます。点数が良くても悪くても何も言われないけど、ちゃんとやって下さい」
まさか入学して早々、テストを受けさせられると思ってなかった。結局、問題用紙も回収され、解答を配られることもなかった。結果は全く知らされることなく、一体何だったのか今でも謎だ。