新入生の自己紹介タイム ラスト
その後も順番に自己紹介をしていった。親が教師、やっぱりいるんだ。他にも全国大会に出ましたとアピールしたり。一番驚いたのは、子持ちの主婦、三十歳の元会社員がいたことだ。二人とも、社会人経験のある先生がテレビに出ていたことを知って目指すことにしたそうだ。
「さあ、ラストになりました」
仲原の声かけで、小柄な女性が前に出てきた。
「最後は女の子です、どうぞ」
「田熊沙良です。出身は神奈川県で、出身校は鶴見中央高校です」
かわいらしい女の子って感じで、ほんの少しドキッとしてしまった。後ろから女の先輩が「かわいい、かわいい」と連呼してしまうのも分かる。
「なりたい校種は、小学校の先生です。それと国際教育にも興味があって、留学したいなって思ってます」
後ろでは「誰か短期留学した人、知ってる?」「他の専修には、いたかもしれない」など聞こえてきた。
「最後になりますが、四年間一緒に頑張っていきましょう」
みんな一斉に拍手した。教室のみんな少しテンションが上がったのか、いつまで経っても終わらない。あれっ、何だと思っていると、拍手から手拍子に変わった。
「さあ、嘘つき、出て来ーい」
仲原が言うと、笑いながら三人出てきた。子持ちの主婦、元会社員、そして、トップバッターの演歌歌手だ。三人とも前に出てきて頭を下げた。
「新入生のみなさんを驚かすために紛れていました、ごめんなさい」
その後、三人揃って改めて自己紹介した。本当は二年生で、設定は全て作り話だということ。とりあえず、忘れてということだった。三十歳の元会社員、まだ十九歳。これには先輩も含めて、嘘だと言ってしまうくらい驚いていた。
「最後になりますが新入生のみなさん、これから四年間楽しんでいきましょう」
仲原が締めると自然と拍手が起こった。