新入生の自己紹介タイム5
「いつの間にか、半分過ぎました。次の方、どうぞ」
僕は最初から明るく進めている仲原先輩を見て、すごいなと思っていた。
「桧山真奈です」
メガネをかけてる知的美人という感じで、みんなの視線が集まっていた。
「お台場総合高校を出ていて、小学校の先生を希望しています」
けっこう緊張しているみたいで、後ろから「出身の都道府県は?」と聞こえてきた。
「小学校四年のとき、初めて東京にきました。それまでは、ずっと中国に住んでいました」
えー、すごい。帰国子女なの?、中国語は話せるの?と質問が飛ぶ。すると、中国語でペラペラと話し始めた。
「えっ、何て言ってたの?」
教室中がハテナマークで、いっぱいだ。
「生まれたときは中国で、父の仕事の関係で日本にきました。最初は日本語が全く分からなくて、母と一緒に日本語学校に通って話せるようになりました。私、ちゃんと話せてますか?」
全然、大丈夫と後ろからフォローが入る。よーく聞けば、ところどころイントネーションが違うような気もするけど、全く問題なかった。
「みなさん、四年間よろしくお願いします」
桧山は頭を下げ、自己紹介を終えた。
「次の方、お願いします」
少しガタイのいい男子学生が出てきた。
「廣川雅人です。栃木県出身で、出身高は栃木西です。小学校の先生になりたいです。あと、ピチピチの二十歳です」
ヒゲも生えていて見た目もワイルドな感じなのに、やや声が甲高い。そのギャップもあって、教室中が思わず笑ってしまった。
「廣川、普通に二浪って言えよ」
後ろから男子学生が笑いながら声をかけた。廣川は言いにくそうに答える。
「本当は隠すつもりだったんだけどな」
「いやいや、その風貌じゃ浪人してるって分かるから」
二歳しか変わらないけど、学生の二歳はすごく大きい。僕から見れば、すごく大人に見えた。
「えっと、みんなより年上なんで、リーダーシップを発揮できるように頑張ります」
最後は拍手に包まれた。