新入生の自己紹介タイム3
「次の方、どうぞ」
ついに自分の番が来た。席を立ったが足取りが重く、やっぱり緊張してきた。
「大丈夫、そんなに緊張しなくても」
仲原が和ませてくれようとするが、心臓がバクバクする。
僕は前に立ち、周りを見渡した。教室にいる人、全員が自分を見ている。
「それでは、どうぞ」
仲原の一言で、勢いよく言った。
「江本純一です。出身は東京で、出身校は都立清水池高校です」
自分でもびっくりするくらいの早口だ、よく噛めずに言えたなんて思ってると後ろからツッコミが入る。
「もう少し、ゆっくり言おうよ。中学生」
それに対して、ふっと笑ってしまった。
「ごめん、大学生だった」
「大丈夫です、よく下に見られます」
教室がなんともいえない空気になってしまった。
「それで、なりたい校種は?」
僕はそうだったと思い出したように言った。
「中学校の先生です。進路指導とか、できたらいいなと思ってます」
おー、具体的だね、なんて声が聞こえてきた。
「あと小学校教員の免許を取ることによって、小中の架け橋というか、そういったことをやれたらなって」
ずいぶん具体的だな、すげーぞなんて言われ、僕は嬉しいというより戸惑ってしまった。どうしよう、なんか出来のいい新入生に見られたかもしれない。実際は運よく推薦で受かってしまったポンコツなのに。
「四年間、よろしくお願いします」
僕は頭を下げると拍手に包まれた。人前に立つのが苦手な自分だったが、少しだけ苦手意識が取り除かれたような気がした。