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第八話:デュラハン②


 俺は、ティアナから条件を聞いたときのことを思い出す。


「そうね、こっちの条件を飲んでくれるなら、丁度いいのがあるわよ」

「条件にもよるが……」

「なに、簡単な話よ。それはね――、ステータスのポイントを全部『魔法防御力』振りなさい」


 その言葉に、俺は顔をしかめた。


「……全然簡単な話じゃないな」


 ステータスの割り当て可能ポイントは、9ポイント残っている。

 つまり、実験のときから一切割り振っていなかった。


 何故割り振ってなかったかと言えば……、怖いからだ。

 今は上がっているが、これから先、どれだけレベルが上っていくのか。ステータスのポイントも今は5ポイントずつ増えているが、それがどうなるか。

 全てが俺には分からない。


 もし変なふうに振ってしまったら、やり直しが効かないのだ。

 だからこそ、今残っているポイントをよりにもよって、『魔法防御力』に振るのは2つ返事で了承できるものじゃない。


「条件を飲めないなら、クエストは依頼できないわ」


 ティアナは議論の余地はないというように言い切る。


「せめてこう、もっとバランス良く振れないのか」

「それじゃあ貴方の強みが生きないじゃない」

「何?」


 ……強み?

 突然言われた言葉に、俺は戸惑う。


「……はあ。じゃあ、どうして貴方がキラービーを倒せたか分かる?」

「それは……」


 それは、移動速度に特化したからだ。

 特化したからこそ、キラービーに追いつくことが出来たし、殺すこともできた。


 もしあのタイミングで体力や攻撃力にもバランス良く振っていたならば、俺は生き残っていなかっただろう。


 であればこそ、ティアナの条件も悪いようには思えなくなってくる。


「貴方はまだ分かってないみたいだけどその力、想像の数倍強力よ」


 自分を信じろと言わんばかりのティアナの顔。

 ……もうここでグダグダ考えても、事態が進展することはない、か。 


「……分かった。条件を飲もう」

「交渉成立ね。あ、後もう一つ。明日辺りにBランク冒険者が来るから、その人と一緒にクエスト行ってね」



 かくして、俺は此処に居る。


 デュラハンは俺の存在を認知したのか、剣を持ってない方の手を向けてきた。

 黒い光がデュラハンの手に集まっていき、俺の方へと放たれる。


 等身大ほどの、青白い炎が、俺の身体を焼き尽くさんとした。

 ――が、


「大丈夫だとは思っていたが、やはり怖いな」


 俺を包んだ炎は、何も燃やすこと無くかき消える。

 身体が無事なのは想定通りだったが、服まで無事というのは嬉しい誤算だ。


「嘘……、あの魔法を食らって無事なんて……!」


 後ろから、リーゼロッテの驚くような声。


「リーゼロッテ、さっさと魔法の準備をしろ! 引きつけるにしても、長くは保たないぞ!」

「……! 了解!」


 俺が指示を出すと、リーゼロッテは魔法の詠唱に入った。

 デュラハンは、俺をある程度の脅威としてみなしたのか、一目散に俺を殺そうと近づいてくる。


「魔法は問題ないが、物理は食らったら一撃死だから気を抜けないな……」


 俺が上げたのは、あくまでも魔法防御力のみで防御力は常人のまま。

 魔法ではなく剣撃を受ければ、俺の持っているナイフごときでは到底防ぎきれない。

 

 今は速度で上回っているのでなんとか避けきれているが、ワンミスが命取りになる恐怖は常につきまとった。


 1分ほどデュラハンの攻撃を回避し続けたとき、ようやくリーゼロッテから声がかかる。


「おまたせ! 巻き込んじゃうかもしれないけど、キミなら大丈夫だよね!」

「……ッ!」


 味方を巻き込む馬鹿が何処に居る、と叫びそうになるが、俺はすぐさまデュラハンから離れようと思い切り横に飛んだ。

 

呪われし氷の雨カースド・アイス・レインッ!」


 そして直後、大きな氷の固まりが数え切れないほど出現する。

 虚空から現れた氷塊は、森の木々をなぎ倒しながらデュラハンを襲った。


「グァァァアア!!」


 キラービーとは比較にならないぐらいの、大きい断末魔。

 魔法は、断末魔が聞こえた後も際限なく襲い続ける。


 ようやく攻撃が収まると、そこには原型を留めていないデュラハンの死体。

 そして、魔法の余波で森の中には、小さな空き地が出来てしまっていた。


「……これが、大魔道士の魔法か……」


 15歳にしてBランクになるというのは、それだけの実力が必要ということだった。

 俺がそれに感動していると、リーゼロッテが近づいてくる。


「ヨハンさん、大丈夫?」

「……俺ごと巻き込もとうしておいて、よく言う」


 皮肉を言いながら、俺は笑う。


『経験値が一定値に達したため、レベルが4から6に上昇しました。振り分け可能なステータスポイントが10ポイントあります』


 そして、その音声がクエストの終了をはっきりと告げていた。


――――


【名前】ヨハン = アイヒベルク

【性別】男性

【レベル】6

【体力】10

【攻撃力】6

【防御力】5

【魔力量】0

【魔法攻撃力】0

【魔法防御力】10

【移動速度】10

【割り当て可能ポイント】10

【習得スキル】なし


――――

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