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第十七話:Cランク昇格試験②

 次の2戦目。

 相手は1戦目と同じく、魔法使い系統の相手。


 くじ運の良さに感謝しながら、俺は危なげなく勝利した。

 ……正直、すまなかったと思う。


 そしてDランク同士の最終戦である3試合目。


 どうせならもう一度魔法使いが来いと願っていたが、試合場に現れたのは身体全てを覆う鎧を着た男。手には、大剣を携えている。

 もう、見るからに魔法使いではなく肉体派の相手。

 ……これ、ナイフの攻撃通るのか?


 俺が持っていたナイフと鎧を見比べていると、鎧の男が口を開いた。


「また会ったな。まさか、お前が此処まで勝ち上がるとは思わなかったぜ」

「……誰?」

「オレだオレ!」


 そう言って、鎧の男は兜を脱ぐ。

 そこには、数日前に絡んできた強面の男の顔。


 ぽん、と俺は手を叩く。


「ああ、優しいおじさんか」

「違う! 俺の名はヒバナだ!」


 ヒバナは激昂したような声を上げるが、すぐさま鎧を被り直して冷静な声に戻る。

 そういや、バナ街のそっくりさんの名前も俺は知らないな。


「ふっ……、しかし、そんな貧弱な装備でよく勝ち上がれたな」

「俺が貧弱と言うより、ヒバナさんの方が凄すぎるように見えるんだが」


 彼が着ているのは、素人目に見ても業物だ。

 普通のDランクが持っているようなものでは無い。


 少なくとも、前にあった時こんな鎧は着ていなかった。


「この日のために、鎧一式全てレンタルしてきたからな!」

「気合入ってるな……」


 なるほど……。

 流石都会。鎧のレンタルなんて商売も行われてるのか。


「まあ、お前みたいにスキルがない相手なら、鎧がなくとも俺の『斬撃』スキルだけで余裕だったがな!」


 何故かスキルまで教えてくれるヒバナ。

 やはり優しい人だ。


 だが、一方的に知っているのは不公平だと思い、俺も手の内を明かす。


「ご丁寧にどうも。俺は、ちょっと脚が早くて妙に魔法防御力が高いだけだ」

「何だその自己紹介は……」

「……おふたりとも、そろそろ開始してよろしいでしょうか?」


 そんなことをしていると、隣にいた審判員が怪訝そうな顔をする。

 俺たちは、こくりと頷き開始位置に移動した。


「では、最終試合を始めて下さい」


 開始の合図とともに、ヒバナは剣を構えてそのまま突進してくる。


「うおおおおおお!」

「!!」


 耳をつんざくような雄叫び。

 だがそんなことよりも驚いたのは、その俊敏性だ。


 鎧を着ているから動きは遅いとたかを括っていただけに、咄嗟の判断が遅れるがなんとか避ける。


「ちょこまかと……!」


 逃げる俺と、追うヒバナ。

 このままじゃ埒が明かないと、俺からもナイフで斬りかかる。


 しかし、ガキンッと金属同士の衝撃音が鳴るだけで一切効いていなさそうであった。


「……真正面からじゃ無理だな」


 分かりきっていただけに、すぐに別の方法を探る。


「はあ!」


 雄叫びと共に、ヒバナは大振りな一撃を狙ってくる。

 俺はそれを避けるのと同時に、関節部分――、肘当てのない部分をナイフで狙う。


 だが、手に伝わってきたのは、先程と同じ感覚。


「チッ、関節部分を狙っても無理か」

「当然だ! この鎧は1日レンタルするだけで銀貨10枚もかかる業物。ただのナイフごときじゃ、傷一つつかん!」

「まじか……」


 銀貨10枚は、安い鎧程度なら買える額だ。

 それだけ出しても1日レンタルにしかならないのだとすれば、それだけ性能が高いということ。


 もしかしたら、ああ見えて従来の鎧よりも軽かったりするのだろうか。

 ならば、彼の俊敏性も納得できた。


 しかし俺のほうが速いのは事実なようで、ヒバナの攻撃を俺は躱し続ける。


「ハァハァ……、くそ、逃げてばっかりじゃなく、正面から戦え!」

「そう言われてもな……」


 鎧を着て大剣を振るう男と、軽装で避け続けるだけの俺。

 どれだけ鎧が高性能だろうと、どちらが先に体力の限界が来るかなんて、火を見るよりも明らかであった。


 ……正直、このままなら逃げ続けても勝てそうだな。


「ま、どうせなら、やれるだけのことはやっておくか」


 俺はそう呟いて、ナイフを構え直す。

 対するヒバナは、先程と同じく剣を構えて突撃してくる。


「オリャぁ!」


 疲れているからこそ、攻撃はどんどんと大振りになっていった。

 だからこそ、俺は狙ったとおりに動く。


 今度は避けるのではなく、ヒバナに向かって思い切り地面を蹴った。

 そして、その速さを利用したままナイフで関節を斬りつける。

 手には先程までとは違う、肉を切ったかのような感覚。


「手応えは、あり」

「ガッ……! てめぇ、なにを……?」


 俺が振り返ると、そこには血が流れる右腕を抑えながら悶絶するヒバナ。


「脚が速いだけだが、上手く使えば攻撃力の底上げにもなるみたいだな」


 そんな俺の言葉を否定しようと、ヒバナは何度も向かってくる。

 しかし、それは全て徒労に終わった。


 7回目の攻撃が、ヒバナを捉えると同時に、彼は地面へと突っ伏す。


「くそっ……たれ……」


 顔だけは最後まで俺の方を向いていたが、それも終わり。


「ヨハン選手の勝利です!」


 おそらく気絶したのであろうヒバナを審判員が確認し、そのまま俺の勝利を宣言する。


 ……ふぅ。

 どうやら、俺の戦い方は同ランク帯でも充分通用するらしい。

 それが確認できただけで、俺にとっては満足の行く結果であった。


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