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第十六話:Cランク昇格試験①

 それから3日後。

 都会だと時間があっという間に経っていくのだなと感じているうちに、気付くと昇格試験の日になっていた。


 受験者たちはギルドの施設(酒場とは別の場所)に集められていた。

 ざっと見渡しただけでも50人以上。

 想像よりは少なかったが、全員がDランク冒険者だけあってか熱気が凄まじい。


 そして受験者の前で、職員が試験の案内を始める。


「Cランク昇格試験にお集まりの皆様、只今より試験のルールについて説明させていただきます」


 説明されたのを整理すると、以下の通りだ。


・1対1の試合を3回行う。

・全てで勝利した人間はCランクとも戦い、勝利すれば晴れてCランク。

・試合で相手を殺害してしまった場合、失格だけでなく冒険者ギルドからの追放。


 とのことらしい。


 最後のだけは驚いたが、想定内のルール。

 Cランクになるためには合計4試合をこなす必要があり、それを1日で行うとなると中々のハードスケジュールとなる。

 体力を温存できるならば、出来る限りしていくのが良さそうだ。


 ただ1つ懸念事項があるとすれば……


「みんな、思ったよりも装備がちゃんとしてるな……」


 普通の服を着ているだけの俺は、正直浮いていた。


 剣や盾を持っているのは当然として、やけにしっかりした鎧に身を包んだ戦士たち。

 田舎では見たことのないような武器を持っている人間も居れば、リーゼロッテが持っているのと同じような大層な杖を持っている人間も。


 武器の制限が無いのだから当然といえば当然なのだが、この時点で俺は相当な不利を背負っているような気がしてくる。

 俺が用意したのは、いつもどおりのナイフだけ。

 せめて、回復薬ぐらいは多く用意しておくべきだったか……。


 そんなことを考えていると、説明を終えた職員と入れ替わりで新しい職員が入ってくる。


「ただいまよりCランク昇格試験を開始します。では、呼ばれた方から準備の方をよろしくおねがいします」


 その言葉と同時に、俺たちは更に別の施設への移動が始まった。




 試合会場は、この都市で闘技場として使われている場所……らしい。

 らしいというのは、説明でそう聞いただけ。

 中に入るのは初めてだった。

 

 1辺8メートルぐらいの試合場に、それを囲むような観客席。

 Cランク昇格試験なので大した観客は居ないが、さっき確認した限りだと、ちらほらと席に人が座っていた。


 その大半が同業者で、目ぼしい人間が居た場合はパーティーに勧誘するためだとかなんとか。

 試合自体のルールは、場外や降参、気絶でも負けらしい。


「ヨハンさん、次の試合ですので準備をお願いします」


 待合室でのんびりとしていた俺を、職員が呼びに来た。

 それを受けた俺は、待合室を出て試合場へとあがる。


 軽く観客席を見渡すと、見に来ていたリーゼロッテと目が合う。

 絶対に負けるんじゃないぞ、という視線。

 俺は分かった分かったといった感じでうなずく。


 すると、対戦相手も試合場にようやく現れる。

 金髪の男性で、年は同じぐらいだろうか?


 身長は俺よりも少しだけ低く、ガタイもあまりいいようには見えない。

 そしてその手には、リーゼロッテが持つものと同じくらいの大きさの杖。


 ……あー。


「よろしくおねがいします」

「ああ、よろしく。……お前、魔法使いか?」

「始まる前から相手に手の内は明かしませんよ」

「いや、まあいい。なんというか……、すまんな」


 礼儀正しそうな相手だけに、少しだけ申し訳なくなる。

 これなら、ナイフを使うことも無さそうだ。


「では、試合を開始して下さい」


 俺たちが向き合ったのを確認して、審判員が試合開始を宣言する。


 それと同時に、目の前の男性は杖をこちらに向けて大きく詠唱を唱えた。


「先手必勝。氷の矢よ!」

「!」


 そう叫ぶと同時に、1本の氷塊が前方に出現する。

 魔法については詳しく知らないが、詠唱から発動への時間の短さに驚く。

 俺の攻撃よりも、相手の攻撃のほうが確実に早く届くであろう。


 ――だが、それはリーゼロッテが使用していた魔法に比べると、あまりにも小さく、貧弱であった。


「えっ、嘘……!?」


 俺に向かって射出されたそれは、俺にぶつかると同時に砕ける。

 当然だが、俺に一切の負傷は無い。

 精々が、少し冷たくて驚いたぐらいだ。


 唖然としていた相手は、気を取り直してすぐにもう一度杖を振るう。


「そ、それなら……!」


 俺は、敵が次の詠唱を始める前に、彼に向かって一気に駆け出す。

 被害は一切ないと言っても、無駄に食らう義理はない。


 一瞬で間合いをつめた俺は、相手の腰を掴んで持ち上げる。


「は、離しなさい!」

「悪いな、相手を気絶させるみたいな高等技術は持ってないんだ」


 ただ持ち上げて、そのまま試合場の外へと投げ飛ばす。


 ……投げ飛ばすと言っても、そんな長距離を投げる力はないので、ただ端まで運んでいって場外に捨てるように投げるだけ。

 なんとも間抜けな勝ち方だが、仕方ない。


「……よ、ヨハン選手の勝利です」


 審判員も、苦笑いを浮かべながら、俺の勝利を宣言した。


 ……勝てば良いんだよ、勝てば。

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