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第十五話:都会

 試験の申込みが終わった俺は、酒場の方で適当に食事を取っていた。

 リーゼロッテは、この前のデュラハン討伐に関する説明のため、まだ受付で職員と話をしている。


 都会の味付けは田舎よりも濃いようで、慣れない味に苦戦していると男二人組に声をかけられた。


「よう、おめぇ、Cランク昇格試験を受けるのか?」

「さっき横で聞いてたぜぇ、スキルも無いのにどうやってDランクになったんだぁ?」


 凄い見覚えのある2人。

 しかも喋り方まで瓜二つ。


 ここまで行くと本人な気がしてくるが、あいつらは今バナ街に居るのは確実であった。


「……お前たち、バナ街に双子が住んでたりするか?」

「ああ? 初対面の相手に何いってんだてめぇ、居るわけねえだろうが! そもそも、そんな街知るか!」


 違うらしい。

 むしろ無関係なのにこんな似てるほうが、色々と興味深かった。


「んなことより、てめえCランク昇格試験、辞退した方が良いんじゃねえか?」

「何故だ?」

「スキルすら持ってねえ雑魚が試験受けられるものじゃねえって言ってんだよ! あんま雑魚がいると、同じく受ける俺たちの格が落ちるだろうが!」


 どうやら、彼らも俺と同じくDランク冒険者らしい。

 Cランク昇格試験は1年に2回しか無い大きなイベント。


 思ったよりも昇格試験を受ける人間は集まってるのかもしなかった。


「Cランク試験は、受験者たちの試合だ。お前みてえな人間が参加して良いもんじゃないんだよ!」

「ひひ、てめぇみたいな雑魚じゃ怪我をするだけじゃなく、死ぬかもしれないんだぜぇ?」

「……心配してくれてるのか?」

「は?」


 俺の言葉に、男たちは口をぽかんと開ける。


「いや、てっきり俺が怪我をしないよう配慮してくれてるのかと……」

「んなわけねえだろうが!」


 そうなのか? と俺は首を傾げた。

 バナ街の奴らは、口は悪いが大抵の場合裏でこちらのことを心配してくれていただけに、どうも勘ぐってしまう。


「それに、受験者たちの試合だとすれば、雑魚が参加すればするだけ合格しやすくなるんじゃないか? それを無視してわざわざ忠告してくれるなんて……」

「ちげえ!」


 というか、そもそも俺は試験がどういうものかすら知らなかった。

 それを結果的にだが教えてもらった形になっている。


 なればこそ、俺は感謝の気持ちを崩さない。


「大丈夫だ。もし危険だと思ったらすぐに棄権する」

「やべぇよ兄貴。会話が通じねぇ……」


 どうしてか呆れ顔の男。

 そして、ちょうどその時リーゼロッテが席に戻ってきた。


「あぁ、疲れた。……あれ、ヨハン。その人たち知り合い?」


 リーゼロッテの顔を見た男たちは、彼女の顔を見て不機嫌そうな顔をする。


「チッ……。Bランク冒険者がどうしてスキルのないDランクなんかと……」


 元々リーゼロッテの顔を知っていたのか、それともさっきの受付での会話を聞いたのか。

 どちらにせよ、彼らは俺に対して嫉妬の視線を向けてきた。


「……なるほど、そういう感じの人たちね」

「ちがうぞ、リーゼロッテ。初対面だが、やさしいおじさんたちだ。昇格試験について教えてもらってた」

「あ、そうだったの?」


 俺は丁寧に誤解を解いておく。


「……ああ、くそ。もう良い。てめぇ、試験の時にもし当たったら覚悟しておけよ!」


 そんな捨て台詞のようなものを残して、彼らはギルドをあとにしてしまう。

 何をどう覚悟しておくのが良いのだろうか。


 残された俺は、その後姿を見ながら、食事に戻る。


「……本当になんだったの?」


 リーゼロッテは終始よく分からないといった顔をする。

 実際のところ、俺も不明なので分からない。


「さあな。でも、昇格試験の内容を事前に知れてよかった」

「なんか1対1で戦うんだっけ?」

「? お前も受けたことあるんじゃないのか?」

「ボクは試験を受けたことはないよ」


 リーゼロッテは、首を振る。


「何だそれ。試験を受けなくてどうやってBランクになったんだ?」

「ボクみたいに最初から規格外のスキルを持ってると、特例で飛び級できるんだよ。勿論、それ相応の依頼をこなしたからってのもあるけどね」


 なるほどな、と俺はうなずく。

 昔からどの程度強かったかは知らないが、リーゼロッテがCランク昇格試験に参加したとしたら、きっと弱い者いじめになってしまうのはたしかだ。


 と言っても、都市部のギルドだからこその特例なのだろう。


「そんなことより、その試験内容でヨハンは合格できそう?」

「相性次第だ」

「身も蓋もないね、キミは……」


 そう言われても仕方ない。


「相手がDランク相応の魔法使いなら、ほぼ確実に勝てるからな。あとはまあ、生身の人間ならどうにかなるだろ」


 俺の攻撃力は、至って常人レベル。

 しかも魔法なんてものは一切使えない。


 ただしそれが問題となるのは、この前のデュラハンだったり、物理への耐性が強いゴーレムのような魔物だけ。

 ナイフによる攻撃が通るのであれば、速さを活かすだけでどうにかなる。


 通らなかった場合は……、潔く棄権しよう。


「まあいいや。今回落ちたら次は半年後なんだから頑張ってよ」


 そう言って、テーブルの上の食事を口に入れるリーゼロッテ。

 正直俺は今回落ちてもそこまで困らないが、せっかく受けるのだから最善を尽くして頑張るとしよう。


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