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第十三話:かつての仲間③

※ヨハン視点


 シェフィの母親から、シェフィが向かった森の方向を聞いた俺は、そのまま森へと捜索に向かった。


 ただし、土地勘の一切無い場所。

 当たりを付けることもできず、闇雲に探すしかなかった。

 

 ……何故、シェフィを助けるためにこんなことをしているんだ。


 リーゼロッテにも言われたが、自分でもしっかりとした答えはない。

 理由を聞かれても、ただなんとなく、というのが一番しっくりくる。


 本当に面倒くさい性格だ。


 5分ほど森を走り続けたとき、遠くから叫び声のようなものが聴こえてくる。


「誰か、助けて……!!」


 聞き慣れた声。

 そして声の方に近づけば近づくほどに、忌々しい翅音も混ざってくる。


 目視出来る距離まで近づいたときには、すでにシェフィは横たわっていた。

 そして、その上をキラービーが愉快そうに飛び回っている。


 俺はすぐさまナイフを懐から出し、全てのキラービーを切り裂く。


「……ふぅ」


 息をついた俺は、すぐさまシェフィの状態を確認する。

 彼女の右腕には刺されたような痕。

 呼吸は正常で、命に別状は無さそうだった。


 ただし意識は完全に失っている様子で、ゆすっても目覚めない。


 ――このまま彼女を見捨てれば、命を落とすだろう。


「何考えてんだか……」


 俺はすぐに首を振って、そんな考えをかき消す。

 そこでようやく、どうして俺がシェフィを助けに来たかが分かる。


 彼女を許したということは無い。

 ただ単純に、見捨てることで彼女と同類になってしまうのが嫌だっただけ。


 たとえそれが復讐になったとしても、だ。


「本当に面倒くさい性格だな」


 俺は自嘲気味に呟きながら、倒れているシェフィを背負って歩き出した。



※シェフィ視点



「……あれ?」


 シェフィは、朦朧とする意識の中、目を覚ます。

 柔らかい布の感触、そして心地よい感覚。


 彼女が起き上がると、近くから声がした。


「おや、ようやく起きたかな?」

「あんたは……。ッ……!」


 リーゼロッテの顔を見て、シェフィは声を上げる。

 しかし、右腕の痛みに目を瞑った。


「キラービーに刺された毒が抜けきってないんだ。ボクの回復魔法を受けたと言っても、今しばらく安静にしたほうが良いよ」

「! そうだ、私、キラービーに襲われて……!」


 そこでようやく、シェフィは自分の置かれていた状況を思い出す。


 焚き木を集めるために森に出て、……そしてキラービーに殺されそうになったことを。


 しかし今彼女が居るのは、実家が経営している宿屋。

 部屋には彼女とリーゼロッテしか居なく、リーゼロッテの言葉を信じるのであれば、ベッドで寝ていたシェフィを彼女が介護していたことになる。


 状況から見れば、リーゼロッテが助けてくれたと思える。


「森で倒れてるキミを見つけて、ヨハンが助けたんだよ。で、ボクは彼に頼まれてキミの看病をしてるってわけ」

「ヨハンが……? でも、あいつがキラービーを倒せるわけが……」


 だが、説明されたのはシェフィにとって信じられないような事実。


「キミがどのヨハンの話をしているかは知らないけど、彼はDランクで、これからCランク昇格試験を受けに行く最中だ。キラービーぐらい倒せて当然だよ?」

「嘘……!?」


 あり得ないというふうに叫ぶシェフィ。


「ま、信じるかどうかはキミ次第だ。……でも、キミが短期間でヨハンに2度も命を救われたのは事実だよ」


 もしその言葉が本当だとすれば、どれだけ大きい借りを作ったことになるのだろうか。

 ……いや、本当でなかったとしても、かつてヨハンを犠牲に生き残ろうとしたのは事実。


「……謝らなきゃ」

「?」


 自分で味わってようやく分かった恐怖。

 生き残れた今となっても、思い出すだけで背筋が凍りつく絶望。


 そして、それをヨハンに味あわせていたという罪悪感。


「ヨハンに、謝らなきゃ……。なのに私、どうしてあんな酷いことを……」

「不思議なことを言うね、キミは」

「え?」


 リーゼロッテの不思議そうな顔に、シェフィは目を丸くする。

 そういえば彼女は言っていた。部外者からすれば理解できると。

 ゆえに、シェフィを庇おうとしているのだろうか。


「キミが謝って、一体誰が得をするんだ?」


 だが、聞こえてきたのは残酷なまでに冷淡な言葉。

 その言葉からは、侮蔑的なリーゼロッテの意思が伝わってくる。


 どうしてヨハンがキミを許さないといけないんだ、という意思が。


「……そ、それは」

「謝るという行為は、相手に許しを請うためのものだよ。そして優しいヨハンのことだ、きっと表面上は許すだろう。……さあ、それで誰が得をするんだ?」

「…………」


 シェフィが謝って得をする人間がいるとしたら、それは彼女自身。

 謝ることで罪悪感を晴らして気分が良くなるのは、彼女だけ。


 それが分かるからこそ、シェフィは何も言えない。


「ヨハンはキミに会いたくないから、ボクに看病を任せた。その気持ちを反故にしてまでキミが謝ったとして……、彼が喜ぶとは到底思えないな」

「じゃあ私はどうすれば……」


 絞り出すようなシェフィの声。


「それをボクに聞くんじゃないよ。言っておくけど、ボクは見た目通りキミよりも若いんだからね?」


 しかしリーゼロッテはどこまでも冷静な返し。

 悩むのも含めて贖罪だ、と言わんばかりに。


 リーゼロッテは、さて、と立ち上がる。


「キミの目も覚めたことだし、ボクは部屋に帰ろうかな。……ああ、キミの集めてくれた焚き木のおかげでそこそこ快適な夜になった。それは感謝するよ」


 それだけ言って、リーゼロッテは部屋を出ていく。

 取り残されたシェフィは、泣く声を漏らさぬよう、惨めに顔を布団で覆った。


ちょっとした復讐パート(?)は今回で終わりです

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