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第九話:依頼を終えて

「まったく、あれだけ魔法に耐性があるなら最初から言ってくれればよかったのに」


 デュラハンを討伐した後の帰り道を、俺たちは歩く。

 なお、デュラハンの遺体は完膚なきまでにボロボロにしたので、素材等は一切手に入らなかった。


「悪い、それは反省してる」


 俺は素直に謝る。

 説明をしても良かったのだが、なんというかその機会が無かった。


 だがリーゼロッテはそこまで気にしていないようで、先程のことを語る。


「しかし、デュラハンの攻撃を耐えてピンピンしているなんてね。防御系のスキルを持っているなら、盾ぐらい装備すればいいのに」

「盾は、重いから持てない」

「え、なにそれ?」


 ぽかんとしたリーゼロッテの返事。


 ……コレに関しては、持てないのだから仕方ない。

 単純に、盾や大剣というのは重すぎるのだ。


「完全に持てないわけじゃないが、無理して持ったところで利益を感じられなかったからな」


 あれを身に着けて満足に動けと言われても、俺には厳しいものがある。


 もしステータスを振って盾を持つとしたら、攻撃力に振る必要があるのだろうか?

 盾を装備して防御を強くするために、攻撃力を上げるとはこれいかに。


「盾役なのに防具装備しなくてどうするの……?」

「装備したところで、物理攻撃に対する耐性は無いから、盾役にはなれない。せいぜいが、さっきみたいに引きつけるだけだ」


 というか、俺は盾役になったつもりは一切ない。

 ティアナの勧めに促されて結果的にそうなっただけで、本来はナイフを使った攻撃役だ。


「……随分とピーキーな性能だね」

「だが、役に立っただろ?」


 俺が居なければ達成できなかった、とまでは言わないが、無傷で終えられたのには少なからず関与していると思う。


「まあね。僕は基本的に広範囲の魔法しか使えないから、キミみたいな脚も早くて魔法への耐性がずば抜けて高い人間の方が助かるよ」

「……それは、単体の魔法を覚えたほうが良いんじゃないか?」


 俺みたいにステータスを割り振って覚えているわけでも無さそうだし。


「ふ、それでは美しくないじゃないか。ボクの美しさは圧倒的な破壊力の前でしか輝かないのさ……、あうっ」


 俺は気づいたら前と同じように、リーゼロッテのおでこを軽くつついていた。




 ギルドに戻ると、そこはいつにないぐらい人が集まっていた。

 そして集まっていた彼らは、リーゼロッテを見つけるやいなや、盛り上がり始める。


 なるほど。どうやらリーゼロッテをひと目見るために集まったらしい。


 感覚が少し麻痺してしまっていたが、Bランク冒険者というのは希少な存在。

 こんな田舎街では大騒ぎになるのも当然と言えた。


「おかえりなさい。どう? 楽勝だった?」


 受付に居たティアナは、そう問いかける。


「当然さ。ボクにかかれば、デュラハンごとき一発で沈めたよ」


 ……間違っては居ないな。


 そして、その言葉とともに観衆は更に沸き立つ。

 流石はBランク冒険者だという声も多く聞こえ、その中心でリーゼロッテは、ふふん、と胸を張った。


「オレたちも間近で見たかったなー。ヨハンのやろうだけずりーぞ!」

「でも思ったよりも小さいな」

「すいません、握手してくれませんか?」

「ふふ、握手ぐらいならいくらでもしてあげるよ。なんなら、サインもね。……でも、今小さいって言ったやつは後で表出ろ」


 上機嫌そうなリーゼロッテを無視し、俺は近くにあった椅子に腰掛ける。

 あの中に居たら俺まで巻き込まれそうだ。


「Bランクともなると、色んな武勇伝があるんですか?」

「そうだね。ボクが今までで1番苦労したのは――」


 リーゼロッテはそう言って、自らの過去を話しだした。



 ――1時間後。


「そして、ワイバーンと対峙したときボクは杖を構えて……」

「もう、みんな居なくなったぞ」


 誰も居なくなったギルドで、リーゼロッテはなおも武勇伝を語り続けていた。

 それにようやく気づいたのか、リーゼロッテは、やれやれ、とため息をつく。


「……全く、自分から話を振っておいて身勝手な観客たちだ」


 ちなみに10分ぐらいしたあたりから、「あ、こいつヤバい奴だ」と皆が気付き始めたのか、段々と人が居なくなっていった。


 その中には数日前に俺に絡んできたガラの悪い冒険者も居て、「いつもお前にばっかり貧乏くじを引かせて悪いな」、と同情するような言葉を残して去っていった。


 なんなら、受付のティアナですら「用事が……」と明らかな嘘を付いて裏に引っ込んでしまっている。


「そんな性格だと、パーティーも組みづらいだろうに……」

「べべ、別にパーティーとか組まなくても良いし? お前の魔法はパーティーだと使いづらい、なんて言われたこと無いし!?」

「言われたことあるのか……」


 俺は、初めて同情するような目でリーゼロッテを見た。

 彼女は居心地が悪そうに、話題を無理やり変える。


「……そうだ、キミがボクとパーティーを組んでくれればいいじゃないか。相性がいいのはさっきのクエストで確認済みでしょ?」


 突然の提案に、俺は驚く。


「……は? ……いやいや、俺はただのDランクだぞ。馬鹿言うな」


 なんなら、数日前までFランクだった人間だ。

 今回クエストを一緒にこなしはしたが、パーティーを組むとなると話が変わってくる。


 しかしリーゼロッテは名案だとばかりに語気を荒くした。


「別に不思議なことじゃないさ。Dランクでもキミみたいに突出した才能があれば、Bランクと組んでもおかしくない」

「……いや、たしかにそうかもしれないが。パーティーを組むってのはもっと真剣に考えるべきで……」


 そう。俺はかつてまともに考えずにパーティーを組んだからこそ、仲間に見捨てられた。

 出来ることならば、あんな目には二度と会いたくない。


 ……まあ、リーゼロッテはそういうことをする人間じゃなさそうだけれど。

 ただ裏切るとかじゃなく、唐突に背後から魔法が飛んできそうなんだよな……。


「即答を求めるなんて無粋な真似はしないよ。ゆっくり考えると良い」


 俺が悩んでいる姿を見て、リーゼロッテは、フフ、と笑った。


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