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三題噺⑰桜の散る頃に

作者: 嘆木鳩

桜のような恋がしたいと思っていた。

桜が芽吹く前のワクワク感。桜が咲いて、それを見た時の喜びや満足感。さらには、桜が散った後にさえ、切なさと愛しさを感じるのだ。


彼に告白をしてから、ずいぶん時間が経った。。きっかけは、完全に私のひとめぼれだった。偶然彼とすれ違った時に見た、友人と笑いあうその笑顔がまぶしくて、きっと彼なら私に幸せを与えてくれると、勢いで告白したことを覚えている。彼はかなり戸惑っていた。とりあえず友達からという条件で、彼とつながりを持つことが出来た。桜色に染まった花吹雪が、私たちの出会いを祝福してくれていた気がした。

彼はスポーツが趣味だと知ったので、私は彼とテニスをしようと持ち掛けた。幸いなことに、テニス道具の一式は依然もらったものがあったし、話題作りのきっかけとしてはちょうどいいと思った。その試みは成功したようで、それ以降、彼から私に話しかけてくれるようになった。

精悍な顔立ちのイメージとは異なり、彼はいわゆるオタクと言われる人だと知ったのは、付き合いだしてからだった。彼は、いわゆるツンデレというものが好きだったらしく、彼に好かれるためにツンデレについた猛勉強した。私はいまいちよさがわからなかったけど、好きになった人の為にと頑張った。

彼に告白して数か月が経ち、彼を家に招く機会が訪れた。彼は私の部屋の中を見てひどく驚いていた。私の部屋は物であふれかえっており、その物持ちのよさに驚いていたようだ。プラモデルにアニメのDVD、ぬいぐるみや指輪など。中には、私のイメージと会わないものもあったようだ。私にとってはどれも幸せな思い出だし、どれも捨てるなんてできないと言ったら、最初は少し引いてたっぽいけど、とてもいいことだねと笑ってくれた。

さらに月日が経つと、今度は彼からデートに誘ってくれるようになった。彼の車に乗ってドライブを楽しんだ。最初あった時とは考えられないくらい、彼は私に対して話しかけてくれたり、プレゼントをくれたりするようになった。

彼の私への初めてのプレゼントは、防犯ブザーだった。ここ最近このあたりで男性の死体が発見されたらしく、彼によると、この町では数年前から時折こうした事件が起こっているらしいのだ。そのため私のことが心配だったから、このプレゼントを選んだとのことだった。正直最初は、プレゼントのセンスとしてはかなり悪い方だなと思って、そんな心配する必要ないのにと逆に笑ってしまった。けれど、私の身を案じて一生懸命考えてくれたのかと思うと、これはこれでありかなとも思えた。彼からのプレゼントなのだから、大事にしておかなければと思った。

ついに彼が、私に大事な話があるといってきた。彼は前のように車で私をドライブに連れて行ってくれた。ついた場所は、とても見晴らしのいい展望台だった。彼と少し他愛もない話をした後、彼は意を決したようにそれを取り出した。その手には、小さな指輪があった。彼からの気持ちを理解し、私の目に涙があふれた。とうとうこの日が来たんだと、そう思った。正直、今のままの関係も悪くないと思っていたけど、どうやら彼はそうではなかったらしい。彼はあたしの手を握り、必ず幸せにするからと、そう伝えてくれた。私も幸せになりたい。そう思った。だから、

「あなたの事なんて別に好きじゃないんだからね。」

そんな、彼の好きなツンデレセリフを言って。


私は彼をそのまま突き落とした。




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