聖騎士は姫よりも騎士
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「ヨーセノ村」に帰ったアサギ達は村長に蟻の女王がどこかへ飛んでいったと報告した
すると村長は「ヨーセノ村」の近くに「蟻の巣」があるからそこに逃げたに違いないので退治してくれと予想していた通りにクエストが進んでいった
「やっぱり予想してた通りだったねー」
「まあ、そうだろうな、この流れ以外考えられないよな」
「そうね、じゃあ早速「蟻の巣」まで向かいましょうか」
アサギ達は消耗したアイテムなどを買い直し「蟻の巣」へと向かっていった
「「蟻の巣」かー、あんまり中に入りたいとは思わないね」
「あんまりリアルすぎるのは流石に勘弁してもらいたいわね、すごく部屋の数とかありそうだし」
「んー、俺のイメージでもそうだな、かなりの部屋数があって蟻の数も相当いるイメージだ」
「多分そうなるんじゃない?ま、少しずつ潰していくしかないでしょ」
「そうね、インスタントダンジョンだし、ドロップも期待できるしね」
「レベル帯が海賊船と同じくらいなら結構いい装備が出てもおかしくないもんな」
アサギ達は「蟻の巣」の中へ入っていく
内部は薄暗く自分たちがいる所のみが少し明るくなるだけのダンジョンのようだ
「セッキー、マーリン、灯り~」
「はいはい」
二人の魔法のお陰で多少見晴らしがよくなる
アサギ達は「蟻の巣」をどんどん奥へと進んでいった
「なんかキノコと同じような感じだね」
「あー、そういえばそうだな、あれは一応森?ってか木が壁を作っててここは完全に土の中だけど似てるっちゃ似てるな」
「通路と広くなった部屋があってその部屋で戦闘するって意味では確かに似てるわね」
アサギ達はダンジョンで最初の攻略は全部の敵を倒すというスタンスで攻略を続けている
分かれ道があって進んだ先が行き止まりじゃなかったら元来た道を戻り反対側を攻略してからその道へと戻った
出てくる敵は蟻ばかりのようだ
中でも兵隊蟻がうじゃうじゃ出てくる、その内重装兵隊蟻や高機動兵隊蟻など名前を聞けばすぐにどんな特性なのかがわかるような蟻もぞろぞろと出てきた
アサギが苦労したのはやはり遠距離攻撃だ
砲兵隊蟻はかなり遠くから蟻酸を飛ばしてくる、光の腕で引き寄せるか一気に近づいて倒すなどでなるべく早い段階で倒す事にしていた
敵に囲まれた時に防御力を下げられる事は十分な脅威だ、しかもこの砲兵隊蟻の蟻酸は他の蟻酸の防御力低下と名前が違うデバフらしく防御力低下が重複する
さっさと倒すか眠らせるなどしないと流石のアサギでも相当のダメージを負ってしまう
防御力を下げられた時に気を付けなければいけないのはやはり近衛兵蟻と高機動兵隊蟻だろう
近衛兵蟻や高機動兵隊蟻は蟻酸での攻撃はない、しかし噛みつきによる攻撃は普通の状態の時でも結構なダメージを食らう
しかも高機動兵隊蟻の方はスキルによる攻撃も行うのでやっかいだ、他の蟻と比べてHPと防御力が低いのでこちらもさっさと倒しておきたい所だ
重装兵隊蟻は防御スキルを使うので厄介と言えば厄介だがどうやら自分にしか効果がないようなので最後まで残しておいていいだろう、攻撃力もそこまで高い訳ではないが防御力は高いので厄介というより面倒くさいと言っていいだろう
そんな蟻達を倒しながら奥の方へと進んでいくと今まで蟻が湧いてきた部屋よりも大きな部屋にでる
マップの表示では奥へまだ続いているが、その部屋には今までの蟻よりも一回りも二回りも大きな蟻が部屋の中央に居た
「おっと中ボスって所か?」
「そうね、名前は姫蟻ね」
「蟻の世界に姫とかいるのか?女王以外は全部働き蟻だろ?」
「はいはい、リアルとゲームをごっちゃにしないの」
「姫と言えばナイトだね!!」
「あっちゃんはどっちかって言うと姫よりもナイトに反応するタイプよね」
「そうね、アサギちゃんはナイトの方だね」
「途中でナイト蟻・・・蟻ナイト・・・?が湧く可能性は高いだろうな」
「女王も近衛兵産んでたしね、雑魚召喚はあるでしょうね」
「よーし、大きいけどあれだけ部屋に余裕があるから後ろ向かせるね、雑魚でたらそっち優先で、もし一種類だけならサインつけるけど今までのだったら砲撃、高機動、近衛、重装の順かな」
「おう、妨害は任せておけ」
「よし、じゃあいくよー、とっつげきー!」
アサギはでっぷりと大きな姫蟻に向かって走り始めた
だがアサギが姫蟻の索敵範囲内に入ると姫蟻は部屋の奥にある通路へ逃げ出した
「あれ?行っちゃったね」
「んー・・・そうだな、まあ、じゃあ追いかけるか」
アサギは姫蟻が逃げた通路を進んでいく
通路から次の部屋の中に姫蟻と蟻の卵が複数あるのが見えた
「あー、なるほど、ここで戦闘?んー、違うか、姫蟻のHP減ってる、卵を産むとHPが減ってそれを倒していくって感じかな?」
「あー、はいはい、そのパターンね、卵は何個くらい?」
「えーっと、六個かな」
「問題は一気に割れるのかそうじゃないのかって事とおかわりがあるのかないのかだな」
「こういうのって結局雑魚倒してもまた逃げられるのよね」
「HPの減り方すると・・・全部で7回くらい、は流石に多すぎるな、HP半分から本番って考えて全部で3回かな」
「妥当と言うか無難な所ね、じゃあアサギ、一気に割れるかもってのも頭に入れておいてね」
「うん、わかった、いくよー!」
アサギが姫蟻の居る部屋に走って入っていく
アサギが入ると同時に姫蟻がまた奥の通路へと逃げ出し部屋の中にある卵全てにヒビがはいった
「全部にヒビはいった、多分全部くる」
アサギは卵へと近づいて行く、すると全ての卵から高機動兵隊蟻が産まれた
アサギはすぐに全ての蟻にサインをつけパーティメンバーに倒す順番を知らせ、範囲挑発を発動し全ての蟻のターゲットを自分へと向けた
アサギのサインを見た他のパーティメンバーはすぐに自分の役割を果たしていく
マーリンは数字が大きい蟻に足止めや睡眠魔法、まぁちゃんとダガーは小さい数字の蟻から倒していった
全ての高機動兵隊蟻を倒して六人は次の部屋へと向かう、そこには先ほどと同様に姫蟻とそれを囲むように卵が並んでいた
アサギがその部屋へはいると卵から重装兵隊蟻が産まれまた姫蟻は部屋の奥へと逃げていった
「んー、嫌な予感が」
アサギはサインを付け範囲挑発を発動しながら言う
「なんだ?どうかしたか?」
「んー、近衛は女王が産んでたからさ、次は順番的に砲撃かな、って、もし姫蟻と砲撃との戦闘が一緒だとめんどくさいな、ってだけ」
「そうなったら確かにめんどくさいな」
「うん・・・どうしようかな」
重装兵隊蟻を倒しながらアサギはそうなったらどう戦うかを考える
「よし、姫蟻が遠距離系じゃないと仮定してとりあえず全部のヘイトを稼いで部屋の奥まで姫蟻を連れて行くから砲撃を一匹ずつやってもらう、これしかないね」
重装兵隊蟻を全て倒し終えアサギが言う
「ていうかそれ以外に攻略方法が思いつかない、という感じだけれども!」
「まあ、それしかないわよね、部屋に足を入れた瞬間に全部の蟻が産まれちゃうわけだからね」
「一匹だけ光の腕で釣るって事もできなさそうだしな」
「そうだね、多分無理だと思うよ、よし、じゃあ姫蟻が逃げなかったらそんな感じで、逃げたら適当に散らすね」
アサギは部屋の中へと踏み込む
アサギ達の予想は半分当たり、半分外れといった所だ
当たりなのはHPが半分になっている姫蟻が逃げずにアサギに向かってきた事、外れなのは産まれてきた蟻の内に匹が砲撃兵隊蟻で残りの四匹が近衛兵蟻だったという事だ
アサギは姫蟻を中心に全部の蟻範囲挑発スキルをかけると部屋の奥へと駆け出した
その時砲撃兵隊蟻にこいつらからお願いとわかるサインをつけた、そしてその後はこいつらと近衛兵蟻にもサインをつけた
アサギが部屋の奥へと進むと姫蟻と移動を封じられていない近衛兵蟻が付いてくる
アサギは囲まれてはいるが一番攻撃力が高いだろう姫蟻の攻撃に盾を合わせた
姫蟻は女王蟻と同じく前足でも攻撃を加えてくる、丸太のような太い足が襲い掛かってくるのはなかなかの恐怖だ
だが女王蟻の足に比べるとそこまでではないだろう、なにせ女王蟻の前足は丸太は丸太でも樹齢千年の屋久杉の丸太のようでこちらはそこらへんに生えているただの杉のような丸太だからだ
当然攻撃力も女王蟻と比べれば高くない、周りにいる近衛兵蟻や砲撃兵隊蟻の攻撃もあるので大分減らされてはいるがこれは時間の問題だろう
マーリンやまぁちゃん、ダガーは砲撃兵隊蟻から倒していく、アサギの防御力は最初の蟻酸により多少減ってはいるがさっさと倒してなるべく防御力が減っている時間を少なくする為だ
そして近衛兵蟻も倒し終わるとすぐに姫蟻の背中へと襲い掛かった
姫蟻の攻撃は前足以外にも女王蟻と同様に噛みつき攻撃と蟻酸があった
姫蟻は器用にお尻の先を天井の方に向けて蟻酸を噴出する、すると蟻酸の玉が何発も山なりになりアサギ目掛けて飛んできた
アサギはそれを盾で防ぐが全てを防ぎ切る事はできなかった
防御力が減るデバフと女王蟻の蟻酸にもあったDOTダメージがアサギへのダメージを増やしていく
「この蟻酸は解除できないからやっかいなのよね」
セッキーはぶつぶつ文句を言いながらアサギへの回復を続ける
「ああ、ごめんね、次は躱すね」
「あ!違うわよ、アサギ、アサギに対して文句を言った訳じゃないのよ!!」
「くふふ、わかってるよ、セッキー」
「もう!集中しなさい!」
「くふふ、はーい!」
そんな事を話していると姫蟻がお尻を右側へと向けた、その先の地面には30度ほどの魔法陣が攻撃を予兆している
「っと、このケツの向け方からすると絶対に振ってくるな、反対側に避けるか」
姫蟻の後ろに居たアサギ以外のパーティメンバーが姫蟻のお尻が向いていない左側に逃げた
そして姫蟻は蟻酸をまるでレーザーのように放出させながら素早くお尻を動かし姫蟻の後方、そして左側までを攻撃した
「結構動きはやかったね、もうそこから攻撃したら?」
「そうだな、ここなら多分大丈夫だろ」
だがこの攻撃が姫蟻の後方180度を攻撃するものではなかった事が次の同じ攻撃でわかった
次に同じようにお尻を動かして魔法陣が出た時姫蟻はそこまで右側にお尻を動かさなかったのである
「ん、あそこから180度くらい動くって事は・・・アサギも喰らうぞ!!!」
アサギを含め全員が必死の形相で姫蟻の顔の前を通り抜けお尻の反対側へと飛ぶ
姫蟻はアサギへ近づきながら素早くお尻を振り回した
幸いダメージを受けた者はいなかったが全員が冷や汗をかいた
「あー、なんで今お尻をそんなに右にやらなかったんだろうね」
「んー・・・わからないわね、流石に2回しか喰らってないし・・・それにもうすぐ倒せるから検証もできないわね」
この攻撃は実はヘイトをニ番目に持っているプレイヤーと姫蟻のお尻の先を結んでそこから左右に90度ずつに蟻酸を放つという攻撃なのだ
しかしその攻撃が終わってすぐ後に姫蟻は宝箱を残し消えた
流石に最初からHPが半分削れているのだ、討伐時間はそこまでかからないだろう
「まあ、よくわからんが次もし来たら色々考えてみるでいいんじゃないか?」
「まあ、そうだね、えっと、ドロップは・・・お、なるほど、ここはアクセサリーがでるんだね」
「へぇ、一応差別化してるのね、効果は?」
「これは攻撃魔法職用のリングだね、効果魔法の威力、命中共に上がるよ~」
「お、じゃあ俺だな、あざーっす」
「ふむ・・・悪くないな、これは周回も有りなんじゃないか?」
「ぷぷっ!ダガー君それギャグ?一番言わなさそうなのに!」
「あ、いや、アサギさん、そうじゃない、たまたまだ!たまたま!」
「いいじゃないか、ダガーだってギャグを言ったって、なぁ?有りだろ、アサギ」
「いや、それは面白くないわよ、マーリン、ね、アサギ」
「うん、面白くない」
「おいおい、お前ら俺に冷たくないか?」
「さて、じゃあ先に進むとするか」
「うん、そうだね、ダガー君、行こ行こ」
「「「「おー!」」」」
「おいおい・・・ひどくない!?」
マーリンの叫びが部屋の中へと響き渡った




