聖騎士は心で通じ合う
書いたものが消えて、それからすぐ書いたのに字数が1000も合わない・・・こわっ
「「「ダンチョー団長、おかえりなさい!」」」
「ダンチョー団長、誰です?その子」
「あれ?ダンチョー団長お子さんいましたっけ?似てないっすね」
「え、団長に子供いるなんて聞いてないぞ?まさか隠し子!?愛人との子っすか!?」
どうやらダンチョーは随分と慕われているらしい
教会に入って少しの間に何人にも話しかけられてきた
「うるせぇぞ、お前ら!仕事しろ、仕事!仕事がねぇなら俺が稽古つけてやるぞ!」
おおー・・・逃げるのはえ~・・・こういうのを蜘蛛の子を散らすって言うんだろうなぁ・・・
「まったくあいつ等はしょうがねぇな・・・すまねぇな」
なんかちょっと口調が変わった気がする、これがっと本来の性格なのだろう
自分の所属している教会に戻ったから仕事モードを終了させたのだ
「いえいえ、大丈夫です」
「そうか?よし、じゃあ早速だが稽古場に向かうとするか、こっちだ、付いてきてくれ」
ダンチョーの後について教会の外に出るとそこにはそれなりに広い空き地があった
(わああああ!!案山子だ!あ、あそこの壁焦げてる!きっと魔法の練習に使ってるんだ!!)
アサギは自分が思い描いていた通りの稽古場をみて少し興奮していた
「さて、始める前にとりあえず自己紹介だ、知ってはいるだろうが俺の名前はダンチョー、この教会の騎士団の団長をやっている、よろしくな」
「あ、アサギって言います、よろしくお願いします!あとありがとうございます!」
「ああ、いや、構わねぇよ、で一応確認なんだが君は自分の事を弱いって言ってたけどレベルはいくつなんだ?」
「あ・・・・1・・・です・・・」
「ん?」
「あの、その・・・1です・・・・」
「そ、そうか・・・ま、まあ、レベルやステータスだけで全ての実力が決まる訳じゃあないからな、よし、じゃあそこに木剣と盾があるから装備して、よしよし、なかなか似合ってるじゃあないか!俺からは攻撃しないでおくから自由に攻めてくるんだ、大丈夫、君のレベルじゃ差がありすぎて俺は怪我なんかしないしこの教会には回復魔法を使える奴がごろごろいる、さっき会った暇な奴らにもいるから声を掛けたらすぐにきてくれる、わかったならかかってきなさい」
「ああ・・・今日も空が青いなぁ・・・」
アサギは空を見ていた
見上げているのではない、見ているのだ
つまりアサギは寝転んでいる、当然自分から寝た訳ではない、やった犯人はダンチョーだ
「ハァ・・・ハァ・・・も、もう1度お願いします!」
ダンチョーが受けるだけでなく試しに少しの力で受け流したりしただけでものの見事にアサギは倒れてしまう
だが聖騎士になれたという喜びと、目の前に聖騎士がいるという喜びが彼女を動かしていた
(ふむ・・・弱い・・・これはもしかしたら本当にレベル1なのでは・・・?しかし、レベル1にしては強い気もする・・・いや、彼女は外遊人だと言っていた、外遊人というものはそういう物なのか?)
実際同じレベルであったらプレイヤーとNPCならプレイヤーの方がステータスは高い
だがこのゲームはフルダイブ型VRMMOだ、ステータスだけでは優劣はつけれない
どれだけステータスが高かろうが身体を動かすのが下手くそならばそれは強いとは言えない
「まおクエ」ではどんな人でも楽しく遊べるよう身体の動きを補佐してくれるシステムが搭載されている
だがNPCは違う、戦闘職についているNPCに搭載されたAIはたとえそれが書き込まれたものだとしてもそのNPCが生まれて育ったとされる年月を忠実に行動に反映させていた
それは人類の敵を殺す為、人類を敵から守る為に搭載された膨大な経験値
その経験値からしたら少しのレベルの差なんてものはあってないようなもの
いくらプレイヤーが強い剣を持っていたとして、NPCが小さなナイフだけしか持っていなかったとしても勝つ事は難しいだろう
戦闘職についているNPCはそういう存在だった
しかしその経験が、その強さがあったからこそダンチョーの頭の中でプレイヤーというこの世界の異物の外見と弱さを結びつかなくさせていた
(あまりにも弱い・・・これは・・・そうか、考えたくはなかったがまず間違いないだろう・・・)
ダンチョーは勘違いをしていた
(この子はきっとどこかの教会が外遊人を味方につけようとレベルが低いままでパラディンに任命したのだ・・・さっき教会に入った時に誰も知っているような反応を見せなかったから多分うちの教会ではないとは思うが・・・しかしこの子はそれを嘆き、強くなりたいと言った、稽古をつけてくれと言った!くそ!どこだ、どこの教会がこの子を利用しようとしているんだ!!アサギよ、強くなれ!クラスチェンジの試練を受けないでクラスチェンジをした己を恥じているのだろう・・・強くなるんだ!そして強くなったら胸をはって言うんだ、自分はパラディンだと!!自信を持ってパラディンを名乗るんだ!その時はうちの教会にくるといい、ちゃんと試験を受けさせてやるよう俺がパラディンロード様に頼んでやる!そしたらお前ちの教会のパラディンだ!)
ダンチョーは勘違いをしていた
そしてその勘違いからついつい力が入りすぎてしまい、そのたびにアサギの身体は宙を舞いダンチョーはすまんすまんと謝るのであった
そしてアサギがそろそろ立ち上がるのも限界になってきたので今日の所はこれで終わりという事になった
「ハァ・・・ハァ・・・ありがとう・・・ござい・・・ました・・・」
「ああ、お疲れさん、大丈夫か?帰れるか?なんならうちの宿舎に泊まっていくか?」
「い、いえ・・・だいじょ・・・ぶ、です・・・」
「そ、そうか?まあ、それならいいが、また時間があったら来るがいい、俺が居たら俺が稽古をつけてやるし、居ない時は代わりに誰かが稽古をつけるように話は通しておくからな」
「ふぁい!!ありがとう、ございます!!では・・・また来ます!!」
「ああ、いつでもこい」
アサギは身体を引きづるようにして道具屋の方へ歩いて行った
「ダンチョー団長、で、あの子誰なんですか?」
「ん、フクフ副団長か・・・あの子はな・・・多分どこかの教会に利用されているんだ」
ダンチョーは勘違いをしているのだ!!
「実際に打ち合ってレベルが低いのは確認した、あの実力じゃあクラスチェンジの試練を突破する事なんてできやしない、これは間違いない」
「はぁ・・・で、なんでそれが利用されていると繋がるんで?」
「考えてもみろ、予言の通りに外遊人が増えてきただろう?どこかの教会が信者を増やすか戦力を増やす為にあの子をパラディンにしたんだよ、だから自分が所属している騎士団の名前を出せなかったんだ」
「なるほど、でもあの子本当にパラディンなんですか?自称なだけじゃないんです?それならただ単にあの子が余計な事を言うのが悪いんじゃないですか」
「いや、あの子はパラディンだ」
「うん?何故言い切れるんです?ステータス見たんですか?」
ダンチョーはその問いに首を横に振った
「え、じゃあなんで・・・?」
「あの子にはな、あの子の心には聖騎士道があった」
「は?」
「俺にはわかる、だからあの子が聖騎士なのは間違いない」
「はぁ・・・そうですか・・・でもそれが本当ならまずいですね、すでにパラディンを増やしているのか、もしくはあの子がテストケースでこれから増えていくのか・・・少し調べてみますか?」
「ああ、そうだな、試練なしにパラディンを増やすなんて事は絶対にやってはいけない事だ、もし実力が足りていない人間が前線に増えたらどうなるか・・・そんなんじゃ戦線は維持できんぞ」
「ええ、それは確かです、自分の首が落ちる前にしっかり調べるとしましょうか、それにしてもあの子、また稽古に来ますかね?」
「ん、くるだろう、なんたって聖騎士道を持っているんだからな」
「つまりは勘って事か・・・やれやれ・・・」
「ん?フクフ、お前なんか言ったか?」
「ん、いえいえ、おっといけないじゃあ私はお仕事がありますのでこれで!じゃあまた!失礼します!」
「あ、おい、まてよ、おーい」
フクフ副団長が教会の奥に駆け込んだ時アサギも道具屋裏の自分の教会に戻ってきた
そしてすぐにログアウトするとそのままベッドに倒れこんだ
「くふふふ・・・あのダンチョーさん、絶対聖騎士道を持ってるわ!また稽古にいくのが楽しみだなー!!」
わかる人同士はわかるのかもしれない