聖騎士と騎士、強いのはどっちだ
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アサギは皆と別れ1人練兵場に向かう
そこはソードマンからナイトへクラスチェンジする者が訪れる所でありアサギはソードマンからいきなりパラディンロードになってしまったのでクエストを確認したりする程度で深くは関わってこなかった
上下が開いている両開きのドアを開けアサギは中に入る
周囲のプレイヤーやNPCの視線が1度集まるが別に誰かが話しかけてくるという事はなかった
アサギはとりあえず受付に向かう
「あの、すいません、土の教会のダンチョー団長から言われてここに来たアサギって外遊人なんですけど・・・」
「あ!貴女がアサギさんですか!ええ、ええ!話は聞いております!戦士長の部屋まで案内しますね!!」
受付の人が食い気味に話を先に進めてくる、どうやらしっかりと受付の人にまで話は伝わっているようだった
アサギは受付の人が隣にちょっとここよろしく、といって立ち上がり歩き出したのでその後を追いかけた
その時周りのNPCが若干ざわついたのでそれに釣られプレイヤーもざわつきはじめた、口は動いていないが多分何かを喋っているのではないだろうかと思った程度ではあるが
土の教会の団長室に入り浸ってるアサギからしたらなにも不思議な事はないが1個の団体の長の部屋に案内されるという事は本来はなかなかない事なのだ
好感度が一定以下の場合はクラスチェンジの時に会うしかない、少し上がっていくと特別なクエストを受注されたりするのでその時も会えるがそれには多数のクエストをこなしていくしかないのだ
それこそ周りのプレイヤーに顔と名前を覚えられるくらいには頻繁に入り浸らなければそこまでの好感度は稼げないだろう
だが練兵場に入り浸ってるプレイヤーの中にアサギの顔を知っている者は少ししかいなかった
しかも知っている理由は掲示板で書かれていた教会の内部に入る事が出来るプレイヤーという事と「テンプルウォーズ」で最後の教皇のメインタンクをしていたという事だけだ
練兵場の中にいたプレイヤーは噂のアサギが練兵場の戦士長に呼ばれるような事があるとは思えなかった
だがまあ、クエストを進めていけば会えるのかも知れないな、くらいの話でその場は済んでいるのだが
つまりこの時点でダンチョーの計画は成功しない可能性しかない
アサギの事を練兵場で見かけた事がないのにどうして練兵場で稽古をしたという言葉を信じれるのだろうか
だがアサギはそんな事を考えていない、そもそもそんな事聞かれるとも思っていないからである
「戦士長、アサギさんをお連れしました」
「お、そうか、入ってもらえ」
部屋の中から低い声で了解の言葉が飛んでくる
「失礼しまーす」
アサギは部屋の中へと入る、その部屋は土の教会の団長室と同じくらいの広さの部屋で本当に必要最低限の物だけしか置かれていないシンプルな部屋だった
「君がアサギか、ダンチョーから話は聞いている、俺は王都騎士団の戦士長のセンシンだ、よろしくな」
「あ、アサギです、よろしくお願いします」
「んむ、でだアサギさん」
「あ!アサギで大丈夫です!」
「そうか?じゃあアサギ、早速本題ではあるのだがうちとしても外遊人に強くなってもらいたいという思いはある、そうなる為にうちの設備を使ったり部下と研鑽していくというのはありがたい事だ、だから大いに使ってくれて構わない」
「あ、はい、わかりました、じゃあもし聞かれたらここで特訓を何度か受けたって言わせてもらいます」
「ああ、そこまではっきりとは言わない方がいいだろう、練兵場に訓練できる所があるんですよ、くらいでいいんだ、間違ってはいないからね、ただ君にも少し私の部下と手合わせをしてもらいたい、ダンチョーが褒めている君の実力を見ておきたいんだ、こう言っては失礼になるのかもしれないが外遊人は見た目からは実力が判りにくくてな、良いだろうか?」
「はい、大丈夫です、勉強させていただきます」
「よし、じゃあ早速稽古場へ行こうか、君達外遊人と教会で模擬戦をやっただろう?その時に教会は稽古場に結界をかけてもらい怪我をしないように訓練ができるようになったらしいが実はうちにもその結界をかけてくださったんだよ、本当に土の神ドロニコフ様には感謝しなければな、だから遠慮なくやってくれ」
「はい!わかりました!」
アサギはセンシンの後を稽古場までついていった
稽古場に入る時になんとも言えないなにかの中に入った感触があったので確かに結界で覆われているのを実感した、これは闘技場や土の教会の稽古場でも受ける感覚だからだ
「集合!お前ら今日は土の教会の騎士団長が自ら鍛えているパラディン候補のアサギに来てもらった!模擬戦を受けてくれるという事なので誰か相手してもらえ!ちなみに外遊人なので見た目に騙されるとやられるぞ!誰かいないか!?」
「あ、よろしくおねがいします、アサギです」
アサギが頭を下げるとそこに居たNPCは全員頭を下げた
全員が声を合わせて挨拶してきたのでアサギはなんだか運動部みたいだな、と思ってしまった
「では、自分いいでしょうか」
NPCの1人が手を上げる
「おう、じゃあ手合わせしてもらえ!」
アサギと手を上げたNPCを中心に他のNPCが周りを囲む、別にアサギを逃がさないようにしているわけではない、よく見ようとして動いているだけだ
「それでは、構えて、はじめ」
周りにいたセンシンが開始を告げる、その時相手が槍を構えながらアサギに向かって突撃してきた
だが遅い、アサギからしたら脅威はなにもない、だがセンシンから遠慮するなと言われたので槍を躱しながら少し身を屈め屈伸するように相手の腹に斜め下から盾をぶつける
ぐはっ!といううめき声を上げながら対戦相手は2メートルほど吹っ飛んでいった
幸い周りを囲っているNPCは飛んでくる仲間を避けたので2次災害はない、アサギは吹っ飛んでいったNPCまで近寄り剣を振り下ろそうとして一瞬止まり
「いつも最後までやって終わりにしてるんですか?」
とセンシンの方を向き尋ねる
「ああ、結界を張っていただいてからはそうしている、もしも何かあった時に倒せましたけど殺せませんでした、じゃあ困るからな」
「わかりました」
アサギは右手に持つ剣を首に向け落とした
周りのざわめきが収まらない
それもそうだろう、アサギは見た目というか中身もであるが若い女の子なのである
それが訓練をしている兵隊を2発、いや、最後は首を斬っただけなので1発で倒したのだ、そして躊躇なく首を斬った事にも驚きを隠せていない
流石あの土の教会の団長に鍛えられているだけある、だの教会の関係者があんなにもあっさりと?だのと言った声が聞こえてくる
アサギは流石に結界がないなら止めは刺さないんだけどなー、と考えながらもそれは言葉にしなかった、あっさりと首を飛ばした事実は変わらないからだ
「よし、次は」
センシンが次を探すと今度は複数のNPCが俺が俺がと手を上げた
「ふむ・・・流石に全員を相手にするのも疲れてしまうだろう、今ので大体アサギの実力はわかったよな?だから次はこの中の最強をだそう、いけるか?」
「はい!」
センシンの視線の先にいたNPCが元気よく返事をする
どうやらこの人がこの中にいる1番強い人のようだ
「アサギ、こいつがこの中で1番強い、うちの組織の中では・・・まあ、ナイトの中でなら5本の指にははいるか?流石にナイトマスターには勝てないがもう少し実力をつけたらすぐにでもナイトマスターになれるだろう、そんな所だ」
「はじめまして、ソードスと言います、よろしくお願いします」
「はじめまして、アサギです、よろしくおねがいします」
「よし、ではまた中央に、構えて、はじめ!」
ソードスは二刀流だ、2本の剣を構えながら動かないでいる、先ほどのアサギの動きをみてむやみに動いたら負けると思っているのだろうか、それとも守る方が得意なのだろうか
アサギはさっきは向かってきたから待っていたが本来は自分から飛び込んでいくタイプだ、相手が動いて来ないならこちからが行くだけと真っすぐにソードスに向かっていった
その時アサギはソードスの構えを見た事があるような気がした、それはどこでだったか・・・考えてもわからないので速度を維持しながらソードスの攻撃範囲の中へ入る
するとそこにソードスの右手に持つ剣が振り下ろされる、アサギは前に構えていた盾を少し上にあげその剣を防いだ、その時左手に持つ剣がアサギの顔目掛けて向かってくる、アサギは突撃をする為に前かがみた身体を無理やり起こすと同時に右足で目の前にいるソードスの腹に蹴りを入れ吹っ飛ばしてその剣を回避した
だが思ったよりは吹き飛んでいなかったようで精々が30センチほど後ろに押し込んだだけである
またソードスが同じ構えを取ったのを見た時思い出した、あの構えはダンチョーがやったオートガードに似ているのだ、つまり今ソードスがやっているのはナイトのスキルオートカウンターだろう、攻撃範囲内いはいると自動で攻撃を繰り出す技だ
やはりソードスは守り主体のナイトなのだろう、右手に持つ剣でオートカウンターを発動し攻撃を止め左手の剣で止まった相手を攻撃する、そんな所だろう
オートカウンターに頼るだけではない確かな実力がソードスにあるのは相対した時にわかっていたがオートカウンター自体なら何も問題がないのでアサギは前に出る、先ほどと違うのは今度は剣を前に出しているという事だ
その剣に反応してソードスは右手に持つ剣を振るう、アサギはそれを見て身体を左側へひねりその剣を躱す、ソードスは左手に持つ剣で攻撃をしようとするがアサギの盾に阻まれてしまっているので攻撃はできない
オートカウンターは剣を振り切るまで止まらない、しかも連続で発動する事はできない
アサギはもう1度身体をひねるように動かしながらソードスの身体を突こうとした、だがその攻撃はソードスの左手に持つ剣で阻まれた、右手は動かないとしても左手は動くのだ
そして動くようになった右手でアサギの首を狙い剣を薙ぐ、だがアサギはそこまで力を込めて突いていた訳ではないので後ろにパッと飛びそれを躱す
オートカウンターでは対処できないと思ったソードスは初めて自分から前にでた、そして左手に持つ剣をいつでも防御に回せるようにと胸の前に持ってきながら右手に持つ剣で斬りかかる
その剣がアサギの持つ盾に防がれた瞬間、ソードスはアサギが振ってきた剣の威力を左手に持つ剣では殺せずに身体を上から下まで斬られ負けた
「よし、そこまで」
稽古場の中は静寂に包まれていた
「ふー・・・危なかった、お疲れ様でした」
アサギが尻もちをついているソードスに手を差し伸べながら言う、ソードスはしばし茫然としたがセンシンが咳ばらいをしたのでようやく我に返りアサギの手を掴み立ち上がる
「ありがとうございました!!!」
ソードスが頭を深く下げる
「こちらこそありがとうございました!」
「よし、じゃあお前ら俺はアサギと少し話があるからまた練習に戻れ」
稽古場にいたNPCは「ハイ!」と全員揃って言った、アサギはやはり体育会系なんだな、と笑う
「よし、じゃあアサギ、すまないがまた私の部屋まで来てくれ、お前ら!挨拶!」
「ありがとうございました!!!!」
「こちらこそありがとうございました、またよろしくお願いします」
「よろしくお願いします!!!!」
アサギは振り返りセンシンの後を追いかけ部屋へ向かう
その背中には尊敬のするような視線が集まっていた




