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聖騎士と教皇の奇跡 その2

皆様の声を聞かせてくださると幸いです

感想、評価お待ちしております

「ふふ、アサギったら結構様になってるじゃない」


「だな、あれで崩れるとしたらこっち側の問題になるな、気合いれてやらねーと」


 アサギは祝福を自身にかけた巨神の攻撃を見事に捌ききっている、淀みなく動き回り攻撃を受けるのも最低限だけだ

 そして相変わらず執拗に足を踏む、それはもうゴリゴリと


「あっちゃん相変わらず足踏むの上手いよね、大丈夫かな、リアルでも足踏んじゃうんじゃないの?」


「それは・・・大丈夫でしょ、多分、でもほんと上手、足踏むのが上手ってのも変な話だけどね」


「教皇が攻撃するたびに右足が前にくるからそれに合わせてアサギさんも足を出している感じだが・・・あれ見てる分には楽そうだけどなかなかできないんじゃないか?」


 アサギは本来ならば攻撃や挑発のみでしか増えないはずのヘイト値を防御に回っている時にも稼ぐ、だからターゲットが流れにくいのだ

 そして攻撃を防いだ時、相手の位置やアサギ自身の体勢にもよるが強烈な蹴りを入れる

 攻撃を受けた時吹き飛ばないようVIT値に応じて体重が身体に乗るのでそれを利用した攻撃方法である


 アサギは蹴れる時、蹴れないが足を踏める時、次の攻撃に対して動き始めなければいけない時、それをしっかりと把握しているので常に動き続けている


「えー、でもねー、慣れると結構いけるよー」


 そして喋れるくらいに余裕がある


「アサギ喋ってないで集中しろ」


「あはは、やだなー、マーリン、いつもの事じゃん」


「よくメインタンクで喋れる余裕あるわよね、でもあれよ、そのままじゃチームチャンネルで誤爆する可能性があるから喋らない方がいいわよ」


「あー、それは・・・確かに!よし、喋るのやめる!連絡だけにするね!」


「ええ、それがいいわ」


 このゲームはフルダイブのゲームである、どこのチャンネルで会話をしようとも口は動いている、声はそのチャンネルの中でしか聞こえないが

 読唇術でも使えば全部理解できるのか?と最初話題になったがどうやらその声を聞こえるチャンネルに居る人は口が動いて見えるが声が聞こえない人には口は動いて見えないような設定になっているらしい

 開発当時その問題は会議ででたのだが「じゃあ口動かないようにすればいいじゃん!」との声を聞き最初は口の形を固定していたのだが喋ってみるとどうにも気持ち悪かった

 だから喋っている声が届く人は動いて見える、声が届かない人には動いて見えない、という事になったのだ


 だが口は動いては見えないがなんとなく喋ってるんだろうな、という雰囲気はわかる

 表情というか目線の動きと言うか・・・だからアサギからそれを感じた時、アサギの動きを見つめていた人間は驚愕をする

 だが喋っている雰囲気がなくなったので連絡事項くらいは会話をするものか、と自分を納得させた


 アーサーは自分がそこまでアサギと差があるとは思えなかった、いや、思いたくなかったのだろう

 人間はいい方向に物事を考え納得したがる動物だ

 アサギは喋れないのではなく他のチャンネルでの誤爆を嫌がったので喋らないようにしたとは考えられなかった


 自分はパラディンロード相手にやられそうだった、分身とは言えその相手を前に余裕そうに笑っていたアサギに目を奪われたとしても実際にやられてしまった

 しかも今アサギは巨神の攻撃を全て防ぎ切っている、なんか足元がバタついてはいるがそこは癖なのかやり方なのかはよくわからないが安定している

 周りのプレイヤーも自分がメインタンクをやっていた先ほどよりも動きがいい

 アーサーはなにやら打ちひしがられる思いだった


 アサギはそんな事を考えているプレイヤーがいる事なんぞ全く知らずにいた

 タンクは安定している、次の特殊攻撃がくる50パーセントまで教皇のHPを削る事に成功した


『半分来ました!皆さん、動きに注意を!』


 そして巨神がハルバードを片手で持ち両手を胸の前でクロスさせながらぶつぶつと詠唱にはいる


『天罰、拒絶』


 また巨神が奇跡を口にする


『範囲攻撃来ます!範囲重ならないように動いてください!』


 そして第三の奇跡、拒絶とはどのような効果なのか、アサギはしっかりとその効果を見極めようとしていたのだがいきなり物凄い力で後ろに吹き飛びそうになった

 いや、アサギだけではない、その部屋にいるプレイヤーの大半が仰向けに倒れこんでいる


 拒絶、それは一定の範囲の中にいる者へ対して後方へ重力をかける教皇のみが使える奇跡


 簡単に言ってしまえば拒絶の範囲の中にいると前から一切感じ取れない強烈な風が吹いているようなものだ

 気を抜いて普段通り立とうとしたら後ろに転げてしまう、だからプレイヤーは全員前へ前へと意識を向けないといけない


「なんだこれぇぇぇ!!!めっちゃやりにくいぞ!!!!」


 マーリンが叫んでいる、声は聞こえないが周りのプレイヤーも大分やりにくそうだ

 そんな中アサギはというと少し動きは鈍くなっているがなんとかやれているみたいである


「エドラが結構羽根バタバタさせてて風吹かせてたからね、なんか似たような感じかな?時間制かな、これ?」


「多分そうじゃないかしらね、教皇がさっきから同じポーズだもの、天罰の雷を避けにくくしてるんじゃないかしら?」


「なるほどな!さっきからバンバン雷で死んでる奴がいるもんな!てか最初と比べて雷の数多くないか!?後ろにひっぱられて逃げにくいってのに!!くそ!!」


 そして巨神が胸の前でクロスしていた手を戻しまたハルバードで攻撃し始めた

 その途端後ろに引かれる感じが収まりアサギは前に転びそうになった


「アサギもいつかあれ使えるようになるのか?てか今のスキルはNPCに対して意味あるのか?」


「んー・・・使ってみなきゃわかんないけどパラディンのスキルと組み合わせると結構いいかも、教皇だって単独で使った訳じゃないから組み合わせて使うスキルなんじゃないかな?」


「なるほど、組み合わせか・・・げ!天罰終わってねぇぞ!!」


『っ!皆さん、雷降ってます!倒すまで終わらないかもなので周りに当たらないように動いてください!』


 一度に複数落ちてくるはないのとダメージ量が少し減ってはいる天罰が部屋の中に降り注ぐ

 タンク以外に攻撃が向かうとタンクへの回復量が減ってしまう

 拒絶と天罰でなかなかの数が死に戻りしているので火力も回復量も下がっている


『急げ!急いで戻ってこい!』


 アーサーがチームチャンネルで叫ぶ、アサギは出来なかった発言なのでありがたかった

 アサギは部屋の中のどこにアーサーがいるのだろうかと周囲を見回したがまだまだかなりの数が部屋の中にいるし、パーティメンバー以外は薄くなっているので発見する事はできなかった


 逆にアーサーからは自身がターゲットしているNPCにターゲットされているアサギは濃く見える

 だからアサギが自分の発言の後キョロキョロと視線を動かしているのを見ていた


 先ほど自分が視線を動かしたら攻撃を食らい倒されたのを思い出し集中しろと叫びそうになる

 だがアサギの身体は止まっていない、視線は周りを見ているのに上から来る攻撃も横払いもHPが半分すぎてから増えた横払いのすぐ後に柄で反対側から殴ってくるという攻撃パターンも全て防ぎ切っている


 部屋の中に死んで戻ってきたプレイヤーが増えていく


『雷まだ降ってるんで気を付けてくださいねー』


 アサギはおっかなびっくりとチームチャンネルで発言する

 セッキーとマーリンはそれを見てニヤニヤしているようだった


 部屋の中にプレイヤーが増えてきたので巨神のHPの減り方もだんだんと元に戻ってきた

 相変わらず天罰が落ちてはきているが1発1発の間隔が短いとしても部屋のどこかのプレイヤーの頭の上に1発だけしか降ってきてないので部屋の中に人がいればいるだけ楽になってくる


 そして最後の25パーセントである

 今青チームはどれくらい削っているのだろうか、アサギは考えた、しかし考えた所でわからない

 まだアナウンスはない、だから自分に出来る事は巨神の攻撃を自分にきっちりと向けさせてそれを防ぎ切ることである


 アサギは気合をいれた


『皆さん!最後です!青チームに勝ちましょう!』


 アサギの発言は部屋の空気を熱くさせる、チームチャンネルで「うおー!」とか叫んでる奴もでて若干五月蠅い

 しかしいい感じに鼓舞されたようだ、攻撃は更に激しいものとなった


 そして巨神の周りにバリアが張られたようで全ての攻撃が弾かれだした


『25パー切りました!!』


 いつの間にかハルバードを手放した巨神は胸の前で手を合わせ神に祈りを捧げている


『聖剣』


 静まり返った部屋の中で巨神の声のみが響き渡る

 すると部屋の真ん中らへんの空中に巨大な剣がバリアと共に現れる

 その剣は全てが光で出来ているいるように輝いている

 教会の中にいたプレイヤーはその剣を囲うように移動し始める


 大体皆わかったのだろう、バリアがある、という事はこれを攻撃して壊さなければいけないのだろう、と


 そしてバリアがパリンと音を立て割れ、中にあった巨大な剣は地面に突き刺さる


『攻撃を!!』


 アサギが叫ぶと同時にプレイヤーは剣に襲い掛かる

 当然アサギも殴りかかっている、もし時間内に倒せなかったらやり直しかもしれないのだ、だからタンクも当然ならが火力も、そしてヒーラーも剣を壊そうと攻撃をする


 徐々に巨大な剣に、その光にヒビがはいる


 そして光が砕け散った

 アサギは急いで元居た巨神の前に戻る

 まだバリアは割れていない


『聖剣』


 巨神が再度呟くと周りを覆っていたバリアが割れる

 すると今度は地面に赤い魔法陣が現れる、そしてその上に光が圧縮したかと思うと先ほどの剣の形を作り地面に落ちてきた

 剣が作られ落ちてくるまでの間は3秒ほどであろうか、今度はこれを避けなければいけないらしい

 そして巨神の右手にもその光は握られていた、その光でアサギを切り裂こうと攻撃をし始める


『皆さん!!多分その剣は教皇を倒すまで消えません!!攻撃をお願いします!!』


 75パーセントの時の天罰は最初に複数雷が落ちただけで終わった

 50パーセントの時の天罰は最初に更に多く降り、そしてその後威力が落ちた雷が少しずつ降っていた


 どちらも最初はアサギに対して攻撃をしてこなかった、だからこの聖剣も同じように終わりがあるなら攻撃をしてこないはずである


 だが巨神はアサギを攻撃している、手元にある光を両手で持ちながら

 つまりこの聖剣は教皇を倒し切るまで終わりがないのであろう


 聖剣、それは光を空中で剣の形に圧縮し振り下ろす教皇のみが使える奇跡


 アサギが使えば天罰よりも高い威力の攻撃が前方へ空中から真っすぐ落ちてくる事になる

 そして武器に他の属性付与よりも火力が高い聖剣属性が付与される事になる、この聖剣属性が付与されると回復魔法の回復量もはるかに増す事になる


 ここにきてアサギは攻撃をする余裕が余りなくなってきた

 盾で防ぎ反撃スキルを繰り出すので精一杯である


 だがそれは保ち続けているという事である、ターゲットを維持し続けているという事である

 つまり時間がくれば・・・


『赤チームが教皇を撃破しました』


 アナウンスが流れて少し経った後「テンプルウォーズ」に参加していたプレイヤーの前にリザルト画面が表示される


 被ダメランキングの上から2番目にアサギの名前が表示されていた


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