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聖騎士と教皇の奇跡

皆様の声を聞かせてくださると幸いです

感想、評価お待ちしております

 パラディンロードが両手剣に持ち替えてから少し経った

 アーサーはしっかりと防御できているが1発1発の圧力に相当疲労しているだろう、表情に余裕がない

 範囲攻撃の頻度もHPを半分削る前よりも高くなっている、流石に光の腕でプレイヤーを集めてから発動するという事はなかったが

 だがそれでも攻略は安定している、1度もターゲットが流れていない事からアーサーはなかなかの腕と強さを持っている事がわかる


 攻略は続いていく、やがてパラディンロードのHPは最後の25パーセントを残すのみとなった


『皆!パラディンロードの最後の特殊行動だ!気を付けてくれ!』


 パラディンロードは胸の前に剣を立て何かを詠唱し始める

 アサギは詠唱付きのスキルなど持っていないのでクラスとしてのパラディンロードのスキル以外を使ってくるようだ

 詠唱が終わったらしくパラディンロードが剣を構える、すると両手剣が赤く燃え始めた


『火力が上がったみたいだ!範囲攻撃に気を付けろ!』


 アーサーが叫ぶ、それと同時にパラディンロードが動き始めた、2体同時に


『くっ!誰か!もう1人のタゲを取ってくれ!!2人重なっている!!!』


 パラディンロードの詠唱はどうやら分身を作り出す為のものだったらしい

 剣から出る炎と足元から湧き出すようなオーラがそれを見難くしているが、よく見ると薄い色をしたパラディンロードが重なっているのが見える

 アサギはその声にいち早く反応し分身のパラディンロードのヘイトを稼ぐ為に横薙ぎに盾を振るい弾き飛ばした

 だがそれだけではターゲットは変わらないようで分身は尚もアーサーに向かおうとしている

 アサギは攻撃を繰り返す、殴り、斬り付け、そして蹴る、やっとの思いで分身のヘイトを奪う事に成功したアサギはその場から駆け出した


 分身の方も範囲攻撃を使う事が出来るとしたら?もしそれが同時だったら?

 答えは簡単である、きっと壊滅するだろう、すなわち最初からやり直しである


 範囲攻撃の範囲が重ならないようにする為にアサギは部屋の中を動く


『分身の方は倒さなくていい!本体を倒せば消えるはずだ!!火力を本体に集中させるんだ!』


 アサギは本体が倒されるまで分身の攻撃を耐え続ける事になった

 だがそれでいい、アサギもそう考える、これは2チームのどちらが先に教皇を倒せるかという勝負なのだ

 分身を倒したらポイントが貰えるのか?それはわからないが教皇を倒すまでの時間が伸びてしまうのは確実だ

 それなら耐えているだけでいい、アサギは分身の攻撃をしっかりと盾で防ぐ事に専念し始めた


 心配していた範囲攻撃を本体のパラディンロードが発動するようで剣を逆手に持ち替えた、するとアサギの目の前にいる分身のパラディンロードが攻撃の途中でその行動を止め剣を逆手に持ち替える

 そして2人同時に剣を地面に突き刺した

 どうやらこの範囲攻撃はリンクしているようだ、本体が範囲攻撃を使おうとすると分身は全ての行動を止め範囲攻撃を使う事になっているらしい

 距離を放しておいて正解だった、最初からやり直しにならずにすんだのだ


 ダメージを食らってもセッキーやオネ、それに周りからも回復魔法が飛んでくるのでアサギのHPはほぼ100パーセントを保ったままだ

 アサギは分身による両手剣の攻撃を見事に防ぎ切っているのでダメージ軽減がしっかりとできているのも理由の1つだろう


 周りにいたプレイヤーの中にはアサギのHPがなかなか減らないので分身の攻撃力は本体のそれよりも低いだと考えている者もいたが決してそうではない

 アーサーも下手なプレイヤーではないが盾で防ぎ切れてないのでダメージを喰らっているだけなのだ

 しかしアーサーはタンクとして有名だから誰もそこに考えが至らないのである、アサギのパーティメンバー達以外は


 アサギの表情には余裕がある、流石に相手のSTRが高いので攻撃その物を止める事はできないがヘイトを稼ぐ為に執拗に足を踏んでいる


「なんでそれでヘイトが稼げるのかしらね・・・」


「あはは、なんでだろうね、でも足踏まれるのって嫌だよねー」


「アサギちゃんよくボス系のモブに対して足踏んだりしてたけどそれってヘイト稼ぐ為だったのね」


「そうだよ、その他にも攻撃を出す前にその攻撃を止めたり、軽くでもいいから攻撃を当てたり、動こうとするのを邪魔したりするとヘイト値上がるみたい」


「つまり足を踏むのは攻撃を当てるのと移動妨害の2つを兼ね備えてるって事なのかな?」


「あー、そっか!だからヘイト上がるのはやいんだ!なるほど!」


「ふふ、その内タンクの中で足を踏むのが流行りそうね」


「と言うかそこまでヘイトが上がるなら足を踏むのが必須になりそうね」


「範囲くるよ!」


「任せて」


「大丈夫よ」


 アサギとセッキー、それにオネは会話も挟めるくらいに余裕を見せている

 だがアーサーは範囲攻撃が来るだけで一気に形勢がぐらつく、倒れる事はないのだが範囲攻撃の次の通常攻撃をしっかりと防がなければ倒れる可能性もでてくるのだ


 あともう少し、アーサーは気合を入れなおしパラディンロードの攻撃に集中する

 だがその時、パラディンロードの奥に笑っている女の子が視界に入ってきた

 その女の子はこの部屋の中で自分以外に唯一攻撃を受けている


 だが笑顔だ、自分が必死になりながら受けている攻撃をその女の子は笑いながら、何か楽しそうにしながら防いでいる


 意識が一瞬そちらに持っていかれた時アーサーは横からものすごい衝撃を受けた

 そして世界の色が反転する


「おいおいおいおいおい!!アーサーの奴なにぼんやりしてたんだ!やられたぞ!」


「え?本当!?やばいじゃないの!!」


『青チームがパラディンロードを撃破しました』


「残りあと少しだけだ!ごり押しでいける!!!」


 ターゲットを失ったパラディンロードは次にヘイト値が高いプレイヤー目掛けて襲い掛かる、それを殺したらその次、更にその次、部屋の中にいた複数のプレイヤーを倒した後、パラディンロードは倒れた


『赤チームがパラディンロードを撃破しました』


 同時に分身のパラディンロードも消える


「はー・・・あっぶねぇ・・・最後どうしたんだ、アーサーの奴」


「わからんが棒立ちだったな、多分疲れたんだろ」


「それより次のメインタンクどうするのかしら?」


「あっちゃんがやるしかないんじゃない?」


「えー、誰か他の人やりたがるんじゃない?」


『皆すまない、あと少しだと思って力が抜けてしまったようだ、次の教皇戦だが俺は色々スキルを使ってしまってCTがまだ回復しきっていない、だから先ほど分身の方のタンクをやっていた人にメインタンクをやってもらいたのだがどうだろうか?』


「あっちゃー・・・」


「アサギ、ご指名よ」


「まさかチームチャンネルでご指名を受けるとはなぁ、はっはっは」


「流石アサギさんだ!」


「アサギちゃんどうするの?」


「あっちゃん返事返事」


「あー・・・うん・・・よし・・・」


『わかりました、じゃあ私が教皇戦、メインタンクやります』


『ありがとう、名前を教えて欲しい、その方が支援しやすいだろうからね』


『えっと、アサギ、です、よろしくお願いします、じゃあ早速教皇の部屋行きましょう』


「よっしゃ!アサギがタンクなら全力で行けるな」


「ええ、範囲攻撃だけに注意しておくだけでいいわね」


「なんだろう、あっちゃんがタンクやるってだけなのにこの無敵感!!」


「あはは、本当ね、アサギちゃんが前にいるだけですごく安心するわ」


「フ、俺もついに封印を解くときが来たようだな」


 アサギのパーティメンバー以外のプレイヤーは若干心配そうな表情をしている者もいる

 しかし教会の前でダンチョーのメインタンクをしていたプレイヤーだと周りが噂をし始めるとその表情もいくらか明るくなってきた


 そして赤チームのプレイヤー達は教皇がいる部屋へと入る

 部屋の奥には柔和な笑顔をみせる普通の背丈の男が1人立っていた


『じゃあ教皇戦!行きます!よろしくお願いします!!!』


 アサギが叫びながら突撃していく

 全体チャンネルでうおー、だのと叫びながら付いてくるプレイヤーもいる


 アサギの攻撃がもう少しで教皇に当たるくらいまで近づいた時、教皇の身体が光りに包まれた

 光の中で教皇が動いているのを感じたがアサギは移動速度を緩めずにそのまま身体ごとぶつかっていった


 光が消え中から巨人が、いや、巨神が出てきた

 これが教皇の奇跡の1つ、巨神降臨の効果である


 アサギはすぐさま巨神の背中をほかのプレイヤーに向ける為に壁を背にする

 ファーストアタックでもヘイトを稼げるので巨神はアサギをターゲットに決めぐるりとアサギの方を向いた


 先ほどまでは何も持っていなかった教皇は巨神になってハルバードを持ち出した、巨神である前に教皇なのだがいいのだろうか

 そんな考えがアサギの頭によぎったがすぐに消えた

 巨神がアサギに向かって攻撃を始めたからだ

 その長身から繰り出される攻撃は相当な重さを持っていた、上から振り下ろす攻撃が2回、そして右からの薙ぎ払い、その後に突いてくる、それが巨神の攻撃パターンのようだ


 どれも相当な速さではあるがパターンさえ判れば対処できる

 上から振り下ろす攻撃は躱しながら攻撃を当てられる、薙ぎ払いは全力で防ぐ、そして突きは盾に当て身体をずらして剣で斬り付ける


 同じ行動を繰り返すAIに今更負けるアサギではない、アサギは巨神の行動全てに対応してみせた

 そうなると元気がでてくるのが火力陣である

 このタンクは強い、上手い、そんな感情が部屋中に広がっていく

 これならいける、勝てる、その思いが火力陣を前のめりにさせていく


 結局巨神のHPが25パーセント削れるまでその攻撃を繰り返すのみだった


『25パー削れました!何か来ます!』


 巨神が詠唱を始める、そして聞こえてきた


『天罰、祝福』


 天罰、それは雷による範囲攻撃を複数降らせる教皇のみが使える奇跡

 祝福、それは自身とパーティメンバーを強化する教皇のみが使える奇跡


『範囲攻撃きます!!』


 アサギはその声を聞き反射的に叫ぶ

 地面に魔法陣が描かれる、プレイヤーは全員その場から出ようとする

 しかし天罰の攻撃対象は地面ではない、プレイヤーだ

 対象となったプレイヤーを中心に魔法陣が現れるのだ


 それに気づいたプレイヤーはなるべく重ならないようにと部屋の中を走り、そして天罰を受ける

 プレイヤーのクラスとレベルと装備次第では即死であろう


 祝福により巨神の攻撃も速く、そして強くなる

 だがこちらに問題はない、アサギはそれくらいなら問題なく対応できる


 アサギの動きを一心に見続ける存在が居る事など気づかずにアサギは教皇の攻撃を防ぎ続けていく

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