その聖騎士の腕はさらに伸びる
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アサギにとっては待望のパラディンロード戦である
アサギは緊張しながら部屋の中へ飛び込んだ
「お・・・おお・・・土の教会のパラディンロード・・・」
「いや、でかいな、エルダープリーストもでかかったけどさらにでかいぞ」
「あれが巨神降臨のバフ効果って事かしら、アサギも使ったらあれだけ大きくなるの?ダンジョン内だとちょっと邪魔ね」
アサギ達はパラディンロードの巨体を見て一瞬足を止めてしまうが周りが次々と戦いに行ってるのを見て慌てて攻撃を開始する
相変わらずアーサーがメインタンクをやっている、今回部屋の中には他のNPCは居ないようだ
パラディンロードは剣と盾を持っている、盾で防ぎ剣で斬りかかってくるというわかりやすい攻撃方法だ
だがその攻撃はとても重たく見える、アーサーは必死な形相をしながら攻撃を受けていた
「あれ大丈夫か?攻撃を受け切れてないからダメージ軽減しきれてないぞ?」
「うーん・・・人型のモブとあまり戦ってきてないのかな?でもあれだけ大きくなるとまた別か、慣れてきたら大丈夫だと思うけど・・・」
「周りにヒーラーいっぱいいるし大丈夫でしょ、まだそこまで攻撃速度も速くないしね、特殊行動次第だとは思うけど」
パラディンロードは2メートルを超えるだろうその身体を器用に使い攻撃を繰り出している、手に持つ剣や盾大きくて威圧感がある、受け切れないのも仕方が無いだろう
だがしっかりとヘイトの管理はできているようでアーサー以外にターゲットが流れる事はなさそうだ
「NPCのオートガードって盾が勝手に動くわけじゃあないんだね」
「ん?どういう事だ?」
「私がオートガードを発動すると盾が勝手に攻撃を防いでくれるように動いちゃうんだよ、でも周り全部から攻撃されたらぐるぐるぐるぐる動いちゃう事になるでしょ?でもパラディンロードはそんな動きしてないじゃない?なんだろ、確率で攻撃が弾かれるエフェクトがでてダメージ軽減してる感じなのかな?」
「確かにぐるぐる動いてたらターゲット固定なんかできそうにもないわね、NPCとプレイヤーでスキルに違いが出る事もあるのね、でもNPC用のオートガードの方が使い勝手よくないかしら?」
「えー、そうかな?んー・・・囲まれた状況だと確かにその方が便利か・・・でもそれだと防ごう!って思えなくなって身体の動きが悪くなるんじゃないかなぁ?」
「それに反撃スキルはどうなるんだ?NPC用のオートガードでも10発分溜まるのか?」
「んー・・・多分盾に当ててないから無理じゃないかな?てか使えてるならもうアーサー吹っ飛んでるはずだし、あれCTそこまで長くないからね、敵の攻撃速度次第では10発受けてる間にまた打てるようになる事もあるし」
「あ、吹っ飛んだわ」
どうやらアーサーの攻撃を10回パラディンロードが防いだらしいので反撃スキルを喰らったようだ
すぐに起き上がりまたパラディンロードに向かうアーサーがそこにはいた
「起き上がったね」
「ああ、すぐ向かっていったな」
「そうじゃないとメインタンクを維持できないものね」
「さて、そろそろ25パー削るぞ」
『皆!そろそろ25パーだ!何があるかわからない!用心してくれ!』
「チームチャンネルでちゃんと発言するのは凄いね」
「アサギはダンチョーとやってた時楽しくなっちゃってまったく何も言わなかったしな」
「うー・・・次は気を付けるよ」
25パーセントHPを減らしたパラディンロードは剣を頭上に掲げ始める、するとその剣が光り出した
「おいおい、もう光の剣か?」
「いや、溜め方が違うからいつものなんちゃってエクスカリバーじゃあないわ」
「あれは光属性付与かな?単純に火力アップだと思う」
「じゃあさっきより回復厚めにしてあげないとね」
パラディンロードは輝き始めた剣でアーサーに襲い掛かる、攻撃力の他に攻撃速度も増しているようだ
「あー、被弾増えてきたね」
「大分きつそうだな、アサギ、挑発スキルはいれてるのか?」
「うん、アーサーよりは入れてないけどね、途中でタゲぶれたらやりにくいし」
「一応準備しておいたほうがよさそうよ」
「うーん・・・そうだね」
その時パラディンロードが剣を逆手に持ち地面に突き刺した、突き刺した場所から光のヒビのようなものが広がり直後にそれが爆ぜた
「範囲攻撃か!発動はやいな!!」
「ああ、しまった!パーティ回復詠唱始めちゃった!アーサーへの回復が足りないわ!間に合わない!!」
アサギも範囲攻撃には巻き込まれてはいたがすぐにセッキーから回復が飛んできているし、連続で攻撃が来る訳ではないのでそこまで危険はなかった
だがアーサーは違う、アーサーにはパラディンロードの攻撃がすぐに来るのだ
範囲攻撃を喰らった事、それにより回復がばらけてしまった事、そしてパラディンロードの攻撃を防ぎ切れていない事、それらが重なり合いアーサーのHPが無くなりかける
回復が間に合わない、アサギは前に出るか迷い一瞬躊躇したがパラディンロードの方へ駆け出そうとする
だがアーサーはまだ倒れなかった、本来ならここぞ!という時用ではあるのだが死んでしまっては元も子もない、だからだろう、アーサーは30秒間ダメージやバフを受け付けないスキルを発動させていた
「あれHPの回復もできなくなるんだけどね、でも周りがちゃんとアーサーに回復を集中させれば死なないかな?」
「あの範囲攻撃がまた来てもアーサー優先に回復しないといけないわね、焦っちゃったから詠唱あるパーティ回復発動しちゃったから更に焦ったわ、気を付けないと」
「そうね、やっぱりパーティ内だとHPバー表示が常に視界の中にあるから減ったらそっち優先しちゃうよね、私もアーサー君の回復よりも皆の方優先しちゃった」
ヒーラーはヒーラーでなかなかに大変なのだ
「そろそろ30秒だね、回復よろしくね」
アーサーのスキルが解け回復魔法が通るようになりHPが回復していく
「もしあの時に反撃スキルが来てたら多分死んでたね、無敵中に発動してたから猶予はできたけど」
「結構ギリギリだったってことね」
「次はもう無敵スキル使えないんだろ?大丈夫かね」
だがその心配を他所にアーサーは徐々にパラディンロードの攻撃に対応していっているようだ
最初の頃と比べるとしっかりと攻撃を盾で防げているのでダメージの軽減もできている
これならば先ほどのように範囲攻撃を撃たれて回復がばらけようともすぐには倒れないだろう
「大丈夫みたいだね」
「ああ、そうみたいだな、動きが最初と違って見えるな」
「やっぱりトッププレイヤーってだけはあるわね」
それからパラディンロードは再度範囲攻撃を繰り出してきたがアーサーも周りもしっかりと対応できていたのでスキルを使わずとも乗り切る事ができた
タンクが安定するという事は火力も安定するという事である
パラディンロードのHPはよどみなく減っていく、そして半分になりそうな時
『半分まで来たぞ!警戒を頼む!!』
パラディンロードのHPが半分になった時、パラディンロードは剣と盾を持ちながら両手を上にあげる、すると剣と盾が消え、1本の巨大な剣が天から舞い降りてきた、その剣を両手で掴み胸の前まで降ろすとその剣が強烈な光を放つ
「ここで攻撃パターン変化か、やっかいだな!」
その時パラディンロードがいきなり後ろを向いた
「やばい、タゲ流れてんのか!?」
しかしパラディンロードはその場から動こうとしている訳ではないようだ、ターゲットが変わっているのならヘイトを1番持っているプレイヤーの方へ即座に向かっていくだろう、だが振り向いただけで動いてはいない
するとパラディンロードが剣を中段に構える、その動きを見てアサギは一気に背筋が凍った
「光の腕だ!」
アサギが叫んだのが早いかパラディンロードがスキルを発動させたのが早いか、剣の先からは光の腕が1本伸びアサギの後方に居たプレイヤーを1人ワシ掴みにした
だが光の腕はそれだけで終わらなかった、そのワシ掴みにされたプレイヤーの元から数十本の光の腕がそこら中のプレイヤーを掴もうと伸びだしたのだ
ぐん!とパラディンロードが剣を自分の元へ寄せる動きをすると光の腕に捕まったプレイヤーの全てがパラディンロードの目の前に集められる、当然のように移動不可のデバフが込められているので誰一人動きだせない
そしてパラディンロードはその巨大な両手剣を逆手に持ち替え地面に突き刺す
先ほどよりもヒビの範囲が広い、そしてそのヒビの中には先ほど集められたプレイヤーの全てが入っている
ヒビが広がり切ったのだろう、次の瞬間ヒビが爆ぜる、集められたプレイヤーは全員が倒れている、どうやら運悪くVIT型にステータスを伸ばしているもの以外が集められたようだ
もちろん被害はその集められたプレイヤー以外にも及んでいる、先ほどより範囲が広かったせいで近接火力だけでなく遠距離火力やヒーラーも何人か倒れていた
パラディンロードはその一連の行動が終わるとまたアーサーの方へ向きなおしアーサーを攻撃し始める
幸いな事にヘイトを維持するアーサーのHPを回復しきるだけのヒーラーはまだ残っていたらしい、アーサーは死んでおらずしっかりとターゲットを維持していた
『死んだらすぐに復活して戻ってきてくれ!!頼むぞ!!』
「あの光の腕強烈だったね、ランダムターゲットかな?」
「恐ろしい攻撃だったわね・・・」
パラディンロードはその巨大な両手剣を軽々と振り回しアーサーを斬り付ける
攻撃は速さ的には先ほどよりも減っているだろう、しかし火力は相当に上がっている、アーサーはしっかりと盾で防いではいるがもし防げなかったら1発で相当のHPを減らされるだろう
『皆!相手の火力は上がったけど防御力は下がった!!ガンガン攻撃してくれ!!』
「盾がないって事は反撃スキルとオートガードも無くなったって事だもんね、さっきよりHP削れるの速くなるはずだよ!!」
「よっしゃ!ガンガン攻撃してやるぜ!」
パラディンロードのHPは残り半分を切った、アサギは楽しそうにパラディンロードの背中を攻撃していく




