聖騎士はモフモフしているものにはそこまで魅かれない
皆様の声を聞かせてくださると幸いです
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目の前に居るエルダープリーストは先端が鎌のように鋭くなっている長い杖を振り回している
その杖が振り回されるたびに杖から光の玉が放たれタンクをしているアーサーに襲い掛かる
アサギからすればその速度は十分に防御できる速度であるがヒーラーのクラスのはずなのになかなかに重たそうな攻撃である
しかしアーサーもちゃんとしたナイトであるし周りからの支援も十分飛んできているので崩れる事はないだろう、今の所は
どうやら最初から部屋にいたらしい他のNPCを倒し終えた周りのプレイヤー達の火力がエルダープリーストに集中する
500人というプレイヤーを相手にする事を目的として設定されているのでかなりHPは多めのようだ
だがしっかりとエルダープリーストのHPは削られていく
矢が降り、魔法が炸裂し、槍が突き刺さり、剣が舞う、その全てをその身に受けながらエルダープリーストは攻撃の手を緩める事はない
杖を振り回し光の玉を放つ、そして時折左手を頭上に掲げ雷を降らせる、これはターゲットがランダムみたいで部屋の中の運の悪いプレイヤーが喰らっていた
HPを25パーセントほど減らした時、やはりと言うべきかエルダープリーストは先ほど倒したNPCを復活させてきた、しかも今度は先ほどとは違い支援魔法込みである
HPを増やし火力や防御力が増幅されたNPCが複数蘇り部屋の中にいるプレイヤーを襲う
『雑魚を優先だ!後衛がやられると戦線を維持できないぞ!』
強くなったNPCを倒すのにかかる時間はやはり先ほどよりは増えている、その分エルダープリーストのHPの減りが若干緩やかになるが放って置けるものではない
回復が1番ヘイト値をあげるのだ、放置したらヒーラーからやられていく事になる
復活をさせてからもエルダープリーストの攻撃方法はさほど変化はなさそうだ
光の玉と時折降る雷、しかしどうやら自分にも支援魔法をかけていたようで先ほどよりも火力は上がっている
アーサーはそれでもしっかりと光の玉を防ぎながら攻撃を加えている、アサギはそれを見て安心した
これなら半分までは問題ないだろう、そこからはどのような変化があるのかわからないが
しかし安心したのもつかの間の事、復活したNPCを倒し切る事がトリガーだったのかエルダープリーストが杖を両手で持ち何かを祈り始める
『詠唱が来たぞ!地面をよく見ろ!魔法陣の範囲があったらそこから逃げるんだ!!』
地面を見る、どうやらこの詠唱はエルダープリーストを中心とした範囲魔法のようだ
エルダープリーストの頭上には詠唱時間を示すバーがありどんどん短くなっていく
『早く出るんだ!でかいのが来るぞ!』
詠唱中はエルダープリーストは動かない、アーサーもしっかりと魔法の範囲の外にでている
詠唱が終わる、するとそこに一陣の風が吹きすさぶ、どうやら竜巻を起こすような魔法なのだろう、中に居たら相当なダメージを喰らっていたはずだ
風が吹き止んでからアーサーはまたエルダープリーストの前に急ぐ、それを見て近接で攻撃するプレイヤーもエルダープリーストの近くに寄った
そこから攻撃方法に変化が現れた、エルダープリーストの先ほどの竜巻は自分の武器をも強化する効果も持っていたみたいだ
杖の先になにやら小さな竜巻が渦巻いている、今まで杖を振ると光の玉が出ていたが風の刃と交互にでるようになったらしい
『俺の近くに来るなよ!これは範囲攻撃だぞ!!』
風の刃は前方90度くらいを攻撃する範囲攻撃のようだ、しかも結構後方へも届いている
後ろからアーサーを支援していたヒーラーが1人攻撃を喰らい慌ててその場から逃げ出していた
なにやら若干攻撃速度も速くなっている気がする、アーサーの表情が若干険しくなるがそれでもちゃんと攻撃を防ぎ切っていた
タンクが安定している間は攻撃のは休むことは無い、エルダープリーストのHPはついに残り半分となった
エルダープリーストが再度杖を両手で持ち詠唱を始める、しかも今度はバリアを張っている、こちらの攻撃が一切届かなくなった
『詠唱だ!地面に魔法陣はでてないか!?確認しろ!!』
出ていない、これはどうやら攻撃魔法ではないらしい
プレイヤーは攻撃をしても意味がないのでエルダープリーストの頭上に浮かぶ詠唱のバーを見る
それが徐々に短くなり、そして無くなった時今までエルダープリーストが居た場所が光を放った
『召喚だ!!ユニコーンだ!先にやるんだ!!』
だが召喚だけではない、また復活魔法だ、部屋の中は一気にあちらこちらで戦闘が開始される
「アサギ!ユニコーンのヘイト取って!」
「う、うん!わかった!」
エルダープリーストはバリアを解いたらしくアーサーに再び攻撃をしかけているようだ、アサギはそれをちらっと確認した後ユニコーンへ向けて走り出す
横から思いっきり突撃し今まさに他のプレイヤーを攻撃しようとしたユニコーンを弾き飛ばした
ユニコーンはすぐに体勢を持ち直しアサギを見る、そしてその角でアサギを突き殺そうとしてきた
アサギはそれを盾で受けながらユニコーンを見る、ユニコーンが前足を両方高く上げアサギを踏みつぶそうとしてきているのでアサギはそれを避けた
ドスン!とかなり大きな音を立てながらユニコーンは足を地面に叩きつける、今のは流石に盾で受けようとしても受け切れなかったかもしれない、アサギは今の攻撃は次からもしっかり避けようと考えた
地面に足を下したユニコーンは再度角でアサギを攻撃してくる、アサギは今度はそれを避けユニコーンの横っ面に盾をぶつけ剣で斬る、だがいつもよりその剣に力が入ってないようにも見える
「アサギ!ユニコーン好きなのは知ってるけどちゃんと攻撃しなさい!!」
「うー、セッキー・・・だって可愛いんだもんー」
そう、アサギはユニコーンが好きなのである、というより馬が好きなのだ
聖騎士には馬が付き物なのだ、当然と言えば当然である
最初の突撃はタンク以外が襲われていたから助けないとと思い思いっきり行けたのだがそこからの攻撃は力が入りきらないでいた
「せっちゃんってばあっちゃんがユニコーン好きなの知ってるのに行かせたの!?鬼だね!!」
「いつか馬型のモブが出たらしっかり攻撃させようと思ってたのよ、今がたまたまその機会ってだけよ」
「うー、目が可愛いよー、筋肉が綺麗だよー、可愛いよー」
アサギはそう言いながらやる事はしっかりやれている、攻撃を防ぎながらいつもより弱々しいがちゃんと攻撃も加えている
「まあ、好きな動物だからって攻撃しないのはダメだからなぁ・・・荒療治ではあるけど」
「うーん・・・フルダイブの弊害はこんな所にもあったのね」
「なんか攻撃しているこちらまでちょっと申し訳なってくるような・・・」
「ああ、ごめんね、ダガー君、大丈夫、大丈夫だよ、ガンガン攻撃しちゃっていいよ、倒さないとまずいもんね」
「あ、ああ・・・」
そんな事を言いながらアサギは若干涙目だ、もしこれでユニコーンを倒した時に断末魔でもあげられたらどうなってしまうのだろうか
だがアサギの好みを知ったのはパーティメンバーだけだ、周りのプレイヤーはそんな事当然知らないのでどんどんとユニコーンを攻撃していく
教会の前でダンチョーを互角以上に渡り合ったプレイヤーがタンクをやっているのである、ヘイトが流れるとは誰も思っていない、皆全力でユニコーンに攻撃をしているのだ
涙目のなっているアサギを見てセッキーは若干後悔した、流石にやりすぎたかと反省した
しかしそれでもアサギがしっかりとタンクとしての役目を果たしていたのでユニコーンは倒れた、アサギはその途端肩を落とした
「うぅ・・・可愛かったな・・・」
「あ、アサギ・・・ええと・・・明日学校の帰りケーキでも食べに行きましょうか、ご馳走するわよ」
「え!ほんと!?行く行く!わーい、セッキーとお出かけも久しぶりだね!」
「あはは、よかったね、あっちゃん」
「くふふ、楽しみだなぁ、よし!エルダープリースト叩きに行こう!」
「ふぅ・・・やれやれ・・・」
「よかったな、セッキー、でも別にほんとに嫌だった訳じゃあないだろ、アサギも」
「んー・・・ちょっといきなりすぎたかな、って思っただけよ、それに私もアサギとケーキ食べに行きたかっただけだからいいのよ、マーリンも来る?奢らないけど」
「俺は甘いのあんま好きじゃないから奢りじゃないならいいや」
「そ、じゃあさっさとエルダープリースト倒しに行きなさい」
「へいへい、っとー」
周りのNPCもまた全て倒されているらしく部屋の中にはエルダープリーストとプレイヤーしか残っていなかった
変更点はなにかあるだろうかとアサギがエルダープリーストの攻撃を確認する
光の玉が棒状になりまた攻撃速度が上がったみたいだ、それと雷の数が増えている、今までは1人に対して降ってきたものが3つか4つくらいに変わった
相手の攻撃もどんどんと激しくなっていく、しかしアーサーはしっかりとそれに対応している
光の矢も風の刃もしっかりと防いでいる、それで削られたHPはちゃんと回復魔法が飛んでくる
火力の攻撃も悪くない、ユニコーンやNPCを倒すのにそこまでの時間はかかっていないしエルダープリーストのHPを減らすのも順調にできている
そして最後の特殊行動だろう、25パーセントまでエルダープリーストのHPを削り切った
エルダープリーストが両手で杖を持つ、また詠唱が始まった
『詠唱来るぞ!気を付けろ!!』
またエルダープリーストを中心に魔法陣が広がる
『範囲から出ろ!竜巻が出るかもしれない!!』
皆が範囲から逃げる、そして詠唱が終わりその範囲の中に竜巻が巻き起こる
『雑魚優先!雑魚優先だ!!』
竜巻が消え、中にいたエルダープリーストが姿を現す、その手に持っていた杖はその場にいたプレイヤーが全員チームチャンネルで喋っていたら「お前本当に聖職者のクラスなのか!?」と突っ込みがあちらこちらから聞こえてくるようなものだったであろう
どこからどう見ても鎌である、しかも特大の
『と、とりあえず雑魚からだ!!!』
アーサーの声に動揺が感じられる、それはそうだろう、あんなものを見せられたら誰だってビビる
エルダープリーストの持っていた杖は確かに最初から鎌のような感じをしていた、そこに風と雷が巻き付いているのだろう、人くらいなら両断できるほどの大きさになっているのだ
エルダープリーストがその杖を振ると強烈な風がアーサーを襲い、雷が辺りに降り注ぐ
攻撃速度的には先ほどよりは遅くなっているがダメージが段違いである
早くNPCを倒さなければ、皆がそう思ったのかただ単に怖くなったのかエルダープリーストから離れNPCを攻撃し始める
そして全てを倒してから再度エルダープリーストに向かっていく
どうやら無限復活ではなさそうだ、それだけは安心できた
『青チームがエルダープリーストを撃破しました』
アナウンスが響く
それは赤チームが遅れている事を示すものだ、それを聞いて500人が力を合わせる
残りはあと少し、あと少し・・・・
『赤チームがエルダープリーストを撃破しました』
さあ、次はパラディンロードだ、歓声をあげる事なくアサギ達は次の部屋へ急いだ




