聖騎士はお吸い物でなら知っている
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その後6人は再度「トークノ盆地の栽培地」に足を踏み入れる
狙うは2番目の木が4本立てかけられていた部屋だ
空間があるのに何もないなんておかしい、つまりは出現確率が低い何かがいるのだろう、そう思ったのだ
6人はそれがなんなのかを突き止めるまで周回をするつもりである
1周や2周では出るとは思ってない、ぐるぐると出るまでやるのだ
幸いにも2周目でマーリンのユニーククラスの武器が出る、セッキーが持つ杖よりもキノコの柄が長く傘も大きい、マーリンの趣味にも合わないらしいのでどうせ外見変更をするのだろう
そして久しぶりに魂がドロップする、これは攻撃する時に確率で毒を相手に付与するというものなので攻撃回数が多いまぁちゃんが持っていった
元々シャドウのクラスにも毒はあるがどうやら武器につけた心による毒ダメージとスキルによる毒ダメージは別の効果らしく両方発動すれば結構なダメージを与える事ができるみたいだ
ボスの攻略の仕方も色々と話し合っているしどのタイミングでどのスキルが来るかも頭に入っているので皆が何処に配置をすれば1番効率よく戦えるかという事もなんとなくわかってきた
最初は驚いた幻覚スキルではあるが1度種がわかればどうという事はない、これが背景や方向感覚までが狂うとなると流石にそうは言ってられないが味方と敵が別のなにかに変わり会話ができなくなるだけである、落ち着いてかがり火で焼けば対処できる
大分攻略のパターン化がされてきた本日7周目にマップ上についに何かが居る事を示すアイコンが光る
「あ!見て、なにかいる!」
「お、ほんとだ、割と早かったな、今日中は出ないと思ってたぞ」
「楽しみね、どんなのがいるのかしら」
6人はようやく会えるとの思いから少しだけ進行速度をあげる
そしてその部屋の前まできてアサギがその中を覗く
「あー!なるほどね!そりゃ珍しい!!」
「え?どういう事だ?ちょっと俺にも見せろよ・・・ああ、納得だな、こりゃ!!」
中を覗いたマーリンも何かを納得したように頷く
中に居たキノコマンの頭上にある名前は・・・
「ああ!まつたけ!確かに私食べた事ない!」
「私もないな、お吸い物ならあるけど」
「私もないけど・・・味はそれほどでもないらしいわよ?」
「俺もないなー、てか別にキノコだろ?食べたいとも思わないな」
「んー・・・まあ、そこまで食べて美味しいって物じゃあなかったかな?個人的にはだけど」
「おー、オネさん流石大人!食べた事あるんだ!!」
「そんな高いやつじゃあないものをちょこっとね」
「だがゲームじゃ味は関係ないだろ、一応料理スキルもあるがまつたけがドロップしたらなにか作れるのか?」
「こんなインスタントダンジョンのしかも出現率悪いボスが限定の素材落とすとは思えないな、確かに他のキノコマンは素材のキノコ落としてたけどこれはフィールドにいるキノコマンでも同じ奴らしいぞ、掲示板の料理人の所で書いてあった気がする」
「なにを落とすか楽しみだね、もし何も出なかったら周回再開かな?」
「まぁ・・・そうなるわね」
「そうね、なにを落とすかまで知っておきたいわね、何もないって事はないと思うし」
「じゃあさくっと倒してドロップ確認ということで!」
「「「「「おおー!」」」」」
アサギは部屋の中へはいり4本並んだ木の前にどでーんと立つまつたけの方へ盾を向ける
「あの木って栽培用のじゃないのかな?まつたけって作れるの?」
「あー、言われてみれば・・・いや、そんな話聞いた事ないけど」
「ゲームだからなんでもありなんじゃないの?」
「それもそうか、えーっととりあえず火の前に連れて行くね」
「ああ、そうだな、頼んだぞ」
「では!まつたけ!よろしくおねがしまっす!!」
アサギはまつたけに向かい駆け出し始めた、しかしもう少しで盾が当たる所まで行くとまつたけはその場から動かずにするりと柄の部分を動かしアサギの攻撃を躱した
「わ!避けられた!とりあえず移動するね!」
アサギがかがり火の傍まで走るとまつたけもアサギの後を追いかけた
大分足が速く移動している間にもアサギは攻撃を受けている
「AGI型の中ボスか、アサギいけそうかー?」
「うーん、大丈夫・・・うん、大丈夫かな、よし、攻撃お願い!」
「よし!任せろ!」
火力陣がまつたけの背後から攻撃を加える
「あっちゃんよくそれ防げるね、こんな手短いから盾に直接当たらないでしょ、しかも今までのキノコより速いね」
アサギは何故ダメージを受けるのかよくわからないキノコマン特有の短い手足からなる攻撃を盾で防いでいる
手自体はアサギに触れていないのだがダメージがあるのだ、ゲームだから仕方ないとは言えこれを防ぐのはなかなかに難しい
見えてるものとダメージを受ける場所が違うからだ、しかもその攻撃は結構な速度をだしている
「んー、でも結構楽だよ?キノコの手の直線状にダメージ判定あるから逆にフェイントが無い分防ぎやすいっていうかなんていうか、なんだろ、手から見えないダメージが伸びてるって感じでそこに盾を合わせているって感じ?」
「よくわかんねぇな」
「うんー、行ってる言葉の意味はわかるんだけど・・・よくできるよね、ほんと」
「今日ね、フクフさんにも本気を出してもらったんだけど凄かったよ、目の前から消えてキョロキョロしてたら後ろから刺された感じ、で、それだと稽古にならないからってちょっと速度は下げてもらったんだけどフェイントはするわ、斬撃や気弾は飛ばしてくるわ、殴るわ蹴るわであれに比べたら全然受けやすいよ」
「あの人も化け物だったわね、そういえば・・・」
「凄かったって言って楽しそうに喋るアサギもアサギだけどな」
「まぁちゃんもフクフさんに攻撃の仕方もっと教わるといいかもね、途中で武器2本持って色々やってたから多分あれはこんなのもあるぞ、って私を通してまぁちゃんに教えてたんだと思うな」
「んー・・・そうね・・・ちょっと怖いけど頭下げてみようかな」
「今度の模擬戦はPvPもあるし俺ももっと練習しないとな」
「そろそろ25パー削るわよ」
「おっとっと」
大体いつも何かしらを話しながら攻略している6人ではあるが流石に初討伐でしかも特殊行動の時は何が来るかわからないので集中をする
ちゃんとよく見ておかないと反応が遅れる可能性がある
だがまつたけは25パーセントを削られても特に行動が変わった様子がない
「ふむ、50パーん時かな」
6人はそのまま攻撃を続けていった
アサギは攻撃をしっかりと盾で防ぎダンチョーにも勧められた反撃スキルの上限突破スキルをまつたけに放っている
「そのスキル上限突破版か?なんか勢いが変わったな、音も凄くなったし」
「そうなんだよ、迷ってたんだけどね、ダンチョーがこっちがいいって言うからこっちあげてみたの、スキルの説明文みたら相当変わっててびっくりしちゃった、元々盾で殴るとたまにスタンするってパッシブスキルも取ってるんだけどそれにプラスしてこのスキルを使ってもスタンするようになったしヘイト値もがっつりあがったし!なにより反撃の勢いが相当凄いみたいだから相手の防御を崩せる時があるんだってさ」
「うわ、えげつないほどの強化だな、いつもアサギがやってる崩しに加えて攻撃10回防がれたらあれが襲ってくるのか」
「あっちゃん攻撃範囲は?」
「んっとね、このスキルに関しては衝撃波を出す感じだから結構飛ぶね」
「「あちゃー・・・」」
「ん?マーリンとまぁちゃんはなんでそんな顔をしているんだ?」
「だってダー君!ますますあっちゃんに勝てなくなったのよ、これで!」
「あ!なるほど・・・そうか、今のが自分に向かってくるとなると・・・んー、俺も考え直さないと・・・」
「ふふ、アサギちゃんは相変わらずパーティメンバーからも狙われてるのね」
「いいけど手を止めるのはやめなさい!ダガー君!腕組んで考えないの!」
「「はーい!」」
「おお、すまない、つい・・・うーん、しかし・・・」
「あははは、もっと差を付けるように頑張らないと!」
「アサギも!そろそろ半分よ!」
「はーい!!」
喋ってる間にまつたけのHPはそろそろ半分という所だ
25パーセントを削った時は何もなかったが多分次は何かあるだろう、そう思い6人は気合を入れる
しかしまつたけはHPが残り半分となっても他のキノコマンよりも素早い攻撃をただ繰り返してくるだけだ
「あれ?ほんとになんにもないね」
「んー・・・まつたけだしボーナス扱いなのか?」
「あー、高いから?」
「そうね、高いもんね」
「そうかしら?あ、いや、値段の方じゃなくてね、本当にボーナス扱いなのかしら?」
「とりあえず倒してみればわかるだろう、だが残り25パーの時は油断しないようにな」
「プッ、さっきのダー君腕組んであっちゃん対策考えてたくせに」
「さぁ?忘れてしまったな、っと!」
ダガーは誤魔化しながら槍を動かす、まぁちゃんもそれに倣い攻撃を続ける
6人が6人の役割をしっかりと果たしている
やがて残りHPはあと25パーセントとなった、一応何かあるかわからないのでその前ギリギリの所で攻撃の手を止めている
「さて、最後よ、油断しないようにね」
「「「「「おおー!」」」」」
「アサギ、やっちゃって」
「ほいきた!」
アサギは右肩に剣を担ぐ、時間をかけていい時はこれに限るのだ
「マーリン!今!」
アサギが右肩に担いだ剣を頭上に掲げた瞬間セッキーからマーリンに合図が飛ぶ
「あいよ!!」
そしてマーリンは光の剣が躱されない様にまつたけに移動不可の魔法を放った
これで逃げ場はなくなる
高度なAIを乗せていないモブならの話で流石にこれが「ダクパラ」だとか本物の「悪竜エドラ」に通用うかどうかは別ではあるのだが
アサギが剣を振り下ろし周囲が光に包まれた時まつたけは叫び始めた
その声を聞いてアサギは光の剣を使った事を少し後悔した、その瞬間が見えなかったのである
周囲の光が無くなった時まつたけは傘からものすごい量の胞子を撒き散らしながら部屋の中をぐるぐると走り回っていた
「おーおー!速い速い!!」
「あれ止まってくれるのか?」
ぐるぐるぐるぐると走り回っていたまつたけの傘からでる胞子が少なくなってきた時まつたけは足を止めた
そしてアサギの前まで戻ってきて・・・また先ほどと同じような攻撃を始める
「何もないのかよ!!」
「あっはっは!あんなに走ったからきっと疲れちゃったんだよ!あはは!かわいー!!」
「あはは!なら走らなきゃいいのに!おっかしー!」
「どうやら本当にボーナスの敵みたいね・・・逆にドロップが楽しみになってきたわ」
「そうね、なんだろう?」
「武器確定とかそんな感じか?」
「あー、レアエネミーだから?でもそれにしては弱すぎるかなぁ?悪竜と魔竜であれだけ違うから確定で落としてくれてるみたいなもんだし」
「ふむ、それもそうか・・・楽しみだな」
まつたけの残りHPはあと少し、果たして何がドロップするのだろうか
6人は期待を胸に攻撃を続けている




