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胃の痛みの原因は聖騎士

「不正・・・ではない・・・だがそれ以上に・・・」


 教皇へクラスチェンジしたプレイヤーがキャラを登録してから何を語りどう行動したか、それを確認した海野は思わず天井を仰ぎ見た


「流石にウミノピーはねぇだろうよ・・・」


 ブフッ!!!!

 言った瞬間不正ツールを使用していないかを確認していた社員が吹き出した


 それをじろりと睨みながら海野は対策をしたつもりが逆効果だったのか、と考えていた


 フルダイブVRMMO、それはある意味ではリアルの世界である

 今までのゲームとは違い自らの意思で、自らの力でキャラクターを動かすからだ

 色々問題が出るとは思った

 何度も何度も会議を行いどんな問題がでるだろうかと真剣に話し合った


 例えばプレイヤーキラー、すなわちPKという行為

 今までのMMOならそんなものあって当たり前、ないとしても町のどこかに対人ができる闘技場を用意するとか個人同士で対人を申請しあえるシステムが用意されているのが普通だろう


 だがこのゲームではどうするか

 この世界は、この世界のリアルさはなにか大きな犯罪を助長してしまうのではないか?

 そう心配する声が出る事は当然と言えた


 だが海野からしたら「そりゃでるよな」くらいの反応しか示さなかった

 そしてPKができる範囲を絞り、対人戦の時にダメージを与えても血などは出さずに非現実じみたエフェクトをだすようにした、これが現実ではない事を視覚に、聴覚に、触覚に訴えかけたのである


 これらの配慮はきっとプレイヤーから疑問の声が上がるであろうとも考えた海野は闘技場を作り上げた

 この内部は最初に登録する年齢を15歳以上にしているプレイヤー、流血などのエフェクトを了承するプレイヤーに対しては一切の配慮をしなかった

 斬れば斬るだけ血は飛び出るだろう、斬った場所や傷の深さによってはそれ以上の物も飛び出てくるだろう、相手のHPが底を尽きない限りは


 これはただ配慮だけを考えて差をつけた訳ではない


 その方がきっと盛り上がる


 あまりにもリアルにしすぎたこの世界で人を切ったのに血が出ないなんて事は海野からしたら我慢ができるものではない

 だが本人が1番気にしている事はバランスだ

 そのバランスを考えメリハリをつける事にしただけだ

 対人が好きな人間が切った人間から光の粒子が出る事に満足できる訳がない、絶対に闘技場に足を運ぶ、それはつまりPKを一か所に集める事にもなるしPKという行為をあまり好まないプレイヤーも対人を楽しめるようになるかもしれない

 MMOである以上どこかで絶対に対人イベントはやる事になるだろう、その調整にもなる


 PKの問題が片付いたかな、と思った時に他の社員から発せられた言葉が海野の頭を悩ませた


「ストーリーのテーマに教会、つまり宗教がはいってますけどリアルのを持ち込まれたら色々まずいのでは?」


 そうだ、それはまずい、本当にまずい

 個人や周りの仲間とだけならまだ許容範囲だがNPCが巻き込まれるのはまずい、どこからいちゃもんを付けられるかわかったものではない

 だが今更メインストーリーを変える気はない

 海野は考えに考えた・・・


 そして作られた絶対に覆せないルール


 この世界のNPCは6つの宗教以外に染まる事はない

 それはプレイヤーに情報開示していないステータス、プレイヤーの信仰度によるルールだ


 この信仰度が規定に達していない限り教会や宗教をNPCは信仰しない


 NPCの1人1人は6つの教会のどこかを信仰しており、どこかが何かの拍子に無くなったとしても生んだのは光と闇の神だから、一緒に生まれた神様だから、と信仰を途切れさせないようにした

 ぐるぐるぐるぐる信仰を回すのだ、他のものに入ってこられる隙間を作らない為に


 つまり6つの教会の信仰度はこの世界ができた時から100パーセント

 他から持ち込まれても揺るぐ事は絶対にない

 

 新たな宗教は運営が用意しない限り絶対に増えたりはしない


 このシステムを考えた時海野は笑みを浮かべていた

 海野は思っていた、いや、他の社員もこれならNPCが巻き込まれる事はないだろうと思っていた

 ゴタゴタを未然に回避できて皆安心している


 教皇やパラディンロード、エルダープリーストと言う同時に6人ずつしか存在できないNPCが同士討ちになるとそれは世界が荒れる懸念もあったので、どうせなら他の職業のNPC専用職業もこのシステムと似たようなものを作って繋げておこう、それをしたら魔王に倒される前に人間同士で戦い合い戦力を減らすという事も少なくなるはずだ


 そちらに思考を寄せたのが失敗だったのか・・・


 まさかプレイヤーがシステムの輪の中に7人目の神を誕生させ


「俺を神にするとは・・・な・・・」


 




 新たな宗教は運営が用意しない限り絶対に増えたりはしない、はずだった・・・


 光と闇の神が創造神ウミノピーを父親と認識してしまったので神々の信仰の円環に入り込んでしまったのである

 それによりNPCの信仰度が神々を通じて創造神ウミノピーに集まり宗教は誕生した

 NPCが光の神を、闇の神を、他の神々を信仰しただけでその信仰度は創造神ウミノピーにも蓄積されていく

 つまり創造神ウミノピーの信仰度はアサギと光と闇の神しか名前をしらないのに100パーセントになっていた


 アサギが意図せず作り出した神が全くの適当ででたらめなものだったら光と闇の神は諫めて新たな教会が誕生する事はなかっただろう・・・

 あのタイミングで天の声がなければ・・・

 天の声に反応して呟いたりしなければ・・・

 ストーリー上に光と闇の神はどうやって誕生したかをちゃんと描写しておけば・・・

 自らを作った存在に興味が湧く事がないAIにしておけば・・・

 予言をしたと言う設定を確認しにいくような性格にしないでおけば・・・


 色々な偶然が重なってしまった

 重なったから誕生してしまった

 これは不正ではない

 勿論こちらが用意した動きではない

 だがこれは自由な行動の結果である


 自由に遊び、色々な出会いを楽しめ


 こちらからのメッセージを?ちょっと想定外の行動を起こされたから?メンテナンスして巻き戻してなかった事にする???


「それをやってはだめだろう・・・だが・・・バランスを考えるとなると・・・」












「アサギよ、何を呆けているのか?」


「・・・っはぁ!!!!す、すいません!!」


「まあ、よい、兎に角お前は弱い、それなのにあまりにも強い装備を持たせるのは本人の為にならない、強い装備はその冠と剣だけで十分だ、だからこの盾はお前に合わせて強くなっていく事にする」


 私と一緒に成長する盾!?なにそれ超かっこいい!超うれしい!!


「お前は割と顔に出るタイプなんだな、さっきから焦ったり呆けたり喜んだり大変だな」


「だが喜んでいるようでなによりだ、この盾と一緒にアサギ自身も成長する事を願っているぞ」


「「じゃあ魔王が復活してしまったその時は会う事もあるだろう、さらばだ」」


「あ、ありがとうございます、神様ーーー!!!!」


「そうだ、教会に行って聖騎士と訓練をするとよい、しっかりしごいてもらうんだな、ハハハハハ!!」


 あ、はい・・・






 大分光っていた神様たちが消えた事でなんか物置が汚くなったような気がした

 ここは教会になったのだろうか?

 とりあえずマップを見る


「んー・・・道具屋の奥・・・教会って表示は・・・ないのか」


 そうか、ないのか、それはちょっと残念だな

 神様に認められたんだから表示されると思ったんだけど・・・

 こうなったらいつかきっと買う個人ハウスやギルドを作ると買えるギルドハウスを教会にしてもいいな


「まおクエ」のハウジングシステムは別の世界の土地を買うタイプのシステムではない

 個人宅にワープする機能はつけているがNPCが生活しているこの世界の土地を買っていくシステムだ

 当然王都ともなれば値段は高い、いい場所なら尚更だ、しかも早い者勝ちである

 同時ログイン数が結構な数になっているこのゲーム今売られている土地なんかはすぐに無くなり土地を買い求める人間が増えていく事になるだろう


「早くお金貯めないとな!それより先にレベル上げか・・・まだレベル1だし、あ、でもジョブレベルだけは高いんだよね、どうしよう、まずはスキルにポイント振っちゃおうかな?それから教会に行って聖騎士さん相手に訓練!くふふふふふ、楽しみだなー、私の理想のような聖騎士はいるのかしら?」



『プレイ中大変申し訳ございません、少々お時間よろしいでしょうか』


 私が金策とレベリングを頑張ろうと意気込んだ瞬間に天の声が聞こえてきた

 しかもこのセリフから考えるに・・・


「もしかして私だけへのメッセージ・・・?」


『はい、新たな教会を立ち上げ、教皇となり、自分をパラディンロードに任命したアサギさんのみへのメッセージとなります、少々お時間よろしいでしょうか?』


 ・・・コレハ、ナンノパーティノオサソイカシラ・・・?

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