聖騎士は悪竜に剣を突き刺す
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「悪竜エドラ」の攻撃は熾烈を極めていた
アサギ以外なら腕の一振りでかなりのHPを削られるだろう
それでもアサギは何とか耐えていた、攻撃自体は速いが単調ではあるので盾をあわせ防ぐ事ができている
しかし徐々に攻撃を受けきれず身体が浮きそうになる感覚を覚えていた
(まずい、この「悪竜エドラ」の思念体、どんどん攻撃力が強くなっていく?寝起きだからとかそういう事なの?)
アサギはそれでも耐え続ける、盾で攻撃を防ぐ回数によりより強力になっていく反撃スキルをもう何度も使用している、攻撃のチャンスがあればそれを見逃さず全力で攻撃を与えている
アサギ以外も攻撃は続けている、「悪竜エドラ」の背中へと攻撃の手を休める事なく動いている
それでも、それでも「悪竜エドラ」の思念体のHPは1割も削れていない
このままではまずい・・・そんな空気がその場を支配しようとしていた
だがアサギは諦めていない、タンクが最初に諦めてどうするのだ、そう思いなおし相手の攻撃を必死に盾で防ぐ
「危ない!!」
叫んだのは誰であっただろうか、アサギは盾で「悪竜エドラ」の右拳による攻撃を防いでいる、その時視界の左端で何か動くものを見た
次の瞬間アサギの身体を衝撃が駆け抜け大きく弾き飛ばされる
何があったのか、アサギが衝撃を受けた方向に吹き飛ばされながらも視線を送るとそこには「悪竜エドラ」の尻尾があった
(尻尾に気を付けてと言ったのは私なのに!!)
倒されたアサギは歯を食いしばりながら立ち上がる、自分が言った事を自分が出来てなかった、気づけていれば防げたかもしれない、情けない、そう思いながらアサギは目の前の「悪竜エドラ」の元へ再度突進していく
「悪竜エドラ」はその場を動いてはいない、アサギが近くに来ると尻尾を薙ぎ払うように振るってきた
アサギはそれを盾で受ける、しかし防ぐ事は叶わずにアサギは再度大きく吹き飛ばされてしまう
「はっはっは、弱イ、弱イゾ、人間!!ぱらでぃんろーどガ居ルカラドレホドノ強サカト思ッタガココマデ弱イトハナ!!」
「悪竜エドラ」は笑っている
それを見てアサギ達は静かに、そして強烈に、「悪竜エドラ」には勝てないと悟った
「なんでそんなに強いなら自分で狩りに行かなかったの?」
アサギの口からふとそんな言葉が零れ落ちる
ピクリと「悪竜エドラ」の眉間が動いた
「魔力ヲ温存シテイタノダガナ、アマリニモ生意気ナ奴ラガ居タカラツイ魔力ヲ使ッテシマッタ、ソレダケノ事ヨ」
「ふーん、そっか、じゃあその集めた魔力、少しでも発散させていけばいいって訳ね」
「なるほど、これは相手のHPを削る戦いじゃあないって事か、耐久戦ってんならまだやりようがあるな」
「くはははは!私ノ魔力ガ尽キルマデ貴様等ガ生キテ居ラレル訳ガ無イダロウ!無駄ニ魔力ヲ消耗シテシマウガ貴様等ニ使ウ魔力ナンテ微々タル物ダ」
「セッキー、耐久戦だって頼むね」
「ええ、任せなさい、タンクは任せたわよ」
「うん!!」
「はっはっは!弱イ奴ラニコレ以上時間ヲ掛ケル必要モ無イ、サッサト楽ニシテヤル」
「悪竜エドラ」は再度薙ぎ払うように尻尾を振るう
ガンッ!と大きな音が響く、アサギが尻尾を止める事に成功したのだ
「へへへ、任されたからね」
アサギは剣をしまい両手で盾を固定していた、だから先ほどまでは防ぎきれなかった攻撃が防げるようになったのである
「悪竜エドラ」の顔が憎悪に歪む、どうやら怒らせてしまったらしい
攻撃はさらに苛烈なものになっていく、両手と尻尾、さきほどまでは単調だった攻撃が徐々に鋭さを増し色々な方向からの攻撃へと変化していく
アサギは耐える、ただ時間を稼げばいい、少しでも多くの時間を稼ぎ相手の魔力を削る、それ以外の事をアサギは考えなかった
腰を落とし脇を絞め左腕に固定してある盾を身体に近づけ右手でその盾を後ろから押さえなんとか吹き飛ばされる事なく攻撃を耐える事に成功していた
「悪竜エドラ」の顔が更に歪んでいく、どうやら本気で怒っているようだ
その両拳に黒いオーラが見える、魔力の温存よりもアサギを倒す事を優先させたようだ
「貴様等!!コレデ終ワリニシテヤル!!」
「悪竜エドラ」は今までで1番強力な攻撃を放った
その拳は黒いオーラに覆われており触れれば1撃でアサギを殺す事ができるだろう
「悪竜エドラ」の拳がアサギの盾に当たる前「悪竜エドラ」の口元は笑っていた
しかしその攻撃が当たってもアサギのHPは少しも揺らぐ事はなかった
「ナンダト!?何故今ノ1撃デ死ナナイ!?」
「悪竜エドラ」は左の拳をアサギに振るう、しかしそれでもアサギが倒れる事はない
アサギは30秒間ステータスを固定するスキルを使ったのだ、黒いオーラを見た瞬間アサギはこれは耐えるとか躱すとかできるできないの問題ではないと理解した
確実に次の1発で終わる、そう思ったのでできるだけ魔力を使わせてやろうとこのスキルを使用した
「悪竜エドラ」はどうやらイライラしているようだ、よほど自信がある攻撃だったのだろう、何度も何度もアサギに拳を当ててくる
アサギは30秒間攻撃に移る事もできたがHPを減らすのが目的ではないので少しでも「悪竜エドラ」に攻撃をさせようとただひたすら攻撃を受ける事に専念した
しかしこのスキルにも終わりは来る、「悪竜エドラ」の猛攻を耐えきったそのスキルの効果時間がついに切れてしまう
「「悪竜エドラ」、残念だけどちょうど今スキルが切れちゃった、もう私はお前の攻撃を防ぐ事が出来ない」
「悪竜エドラ」の口元が歪む
「くははは、ナルホド、最後ノ悪足掻キダッタノカ、シカシソノすきるガ切レタトナルト最早コノ攻撃ハ受ケ切レマイ」
「そうだね、流石にそれは防ぎきれないかな、まあ、でも大分時間稼げたからいいかな」
「忌々シイガ予定ヨリ魔力ヲ削ラレタノハ事実ダ、デハ楽ニシテヤロウ」
「ううん、魔力を削るのは途中からそうしようと思っただけであってその為の時間稼ぎじゃあないよ」
「ナンダト?何ヲ言ッテ・・・」
その時「悪竜エドラ」の背中に矢が突き刺さる
初めて大きなダメージを受けた「悪竜エドラ」は何事かと後方へ振り返った
そこには大勢の殺意が「悪竜エドラ」に向けられていた
「さて、誰が集落へ助けを呼びにいったでしょうか?」
「キ、貴様等ああああああ!!!」
最初に「悪竜エドラ」に攻撃を当てた時、アサギ達は「悪竜エドラ」を倒すには自分たちのレベルが絶対的に足りない事を知った
しかしだからと言って「悪竜エドラ」をこのまま放置して死に戻りするのはまずい、だから攻撃のさなかにハイディングが使えるまぁちゃんがそっと戦線を離脱し集落へ戻り「悪竜エドラ」の思念体が出現したから力を貸してほしいと言いに行ったのだ
戦闘の状況はパーティチャンネルにより把握できるのでアサギが時間が稼げそうだからと集落の人間の大部分に声をかける事ができ、そして準備もしっかりとしてもらう事ができた
「本当は私達で何とかしないといけない筈なんだけどね、でも無理みたいだから頼っちゃった」
元々「悪竜エドラ」が起きてしまったら対処をする為に集落にいるNPCだ、「悪竜エドラ」の思念体とは言え放って置く事などできるはずもない
しっかりとその場に留めておいてくれるタンクがいると聞き、しっかりと「悪竜エドラ」を殺せる装備を整えてからこの場へ来ている
「悪竜エドラ」の咆哮をきっかけに数多の矢が放たれる、アサギはそれを見てその場を離れようとする
「貴様!逃ゲレルト思ッテイルノカ!?」
「悪竜エドラ」は次々と自身に刺さる矢など気にもせずにアサギに向け黒いオーラを纏った拳を振り下ろそうとする
しかし横から強烈な衝撃を喰らい「悪竜エドラ」は転倒する
「おいおい、「悪竜エドラ」さんよぉ、この状況でそんな事できる訳がないだろう?」
そう言ってアサギを助けてくれたのは雷の教会から集落に派遣されたパラディンだった
アサギは目を奪われた、もはや「悪竜エドラ」なんぞは眼中から消え去ったのだ
パラディンに助けられたのだ、それだけでテンションもうなぎのぼりである
そのパラディンはアサギの強烈な視線に気づかずに「悪竜エドラ」へと攻撃を続ける
アサギはそのパラディンの一挙手一投足をつぶさに観察した、取り入れられそうな所は取り入れようと思ったのだ
「クソガアアアアア!!!!貴様等、次ニ会ッタラ絶対ニ殺シテヤルカラ覚エテイロ!!!」
「悪竜エドラ」の思念体は集落の人々の攻撃を受けHPを散らしていく
「お前に次なんかあると思っているのか?」
パラディンが剣に光属性を付与したのだろう、アサギが使った時よりも激しく剣が輝く
その剣を「悪竜エドラ」のみぞおちに深々と突き刺すと「悪竜エドラ」は光と共に消え去った
「ふー、大丈夫だったか?君のお陰で被害が少なくて済んだみたいだ、あいつをこの場に繋ぎとめてくれてありがとう、お陰でこちらもしっかり準備が出来て思念体を逃がさずに倒す事が出来た、疲れているだろうが詳しく話を聞きたい、集落に来てくれるだろうか?」
「あ、はい、仲間がいるんで聞かないとだけど多分大丈夫だと思います」
「そうか、じゃあ俺達は先に帰っている、集落でまた会おう」
「あ、はい、あの!ありがとうございました!助かりました!」
「ん?はは、助かったのはこっちもだよ!じゃあ先に行っているぞ!」
集落にいたNPCはアサギ達を残し帰っていく
「ふー・・・まぁちゃんありがとうー、助かったー!」
「あっちゃんもお疲れ、間に合ってよかったよー」
「セッキーも集落のNPCに助けを求めるって事よく思いついたな」
「元々「悪竜エドラ」が強いのはわかってるからね、まだ実装されてないダンジョンのラスボスなのよ、いくらそれの思念体とは言え最初で勝てないのはわかったからね」
「フ、不本意ではあるがこれが最善だっただろう、誰も被害がでてないしな」
「そうだね、皆お疲れ様、アサギちゃんかっこよかったよ」
「くふふ、ありがとうオネさん!支援助かったよー」
「ほんとシャーマン1人で大分変わるのね、敵が「悪竜エドラ」じゃあなかったら私も余裕も持って攻撃に参加できてたかもしれないわね」
セッキーがオネにそう言うとダガーが少し下を向いた
「ダガー君、今回は相手が悪かっただけだよ、ダガー君が活躍する機会なんてこれからいっぱいあるよ、その時はよろしくね」
「!?な、なにを言っているかよくわからないが俺が本気を出すほどの敵がでるといいな!その時は俺が大活躍してやろう!!」
「おいおい、ダガー、それじゃあ今は本気だしてなかったのか?」
「え!?ダガー君そうなの!?」
「えー、ダー君そうなのー!?」
「だ、ダー君!?あ、いや、そうじゃなくてだな!勿論今だって本気でやっていたぞ!?」
「そうね、しっかり攻撃してたのをちゃんと見ていたわ、それよりもマーリンの方が手を抜いていたんじゃないの?魔法が飛んでいくの全然見なかったわよ?」
「あら、マーリン君の方がさぼってたのかな?」
「な!ちが!オネさんあれは魔法がレジストされて効果がでなかっただけでちゃんと攻撃してたから!セッキーだってわかってるだろ!?」
「なんだ、マーリン、サボりはよくないぞ」
「だからさぼってねーって!」
「まあまあ、ちゃんと皆頑張ってくれたから何とかなったし、さっきのパラディンさんに集落に来るように言われたから言って話をしようか」
「そうね、あの竜人形態の事も話さないとね、じゃあ行きましょう」
「「「「「おおー!」」」」」
サブタイの聖騎士はアサギと違うんかい!って感じにしたかったのです




