聖騎士は顔面に拳をねじ込みたい
「うーん・・・ライバルか・・・うぅむ・・・いい響きだね!」
アサギは笑いながら言う
「さて・・・あのライバルはあと何回私達の前にでてくるのかしらね・・・アサギに負けずに私達も強くならないといけないわ、このままじゃアサギにおんぶに抱っこなのが身に染みたわ」
「うーん・・・明らかに適正レベルじゃなかった気はするけど、確かになぁ」
「2人はまだいいわよ、せっちゃんは回復、マー君は攻撃でちゃんと仕事してたじゃない、1番何もできてないのは私よ、私」
「え?そうなの、まぁちゃん、でも大丈夫だよ、ダンチョーとフクフ副団長と稽古していけばきっと慣れていくよ~」
「まさか苦戦の理由が対戦相手がいつもより遅いからだー、なんて言うのはアサギくらいなものでしょうね・・・」
「うーん、面目ない・・・若干のズレだったと思うんだけどなかなか修正できなくて・・・私ももっと練習しなきゃ!うん!!」
「わー、あっちゃんがさらに強くなったら本当に勝てないよ~」
「まぁちゃん、頑張るしかないな・・・俺も詠唱時間減らしていく事を考えないといよいよアサギに勝てる見込みがなくなってきたな・・・あ、そういやその腕装備どんな効果なんだ?」
「うんとね、STRとVITと攻撃速度があがるよ、流石パラディン専用だね」
「パラディン専用って事は2次職を終わらせたくらいにドロップする装備だから今の時点では相当いいものなんでしょうね、どうなってるのかしらね?」
「わかんねぇなぁ、まあ、パラディンロードがいる事がイレギュラーなんだろうからそれが更にイレギュラーを生んでるとしか思えないな」
「くふふ、やっぱ装備更新は嬉しいな、さぁ皆!「アルージー」戦だよ!気合入れていこうね!!」
「「「おおー!!!」」」
先ほどの勢いのままアサギ達は「アルージー」がいる扉を開ける
「うーん、開けたけど反応ないね、特殊AIじゃないただのボスっぽいかな」
「「ダクパラ」みたいなのが何人もいたら困るわ、どこまで力を解放するかもわからないしね」
「見た目はー・・・チャントタイプかな?あの手甲はモンク志望だね」
「となると支援魔法ガンガン使って体術で戦うタイプか、アサギ、戦闘経験は?」
「ダンチョーは素手でも強いよ」
「よし、もらったな」
「そうみたいね」
「ほんとなんでもできるんだなぁ、ダンチョーは・・・そしてあっちゃんダンチョーと戦いすぎでしょ」
「ダンチョーは殴り7割投げ2割って所かな?フクフ副団長はつねに投げ技を狙ってくる感じ」
「「「副団長もかぁ・・・」」」
「土の教会ってどんな集団なんだろうな?」
「戦闘狂の集まりとか?」
「あながち否定できないのよねぇ・・・」
「うーん・・・皆優しいんだけどねぇ・・・?」
「まあ、いいや、とにかくなんとかなりそうだな、じゃあアサギよろしくな」
「うん!じゃあ行こうか、取り巻きいなさそうだけどもしでたらサインつけるから1番数字が大きいのから足止め睡眠よろしくね、マーリン」
「おう、まかせておけ」
「じゃあいくよ!「アルージー」よろしくおねがいしまーっす!!」
アサギは「アルージー」の元へ駆け出していく、しかし前に回避スキルを使われた事を思い出し相手の攻撃範囲に入ってから突撃を使用と思った
「おや、君たちは「ダクパラ」を倒してここまで来たようだね?」
突然声をかけられアサギが立ち止まる
「あれ?特殊AI?」
「いや、どうやら索敵範囲にはいったから声かけてきただけっぽいぞ」
「とりあえず話を全部聞いてからね」
「「ダクパラ」を倒したのなら君達はうちの中でも上級の戦闘員並の強さがあるようだね、私の名前は「アルージー」、階級は中級将校だ、よくぞここまで来た、そしてよく「ダクパラ」を倒してくれた、褒めてあげよう」
その言葉にアサギの眉間に皺が寄る
「おいおい、中級将校だってよ、勝てるのかこれ?」
「強いとは思うけどここは1回目のクラスチェンジで来れる所よ?なにか発明したとかで選ばれてるんじゃないかしら、だから階級はいいけどそこまで強くない、みたいな感じ」
「ククク、「ダクパラ」は上級将校だが力を封印していてね、それの解除の為にここに来ていたんだがね・・・見えるかい?この宝珠で力を封印しているのさ、これを複数使いあいつを上級将校から6等兵まで力を抑えたんだよ、あいつがここで死ねば上級将校の椅子が1つ開くと思ったから解除をワザと遅らせていたんだがどうやら我らが神が奴を気に入ったらしい、死ぬ前に身体を回収していったみたいだ」
「なるほど、そう続くのね、どうやら次に会う時は邪教徒の神様の力で相当強くなっているみたいよ」
「楽しみが増えたね!!」
「アサギは本当に・・・まあ、強い敵の方が燃えるのは確かだな!」
「つまり奴は・・・ククク、我らが神の依代に選ばれたのだ!これで上級将校の椅子が1つ開く事は確実だ!今の私はこんな所で王都を滅ぼす準備をする任務に就いているがこれが終わればその成果で上級将校に選ばれるに違いない!!だから貴様等外遊人には一応礼をしておこうと思ってな!邪魔なあいつを殺してくれれば1番よかったんだがあいつが負けたってだけで私の心は晴れ晴れとした気分だ!」
「ねー、セッキー、あいつもうぶちのめしていいー?」
「だめよ、アサギ、ストーリーの重要な所なのよ、これは、それに今の発言でわかったわね、戦闘能力以外で選ばれてる中級将校みたいよ、問題はなさそうだわ」
「はーい・・・」
アサギはイライラしていた、別にこいつの為に「ダクパラ」と戦った訳ではない、それに自分のライバルのような「ダクパラ」との戦いに水を差された気がしたのだ
「ハーッハッハ!!それでは君達には褒美としてここで死んでもらうとしよう、力を封印された「ダクパラ」なんかより私の方が十分に強いぞ」
「アサギ、いいわよ」
「うんっ!!いくよ!!」
アサギは「アルージー」の身体目掛けて突撃を仕掛ける
相手は手甲に鎖帷子の装備のみだ、そこ以外なら攻撃が十分にはいるだろう、ならばまずは身体に攻撃をあて体勢を崩した後に無防備な所へ攻撃を加えようと考えた
ガツン、とアサギの盾と前腕を覆う「アルージー」の手甲がぶつかる、「アルージー」の身体が若干浮いた所で4人は「アルージー」の大体のVITを把握した
そしてアサギは攻撃を加える、手甲に覆われてない上腕の部分だ、其処を目掛けてアサギは右から剣を振り下ろす
キンッ!という音が聞こえる、アサギは違和感を覚え若干後ろに飛んだ
「おい、アサギどうしたんだ!?」
「今鎧に覆われてない所狙ったんだけど金属を斬ったような感触と音だったの、VIT型のシャーマンなのかな?」
「シャーマン・・・シャーマンのスキルにそんなのあったっけ・・・?」
「1つあるわ、肌を硬化させて防御力をあげるスキルが」
「バフの表示はないから多分ずっと続くね、うーん、攻撃通りにくいのかー、マーリン頼んだー」
「おう、アサギもヘイト管理頼んだぜ」
アサギは「アルージー」の後ろに回り込む事で3人に背を向けさせた
「アルージー」の攻撃範囲が狭い為超インファイトである、「アルージー」は盾の上からでもお構いなしに攻撃を繰り出してくる
アサギは右の拳に合わせて盾をひいてみる、しかし相手の体勢は崩れずに左の拳を喰らってしまう
「大丈夫?」
「うん、とりあえず相手の攻撃の様子見だから」
次にアサギは相手の攻撃に合わせて蹴りをいれる、狙いは「アルージー」の左のすねだ
ダメージは入ったようだ、しかし「アルージー」は最初から常時スーパーアーマーらしく転倒しない、どうやら肌を硬化するスキルの効果にスーパーアーマーもあるようだ
「うーん・・・ほんとにマーリン任せになりそう、ヘイトをしっかり稼がないと」
剣による攻撃も攻撃を喰らった瞬間に使ってみたがSTRにVITを上乗せしてる割にはダメージが通ってる感じがしない、どうやら物理攻撃に対するダメージカットがあるらしい
「むぅー・・・なんか性格も戦闘スタイルも嫌いだなぁ」
「あらあら、アサギがそんな事言うなんて珍しいわね、周回予定だけど大丈夫?」
「うん・・・頑張る・・・」
アサギはなるべくダメージを与える為に防具以外の所を狙い攻撃を繰り返す、「アルージー」の攻撃をしっかりと盾で防ぎつつ反撃スキルも忘れない
まぁちゃんの攻撃も大分ダメージをカットされているようであまり効果が感じられないらしい
「一応毒ダメージはしっかり通ってるけど全然ダメージ出てる感じがしないよ、私も」
「ここにきて俺が大活躍だな!!」
「HPが削れてからの特殊行動が怖いわね、アサギ、身代わりスキルを使う用意をしておいてね、多分マーリンになにかあるわ」
「あ、うん、そうだね」
「ええ!?俺に来るのかよ!?」
「確かに普通に考えたらマー君だね、頑張れ~」
「おいおい、気を付けてなきゃいけねぇじゃねぇか」
「あら、マーリン、いつもアサギがヘイトを維持してくれてるからって気を抜いていたの?」
「あ、いや、そういう訳じゃないけどな?いや、ほんとだぞ?」
「えー、そうなの?じゃあたまにはわざとヘイト流さないとだめかな?」
「まてまて、アサギ、それはまじで死ぬからだめだ!しっかり頼む!」
「くふふ、冗談だよ、マーリン、でももし流れたらごめんね」
「ああ、その辺はこっちも火力調整するからやばそうなら言ってくれ」
アサギがなかなか通らない攻撃に若干イライラしながらもマーリンの火力のお陰で順調に「アルージー」のHPを減らしていく
そして25パーセントを削り1回目の特殊攻撃の時間がやってきた
「貴様等!なかなかやるではないか!こちらも少し本気を出そうか!」
「さて、なにをするかな?」
「アルージー」は何か呪文を詠唱しはじめた、もちろんこの呪文詠唱の邪魔をする事はできない、攻撃を加えようとしても当たる前になにかに阻まれ「アルージー」に身体に届かない、黙って詠唱終了を待てという事だろう
その間にセッキーは支援魔法の掛けなおしをし始めたのでアサギも自分の支援魔法を更新しておいた
「ハッハッハ!いくぞ!外遊人ども!」
「アルージー」の身体から炎のようなオーラが見える、シャーマンらしくなにかの支援魔法を使ったのだろう
先ほどまでの「アルージー」の攻撃は単発だったのに対して燃えてからは連打が増えアサギの攻撃回数が減りヘイト維持が難しくなる、しかも火力が上がっている為セッキーから回復が飛んでくる回数も増えた
「これはタンクが大変なボスだな」
「そうね、アサギもあの武器でも火力でないとなると他のパーティは大分長丁場の戦闘になるわね、マジシャン系いないとどうやってクリアするのかもわからないわ」
「珍しいね、あんだけ創造神がバランスバランス言ってるのになんかの職が居ないと勝てないようなボスって」
「うーん・・・ウミノピー以外が考えたボスなのかなぁ?」
「うーん、でも言われてみるとそうよね、なにかギミックがあるのかしら?まぁちゃん、ちょっと部屋の中探してもらっていい?」
「うん、わかった!あっちゃん頑張って!」
「うん、まぁちゃんよろしくね」
考えてみれば確かにおかしかった
このゲームを作った本人は1番にバランスの事を考えている、それなのに魔法攻撃を使う職が居ないと倒せないボスを出すのはおかしい、考え方によってはバランスよくパーティを組めよ!と言っているだけとも取れなくはないがそれならそれで倒す方法くらいは用意しているはずだ
それにアサギのヘイト維持能力は普通ではありえないくらいの高さがある、そのアサギですら維持に苦労するようなモブでどうやって他のナイトが維持できるというのだろう
「今までが特殊な倒し方をするボスに会った事がないだけで毎回真正面から殴り合うだけじゃあないのかもしれないわね、せめてそのヒントくらいは欲しかったけどね」
「ヒント、ヒントねぇ・・・ああ!そうか!そういう事か!まぁちゃん!!」
「うん?なにかわかったの、あっちゃん」
まぁちゃんの問いにアサギは満面の笑みを浮かべて大きく頷いた




