盗賊は必死に踊る
「アサギ!まぁちゃん!」
目の前にいた「マモッテルン」が爆発しセッキーが思わず声をあげる
「大丈夫!回避スキル使ってたから!」
まぁちゃんからは声が返ってくる、しかしアサギの声はない、半分減ってはいるが一応HPバーは表示されているのでやられたわけではないのでセッキーはすぐに回復魔法をアサギにかける
すると分厚い鎧を着ていたはずの「マモッテルン」が随分と身軽そうな恰好になってセッキーの方に振り返った
「鎧を脱いだのか!まずいぞ、セッキー!ヘイトが初期化された!ターゲットはセッキーだ!」
その声に呼応するかのように「マモッテルン」はセッキーの方へ手に持った幅広の剣を振りあげながら近づいてくる
「あっちゃんは!?」
「さっきの爆発でスタン中だ!しかも特殊スタンらしい、時間がなげぇ!!」
「じゃあ私がヘイトとるから!」
まぁちゃんが鎧を脱いだ「マモッテルン」の後ろに瞬間移動する、幸いにもスタンが発動した事でセッキーへの攻撃はキャンセルされた
まぁちゃんが連続スキルを当てていく、次々とスタンを発動させてなんとかアサギの復活までは繋げるつもりだ、しかしシャドウのスキルは手数が多いとは言え限界はある
「せっちゃん!スタン終わり、次からは回避スキルだけどそんなに数ないから回復お願いね!」
「わかったわ!」
身軽になった「マモッテルン」は先ほどアサギに攻撃をしていた時よりも速い、先ほどまでの速度なら余裕で避けれていただろう攻撃もここまで速くなっていると全てを躱すのは難しそうだ
(でも大丈夫、まだ回避スキルはあるし、それに動きが見える!稽古のお陰だ!)
ダンチョーとの稽古でまぁちゃんはまず相手の攻撃を躱す事を学んだ
アサギがいるからまずは火力の出し方からじゃないのか、とダンチョーに聞いたがアサギが動けなくなった時に戦線を維持するのはお前の仕事だ、と言われた
なるほど、とまぁちゃんは納得した、あれだけ上手いアサギが動けなくなる姿は想像できなかったが何があるかはわからない、それにかなりの数に囲まれてしまった時にアサギの負担を少しでも減らせるなら、と思うとやる気もでてきた
(怖いけど大丈夫、さっき後ろから攻撃を見てた、あっちゃんのスタンが解けるまでは私が!)
上からの振り下ろしをバックステップで躱しすぐに前に出て攻撃を加える、マーリンは今は攻撃に参加していないのでヘイト値が上がる事はないのでそちらを気にする必要はないがすべての攻撃を躱せない以上セッキーから回復魔法が飛んでくる、それはセッキーのヘイト値を上昇させてしまう
回避スキルやスタンをCTが明け次第発動させていくがそれでもどんどんと回復が間に合わなくなりそうになる
そうなるとセッキーからの回復が多くなっていくので少しずつターゲットがまぁちゃんからセッキーの方へ向く時間が増えていく、なんとかその時間をスタンでやり過ごしてはいるのだが・・・
「お待たせぇ!!!」
「マモッテルン」の背中にアサギが突撃してきて身軽になった「マモッテルン」は吹っ飛ばされた
「あっちゃん!」
「ごめんね、まぁちゃん!かっこよかったよ!!」
「次からはあの爆発は避けるようにしましょうね、アサギ」
「そうだね、セッキー!まずはこいつに30秒もスタンさせられた恨みを晴らさないとね!」
吹っ飛んだ「マモッテルン」はまだアサギの方へヘイトを向けていない、「マモッテルン」は立ち上がるとセッキーに向かい攻撃を加えようとする、アサギもそれはわかっているのでセッキーと「マモッテルン」の間を陣取った
「いつまで私を無視できるかな!?」
アサギはスキルを連続で使用する、斬る、盾で殴る、体当たりをする、光の腕で掴む、挑発をする、そして
「スタン中暇だったのでスキル取っておきました!!」
そう言うとアサギは腕を伸ばし剣を垂直に構える、構えられた剣は光を集め球体になり・・・
「エクスゥ・・・カリバー!!!」
アサギが勢いよく腕を振りかぶりそのまま振り下ろすと剣の先から球体が「マモッテルン」の顔面に向かって飛んでいき勢いよく当たった
「でたななんでもエクスカリバー!」
今回の技も全くエクスカリバーと関係はない事だけは伝えておく
「まだ終わらないよ!!」
盾で殴ったり、光の腕で掴んだりすると相手は硬直をする、その時間内にヘイトを上昇させる効果を持つスキルを使ったり足を踏んだりしていたアサギは再度セッキーから「マモッテルン」のヘイトをもぎ取る事に成功した
しかしそれでアサギの攻撃は終わらない、ダンチョーから教わった攻撃はスキルを使い切ってからどう攻撃をするか、という事もある
それを連続で繰り返す事によりアサギの攻撃は止まらない、スキルを全て使い全てがCTになっても単調な攻撃にはならないで相手のHPを削っていく、そしてそのうちにスキルのCTが明ける、また最初からスキルを使った攻撃を繰り返す、相手の攻撃を止める事も忘れない、むしろ攻撃を誘い隙を作り更に攻撃を加える
そして「マモッテルン」のHPは0になり光となって消えた
「あー・・・焦ったー・・・」
「スキル取ってて何が焦ったー、だよ」
「あはは、いや、全然身体動かないからちょうどいいかな、って」
「ふー・・・私の方が焦ったよ・・・」
「まぁちゃんおつかれさま、凄かったわよ」
「ほんとほんと!まぁちゃんかっこよかった!」
「いやー・・・攻撃を目の前で見るって怖いんだね、よくあっちゃんはあれを平気で受けたりできるね・・・」
「え?んー・・・ダンチョーの方が怖くない?」
「あー・・・それは確かに・・・だから私も動けたのかな」
「あの筋肉だしなぁ、ダンチョーは、そりゃ怖いよなぁ・・・」
「ほんとね、私には絶対無理だわ、あの人の攻撃を受けたり避けるなんて事は」
「んー・・・でもあれがあったから今やられなくて済んだのよね・・・よし、時間があったらまた頼もう!」
「うんうん!今の「マモッテルン」より速く攻撃してくれるように頼んでみようね!」
「え?ダンチョーってそんなに速く動けるの!?」
「え?まぁちゃんの相手してる時大分手加減してるよ?」
「あー・・・うん・・・頑張る・・・」
「うん!私も一緒に頑張るね!!!」
「じゃあさらにボコボコになるのも決まったしそろそろ階段上がって2階に行きますか」
「「おおー!」」
「よくなーーーい!!!」
微妙な表情のまぁちゃんを何とか宥め4人は2階へを足を踏み入れる、そこは1階と似たような造りであったのだが・・・
「敵少ないな」
「そうね、さっきより全然少ない・・・ハイディングかしら?」
「ううん、全然隠れてるモブいないよ」
「そっかー、じゃあさくさく進めるね、とりあえずは前の奴からだね」
アサギが目の前に1人でいる邪教徒を光の腕で掴み手前に引く、するとその1体が元居た場所に「邪教徒が呼び出し者」が現れた
「あー、なるほど、あっちに光の腕使えばよかった」
「邪教徒が呼び出し者」は遠距離攻撃なのでその場から動かない、仕方がないのでアサギはヘイトを維持しながら「邪教徒が呼び出し者」から見えない所に移動し相手がこちらに近づいてくるように仕向けた
「つまりここのモブは全部「邪教徒が呼び出し者」を呼んでくるって事?召喚士なんてクラスあったっけ?」
「いや、精霊を呼び出すのが3次にあるけど召喚って訳じゃないからなぁ・・・つかこいつ喋んのか?」
「そういやイベントのは喋ったね、でももし喋るなら周り全部来るよね」
「そうね、ここのは喋るAIじゃあないみたいね」
イベントの時は多少手を焼いたモブではあるが所詮は1度倒した敵である、特に問題はなかったので4人はさくさくと倒し3階へ続く道を探した
「さて、マップ的にはここの奥に階段がある、しかしここの扉には鍵がかかっている、行ってない部屋は
3つで全部にネームドの中ボスがいる、どいつかが持っているんだろうな」
「そうなるでしょうね、えーっと「邪教徒隠密隊隊長」「邪教徒急襲隊隊長」「邪教徒魔術隊隊長」か、シーフタイプ、ソードマンタイプ、マジシャンタイプみたいね」
「同じ部屋にボス以外が2人で同じタイプね、あっちゃんにはボスと雑魚1体ずつ持ってもらって残った方を倒してから2人目倒して最後がボスかな」
「それだねー」
「あー、まてアサギ、ヘイトは取ってほしいが持つのはボスだけでいいぞ」
「え?マーリン持つの?」
「違う、今までの足止めスキルだとレベル差で結構弾かれてたけど新しいの覚えたからな、マジシャンタイプはどうにもならんが他の2体は結構な時間止められるぞ」
「なるほど!じゃあ右にまぁちゃんで左を足止め、私はボスでいいかな?よし、じゃあいくよー!」
「「「おおー!!!」」」
「まずはシーフタイプ!よろしくおねがいしまーす!!」
アサギはまた挨拶しながら体当たりを発動させる、相手はシーフタイプなのでかなりの距離吹っ飛んでいく、隊長は吹っ飛んでいるがその間にも他の2人はアサギに近づいてくる、しかし右の敵にはまぁちゃんが瞬間移動で後ろに回り込み連続スキルを叩き込み、左の敵はマーリンが足元から蔦のようなものをからみつけ動けなくさせるのでアサギに攻撃を当てる事はできなかった
吹っ飛んだ隊長に向けアサギは光の腕を使い手元に強制的に引き寄せる、先ほどの「マモッテルン」にも当てた連続攻撃を行いヘイトを自分へと固定させる
その間に右の敵はまぁちゃんとマーリンの攻撃により光となった、左の敵は動けてはいないがアサギが挑発スキルを発動させているので足元の蔦が消えたとしてもマーリンへ攻撃を加える事はない、こちらも時間の問題だろう
「流石にシーフタイプのボスだと全部の攻撃を盾で受けるのは難しいなー」
アサギのスキルには盾で相手の攻撃を受ける事が発動条件のスキルもあるのでなるべく盾で受けていきたい所ではあるが相手次第ではなかなかそれも難しい、練習しなきゃなー、と考えていると
「あー・・・ダンチョーが私に避けるのを練習させたのってあっちゃんの練習相手にする為なのかな?」
「なるほどね、アサギの相手をまぁちゃんがやる為にまず避ける練習をさせたってのは確かに考えられるわね」
「確かにな、攻撃はスキル使えばなんとかなるけどまぁちゃんが避けれないんじゃあアサギがスタン1発食らわせればそれでやられちまうからな、今後お互い強くなっていくんだし練習相手としては最適だよな」
「そっかー、ダンチョーもフクフ副団長も忙しい時もあるだろうし確かにまぁちゃんと稽古できるならお互いの時間合わせればいいんだもんね」
「相変わらず色々考えてるのね、ダンチョーは」
「ほんとほんと、凄い筋肉だぜ」
そんな会話をしながらもそこまで強くない「隠密隊隊長」を光に変える、ドロップを確認するが次の階段へ行く前の鍵はでてこない
「じゃあ次はソードマンタイプいくよー」
アサギ達は順調に「邪教徒の隠れ家」を攻略していく、しかしまだあいつがでてきていない
アサギ達は絶対に俺が殺すと叫んだ男がまだ出てきていないのだ
家の中で戦闘すりゃ普通全員気づくと思いますけど一応ゲームなので(白目




