聖騎士と物足らない敵
時間が欲しい!もっと書きたい!
マーリンは安堵していた
武器がでたのである
骨の迷宮にはいってから何周目になっただろうか
イベントを明日に控えそろそろ準備もあるから今日はやめようか、などと話だそうかと言ったタイミングでナイットンがマーリンの装備できMNDが上がる両手杖をドロップしたのである
マーリンの喜びようといったら大層なもので一緒に骨の迷宮をクリアしたアサギもセッキーもとても嬉しかった
「いや、ほんとありがとう!!やっとでたー!やったぜー!!」
「ほんとギリギリって感じね、でもこれでマーリンの火力も上がるしパーティとしては良い事よ」
「はー・・・杖の先端のドクロが光ってる・・・かっこいい・・・」
出たばかりの杖を早速装備したマーリンにアサギの目が奪われる
「お、流石アサギ、わかってるな!ほんとかっこいいよなー、俺ずっとこの形状使っていこうかな」
「形状変更できていいよね、パラディンロードの剣はできないからちょっと残念」
「しょうがないわよ、それを持ってる事がパラディンロードの証みたいなものらしいしね、逆に言えば弱い武器をパラディンロードの剣の形状にできてもきっと困るわ、そうじゃなくてもNPCからしたらなんであんな薄い服で戦闘にでるのか意味がわからん!とかなってるらしいわよ」
「ああ、そりゃそうだろうな、金属鎧の防御力なのに形状はただの服とかNPCからしたらわけわかんねーだろうな」
「一応外遊人の能力の1つって事で納得してるらしいけどね、大分混乱はしてるみたいだけど」
「私はもっとゴツゴツした鎧が着たいな!」
「んー、多分もっと先の方に行ったらアサギが気に入るような鎧もでてくるわよ、さ、帰って消耗品の補充しましょ、イベントは明日なのよ」
「「はーい!」」
骨の迷宮から出てイベントに向け準備を整える3人
ログアウトをして布団にはいったがイベントへの期待やら装備を更新できた事への興奮やら喜びやらで3人は3人ともなかなか寝付けずに夜は更けていく
『我が子らよ、呼びかけに応じて召喚されし外遊人よ、我が声が聞こえるか?我は光の神ヒッカリー、予言を与えるものである』
次の日ギリギリまで骨の迷宮でレベル上げをしているアサギ達はナイットンを倒し終わり骨の迷宮のCTが明けるのを待っている時にアナウンスを聞いた
『我が子らよ、外遊人よ、もうすぐだ、もうすぐ闇が王都に向かって進軍を開始する時間だ!!』
「おっと、もうそろそろか、結局なにが王都に来るのかわかんなかったな」
「そうね、闇としか言ってないものね、さていつもならこの後GMからのアナウンスがあるはずだけど」
『本日も「まおクエ」をプレイしていただきましてありがとうございます、GMのゲマスです、皆様今から30分後にストーリーミッション「王都襲来」が開始されます、準備はよろしいでしょうか?敵の出撃位置は王都の東、西、南の草原地域となっております、イベント中はHPが0になってもペナルティが発動しませんがイベントが終わり次第ペナルティが付きますのでご了承ください、なお、何度0になっても1回分のみが付く事になっております、イベントを開催する場所が王都周辺なのでPK機能は発動しません、重ねてご了承ください、出現位置で適正レベルが変わっております、東、西、南の順に強くなっていきますのでご自分のレベル帯に合わせた場所でイベントをお楽しみください、GMゲマスでした』
「あー、全部の場所が同じような敵って訳じゃないのかな?」
「どうでしょうね、同じだけどレベルが違うのかもしれないわ、私たちの適正は南だから王都南に行くわよ」
「「おおー!!」」
アサギは興奮していた
いや、アサギだけではない、王都の南に集まったプレイヤー全てが興奮しているのであろう
いつもののんびりとした空気と変わって異様な空気がそこには流れていた
「結構ここ人いるね」
「そうね、皆結構頑張ってレベル上げしてるのね、もう少し少ないかと思ってたわ」
「んー・・・皆形状変更してるのかな、インスタントダンジョン産っぽい武器持ってる奴いねぇな」
「んー、確かにあんまり持ってなさそうだね~、でもなんでセッキーは形状変えちゃったの?あんなにかっこよかったのに」
「ええ・・・骨だけの前腕なんかいやよ、しかも手が光ってるのよ!?どこがかっこいいのよ」
「「全部」」
「はぁ・・・ほんとそこら辺の趣味は理解できないわ」
ちなみにアサギの装備している片手剣は鍔の所が肋骨のようになっていて握りの下、つまり柄頭にドクロついていた
ちなみに両方とも淡くオレンジに光っている
「そうかー?ここに移動してくる間にも大分聞かれたじゃんか、そのかっこいい杖は誰が作ったんですか?ってダンジョン産だって教えてたら教会のクエストがめんどくさそうだから放置してたけどやっぱりやろー、って結構な数の奴らが言ってたぞ?」
「好きな人はほんと好きなのね、骨って・・・」
『我が子らよ、外遊人よ、準備はいいか、闇がかなり近づいている、もう間もなく進軍してくるぞ!』
「あれ、右上にタイマーがでたよ、あと5分だってさ」
「ええ、あと5分ではじまるみたいね、こんだけ人がいるから作戦は特にいらなさそうね、他の人とは適当にばらけて戦いましょ、多分少しすればボスも沸くでしょうからなるべくそれを狙いたいわね」
「ボスか・・・ガオーンじゃあ・・・ない、よな・・・?」
「んー・・・多分その可能性は低いとは思うけど・・・」
「大丈夫だよ!セッキー!マーリン!あの頃より皆強くなったんだから!簡単にはやられないよ!むしろかかって来い!って感じだよ!!」
「おお、おお、うちの聖騎士様は本当に頼りになるな」
「そうね、じゃあガオーンが来るかもしれないってだけ頭にいれておきましょう、もうすぐ開始だからもうちょっとだけ前に行きましょう」
「「了解!」」
『我が子らよ!外遊人よ!闇が現れたぞ!!王都へ近づけさせるな!!』
「おっとはじまったか!うっわ、すっげぇ数だな!?前に出すぎたか?」
カウントダウンが終わった瞬間目の前には緑色の小さなモブが現れた
「ゴブリンね、まずは小手調べって感じだろうけど数が多すぎるわ、アサギ、少しずつ崩していきたいからちょっとずつ呼んで」
了解とアサギは首肯し1番近いゴブリンに挑発スキルを使いヘイトをアサギに向けさせる
「うわ、やっぱこんだけいるとリンクしちゃうね!」
アクティブモンスターは自分の索敵範囲にいるモブがプレイヤーにヘイトを向ける際に同時にヘイトを向けるようになっていた
普段ならフィールドではそこまで密集して配置されていない為そこまで驚異的ではないゴブリンだからイベントではかなりの数が密集して配置された為にアサギであってもこの数を同時に相手するのはなかなか難しいだろう
「とりあえず炎の壁でHP削る!ヘイト取っちゃうけどアサギなんとかしてくれ!」
そう言いながらマーリンはこちらに向かって走ってくるゴブリンの前に炎の壁を出した
ゴブリンは目の前に突然と現れた炎の壁に一瞬躊躇するも自身が焼かれることを厭わずにマーリンに向け突進してくる
「任せて!固めるから範囲お願いね!」
マーリンの方へ向かうゴブリンの目の前にアサギが躍り出る、しかしそれだけではゴブリンはターゲットをアサギの方へと向ける事はない、だからアサギは自身に敵意を向けさせる為に盾を剣で叩き大きな音を鳴らす
「いいよ、マーリン!」
「よっしゃ、焼け死ねー!!」
ナイットンの呼ぶ影から出る骨を1撃で倒し切る炎の嵐はゴブリン程度にはもったいないほどの威力である
炎の嵐の中にいたゴブリンはすべてが灰になった
「壁もいらなそうね、アサギがちょっかいだしてマーリンが嵐で殲滅で充分そうよ、さ、稼ぎましょ」
「「おお!!」」
アサギ達は順調にゴブリンの数を減らしていく
最初に湧き出てきたゴブリンの数が結構減ったかな?と思えるくらいになったその時
『我が子らよ!外遊人よ!どうやらまだまだ次がくるみたいだぞ!』
その声と同時に湧き出る影、今度は先ほどよりも大きいが数は先ほどよりは少ないみたいだ
「あれはオークね、んー・・・流石に嵐だけじゃ倒し切れないかな?壁にあててから嵐の方がよさそうね」
セッキーがそう言うとアサギは先ほどの最初と同じように挑発スキルを使う
炎の壁は詠唱時間が長くないので今回も同じように壁にオーガを当てる事ができた、間髪入れずにアサギが敵意をマーリンから奪い取る
「流石アサギ、やっぱうまいわ」
賞賛の声とともに炎の嵐がアサギの目の前で燃え盛る
「くふふふふ、マーリンの火力もなかなかのものだよ!」
「そうね、壁で削ればオークも1発かしら?ちょっと残ったとしてもアサギが倒せるわね」
少しだけHPが残った程度のオークにやられるアサギではない
骨の迷宮産でレガシー級の片手剣はオークのHPを易々と奪っていった
「んー、ほんとただの挨拶程度のイベントなのかもね、はやくボスがでないかしら、でもこの人数だったらたとえガオーンでも多分すぐやられちゃうわね」
「あー・・・それはなんか、ちょっといやかなー」
「わかるぜ、できればあいつとは俺達3人で戦って倒したいよな」
うんうんと首を限界まで縦に振るアサギ
「そうね、私も同じ意見よ、アサギを泣かせたんだから私達で倒さないとね」
「セッキーまたそれ言うのー?」
「ふふふ、何度でも言うわよ、ほらほら、アサギ、オークを集める手が止まってるわよ、初手がマーリンだと死んじゃうかもしれないでしょ、テキパキ動く!」
「うーむ・・・はーい」
ゴブリンとオークは王都南に集結していたプレイヤーの手によりどんどんとその数を減らしていく
(セッキーの言うようにNPCにプレイヤーを信用してもらう為だけのイベントなのかな、はっきり言って全然歯ごたえがないな・・・)
アサギがそんな事を考えるのも仕方のない事なのかもしれない
最初のゴブリンが湧いてから20分は経ったであろうか、今ではもうゴブリンもオークもほとんど残っていない、集まった人数が多すぎたのかプレイヤーがレベルをあげすぎたのか、これではイベントとしてどうなのだろう?南に集結したプレイヤーの多くもそんな風に感じていた
『ほほう、私が用意した亜人どもをこんなに早くやっつけるとはどうやら外遊人というのは思ったよりもできる奴らなのだな、貴様等外遊人は死ぬ事がないという、だからどうせ弱い奴ばかりなんだろうと思っていたが・・・どうやらこちらの考え違いだったらしい、ではこれはどうかな?精々頑張ってくれたまえ』
「今の声光の神でもGMさんでもないよ!?誰!?」
「わかんないけどなんか楽しくなってきたんじゃねぇのか!?」
「そうね、ちょっと物足らないと思ってた所だもの、おかわりは大歓迎よ!さっきより強いのがでるらしいわ、気合いれていくわよ!!」
「「おおーーー!!」」
響き渡るいつもと違う声は3人には、いや、王都周辺に集結したすべてのプレイヤーに歓喜と緊張をもたらせた
次はどんな敵がでるのかとわくわくしながら盾を前に出しいつでもこい!と構えたアサギ達の前に新たな敵が湧きだしてきたのであった




