魔法使いの焦燥と聖騎士の苦悩
キャラ設定も頭の中で爆発しそうです
マーリンは焦っていた
武器が出ないのである
もう骨の迷宮に入り始めて何日目になっただろうか
イベントは明後日である、土曜日は休みなので丸一日以上あるにはあるが骨の迷宮は1人でクリアできるものではない、アサギやセッキーにも都合はあるだろうしなにより疲労が溜まるとフルダイブ故にミスが増えてくる
もう何周目なのかすら覚えてない骨の迷宮の敵を全滅させナイットンを倒しため息をつく
「でない・・・全然でない!!!ロイヤルマスターもでない!!」
あれから1度もロイヤルマスターはでていない
だが武器は何度かでた、被った武器はでていないが3人とも使えない武器は何個か出た
ナイットンからドロップする武器は譲渡する事ができないのでプレイヤーに売る事はできないがこのゲームでは外見を他の同種の武器に移し替える事ができるので外見を抽出して売る事に決めた
ナイットンからドロップする武器、それに骨の迷宮の他のモブからドロップする武器は形状に骨が使われているので名前を†で覆っているタイプの人間には高く売れそうである
しかもナイットンからドロップする武器は若干光っている部分がありそれもまた厨2心をくすぐらせる
マーリンがこの形状をもし骨の迷宮の事を知らないままに見つけていたら多分言い値で買っていただろう
マーリンが焦る理由は時間以外にもまだある
アサギの武器はでているのだ、しかもナイトマスターの魂もドロップしていて強化を済ませてある
あと自分一人でていない、レベル上げ的には競合する相手がいないのでまだ美味しいとは思える範囲ではあるがやはり若干効率がさがってきた感は否めない
一応初回の時と比べてマーリンも武器を更新できてはいるのだがそれは中ボスのようなモブが落としたハイレア装備、ナイットンが落とすレガシー装備と比べるとステータス補正も微妙な数値ではあるしなにより骨が光っていない
マーリンは強さよりもそこが気になっていた
ちなみにこのゲームではアイテムのレア度は6種類、希少な方からミシック、ユニーク、レガシー、ハイレア、レア、コモンの順番で骨の迷宮でドロップするもので1番希少なものはレガシーだ
「ああ!俺もはやく光る骨の杖が欲しい!!俺が持ってるこの杖と形状は同じだから多分頭蓋骨の目が光るんだぜ!!ああ、欲しい!!!」
「それはかっこいいよね~、私もちょっと憧れるな~」
「聖騎士オタクの割にそっち系も好きよね、アサギは」
「えー、だってかっこよくない?セッキーはそうは思わないの!?」
「あんまり思わないわね」
「「ええーー!!!」」
2人の声がハモる
「はいはい、そんな事よりイベントは明後日よ、早く周回してマーリンの杖出さないとね」
「うう、すまんな・・・リアルラックがない俺のせいでこんなに周回させる事になって・・・」
「大丈夫だよ、マーリン、どうせ皆の武器が出てたとしてもここの周回は続けてたと思うし!」
「そうよ、ここ以外じゃアサギは本気の武器は使えないしスキルにだって制限をかけなきゃいけないんだからここ以外は考えられないわ、だからあんまり気にしないでいいの、それよりさっさと敵を倒しなさい」
「お、おお、わかった、頑張る」
「ええ、それでいいのよ、さ、アサギ、前に進むわよ」
「はーい!」
その後のナイットン戦が終わった後にはまたため息のみがあたりに響き渡った
「そろそろ今日はこれで終わるか、明日もまたよろしくな」
「そうね、そろそろ良い時間ね、私もそろそろ寝ようかしら、アサギは?」
「んー・・・私はちょっと教会で稽古していこうかな、ダンチョーに聞いてもらいたいスキルの使い方があるんだよね」
「そう、あんまり遅くならないようにね、明日は土曜日だしお昼くらいから始めるってことでいいかしら?」
「ああ!それで頼む!」
「はーい、じゃああんまり夜更かししないでおくねー」
「じゃあおやすみ」
「「おやすみなさい」」
アサギは1人ログアウトせず土の教会に向かう
「ダンチョー団長こんにちわー!」
「おう、アサギか、他の2人はいないのか、奥のいつもんとこで茶でも飲みながら待っててくれ、すぐ向かう」
「はーい!」
アサギが教会の奥へ向かう
団長はプレイヤーに何かを渡しているようだった
アサギが騎士団の人間にお茶をいれてもらいそれを飲んでいるとダンチョーが近づいてきた
「ダンチョー団長、忙しいんですか?それなら稽古はまた今度で大丈夫なんですけど」
「あー、いや、かまわねぇよ、どうせお前ら以外は許可証を渡すだけで終わりだからな」
アサギがよくわからないと首をかしげる
「ああ、そうだな、この前セッキーに骨の迷宮の情報を流していいか聞かれたのは覚えてるか?で、セッキーは外遊人にちゃんと俺が言った通りに伝えてくれたらしくてな、お陰で教会でやらないといけない仕事が大分減って楽になってんだよ、俺は、で、それのお礼に骨の迷宮の許可証を渡してたんだ、いやー、我ながら上手く行ったぜ、俺達があちこち行かなくても外遊人は許可証を求めてわんさか来るからな、王都にモブがわんさかくるって前に少しでも仕事が減らせて助かってるぜ」
セッキーは情報を流した
掲示板に直接流したのではなく墓場の前で話しかけられたプレイヤーにダンチョーに言われた通りに伝えた
しかし2つほど付け加えた部分がある
1つ目はインスタンスダンジョンだから別に他の人に伝えてもいいという事
2つ目はこの骨の迷宮のバックストーリーをNPCには伝えない方がいいという事
もしこの骨の迷宮の成り立ちがNPCに知られたら骨の迷宮は完全に教会の秘匿となりもしかしたら誰も入れなくなるかもしれない、との脅し文句も添えた
どんなストーリーなんだ?とそのプレイヤーに聞かれたがそれは迷宮をクリアしてからのお楽しみよ、とだけ答えた
その後の掲示板の動向を鑑みるにどうやらこのプレイヤーは骨の迷宮をクリアし本を入手できたらしい
情報を流してから1日しか経ってないから大分頑張って教会のクエストをこなしたのだろう
ちゃんと掲示板に注意事項としてストーリーをNPCに知らせない事、と書いてあった
ダンジョンが1つ潰される可能性があると言われては皆気を付けてくれるだろう
しかし中には他人を考えない奴らもいるのでさっさと武器を全員分だして先に進みたい所だ、とセッキーは言っていた
「ああ、なるほど、あれ?でも奥まで入ってこれるって事は稽古を受ける外遊人は増えてないんですか?」
「あん?ここで稽古を受けてる外遊人なんかお前らしかいねぇよ」
「え?そうなんですか?だってスキルを覚えただけじゃ全然強くならないのに!?」
「ああ、それは俺が教えたからアサギはそう思うだけだろ?他の連中は強くなってると思ってるんだろ、まあ、実際使えるスキルが増えたら強くはなってるしな、だがそれだけじゃあ足らないだけだ」
「はい、団長が教えてくれて本当に1つ1つのスキルがより強くなったと思います、でもなんで教えてあげないんです?」
「あーん?なんで俺が親切に自分からスキルはこう使った方いいぞ、って教えなくちゃいけないんだ?大して気に入ってもねぇ奴にかける時間なんか俺にはねぇよ、土の聖騎士団の団長だぞ?こう見えて忙しい
んだ」
「あ、ありがとうございます!!」
「おう、お前には聖騎士道を感じたからな、そして俺の目に狂いはなかったようだ、ハーッハッハ!」
ありがたい・・・たまたま見かけて話しかけた人がダンチョーでよかった、アサギはそう思った、しかしそれだけに隠し事をしている自分の事を少し許せなくなってきた
「あ・・・あの・・・ダンチョー団長・・・」
「あーん?なんだ?」
「いや、あのですね・・・」
「んー?なんだかわかんねぇけど稽古しにきたんだろ、ほら、いくぞ!ダッシュだ!」
「あ、は、はい!!」
(まったくなんつう顔をしやがる、何を隠してるかはしらねぇが・・・ま身体動かしてりゃ気がまぎれるだろ)
ダンチョーはこのタイミングでアサギが隠し事を打ち明ける事に対して待ったをかけた
それはダンチョーの気遣いであり優しさでもある
(ま、多少でも言いたくなったってんなら俺も大分信用されてきたって事かね、フクフが調べてもどこの教会も尻尾を出さないんだから待つしかないんだろうけどな、あんな表情されたんじゃなぁ・・・)
先にいくアサギを追いかけダンチョーは稽古場に入る
中にいるアサギは相変わらずここは自分の庭だと言わんばかりにさっさと用意をして待っていた
「で?今日は何の稽古がしたいんだ?」
「あ、スキルの連携を考えたんで見てほしいんです!」
「そうか、じゃあとりあえずウォーミングアップに打ち合いしてからだな、いくぞ、アサギ」
「はい!よろしくおねがいします!」
今日もまたアサギがダンチョーに倒される時間が始まったのである




