聖騎士とあり得た未来の戦い
睡眠時間を生贄に小説をドロー
ボス部屋の近くまで来てもセッキーは上機嫌のままだった
しかしアサギは少しずつ顔を強張らせてきている
「おい、アサギ、どうした?いつもと動きが違うぞ?緊張してるのか?」
いつもアサギを後ろから見ているマーリンとセッキーである
気付いたマーリンと気付いてないセッキーの差は武器が確定で落ちると言う事に浮かれているか、そうでないかだろう
「あれか?やっぱり気のせいでいつもの感じがしてきたとかか?別にロイヤルナイトがいなくても武器だせばいいんだから気にするなよ」
途端にセッキーが驚いたような顔で
「あ、ごめんね、アサギ、私もちょっと浮かれちゃったわね、いいのよ、別に、いてもいなくてもね、それにしてもマーリンがそんな気を使うような事言えるのね、お陰で浮かれてるのが落ち着いたわ」
「あ、ううん、違うの、ボス部屋もう少しじゃない?多分、いや、ほぼ確実にいるんだけどね・・・」
「うん?じゃあどうしたの?」
「いや・・・こいつまじで強い、勝てるかな・・・流石にガオーンみたいに絶対無理!とまでではないんだけどね」
「なるほど、んー・・・ごめんね?プレッシャーかけちゃったかな?いいのよ、これが最後じゃないんだから!やられたら何が足りないのか考えて補っていけばいいんだから」
「そーだぞアサギ、ちょっとさっきまでのセッキーはあれだったけどゲームの世界なんて負けてもいいんだからな、いつも通り行けばいいって」
セッキーはあれって何よ、と言い掛けたが先ほどまでの自分に反省しているのかマーリンを睨むだけで終わった
「それにガオーン戦から強くなったうちの聖騎士様が勝てないかも、って相手も楽しみだしな!」
「そうね、楽しまないとね、ね!アサギ!」
「うん、そうだね!まだまだ終わらないしね!よーし、頑張ろう!!」
アサギの緊張は溶けたようだ、しかし後ろの2人は顔には出さないようにはしているが緊張しながらアサギの背中を見ていた
野良を数回経験してきた2人からしたらこのパーティーは強い、流石に同レベルが6人で組んだパーティーには勝てるとは思わないが同じ数ならわりと上のレベルとでもいい勝負ができると思っている
このパーティーの強さの根幹はアサギだ
勿論装備の効果もあるが色々な人達とやっている稽古などに培われたアサギの耐久力、ヘイト管理
これがあるからマーリンは火力を最大限に出せる
マーリンにヘイトが飛ぶ事がほぼ無く尚且つアサギが打たれ強い事いのでセッキーは攻撃にも参加する事ができた、これも火力が出ている理由の一つだ
全てはアサギが敵を完全に抑え耐え切っているからこその火力
しかしそのアサギが抑えきれない敵が来たら?
その答えはすでに出ていた
ガオーンという強敵に3人は嫌というほど教わっている
アサギが勝てないかも知れないと言う相手
格上に一撃でやられ悔しくて泣いていたアサギ
2人はもう2度とアサギを泣かせたくなかった
強い敵と戦うのは楽しい、苦労してきた敵を倒せるようになった喜びはひとしおだろう
だがあの時2人は何も出来なかった
アサギの悔しさを分かち合う事すらも出来なかったのだ
負けた事よりその方が悔しかった
いつかまたまだ見ぬ強敵が3人の前に立ちはだかるだろう
その時にアサギと一緒に悔しがる事が出来るのだろうか
アサギにもう少しだったね、次はいけると言えるのだろうか
その答えがもうすぐ出るような気がする
しかし負ける訳には、アサギを泣かす訳にはいかない
2人はふとアサギの背中を見つめていた視線を外しお互いを見る
どうやらお互い考えている事は同じらしい
先ほどとは違いなんの緊張も感じさせなくなった背中を見つめ直しお互いの拳を合わせた
ボス部屋の前につきアサギは1人先行して中を確認する
少し後ろの方にいる2人の所に戻り言った
「頭の上にロイヤルナイトって書いてあったよ、「呪いに阻まれた未来ロイヤルナイト、ナイットン」って」
「凄いわね、本当に出てたんだ、で今は感じてたピリピリ感?あるの?」
「うん、ある、結構強そう」
「そんな強そうな相手を前に笑えるんだからうちの聖騎士様も相当強いな」
「そうね、まあ、気持ちはわかるけどね、アサギ相当嬉しそうよ?」
「え、そうかな?まずいまずい、最低限緊張感は持たないとね、ダンチョーが言ってた」
そう言うながらもアサギの口角は上がりっぱなしだ
「すー!はー!すー!はー!よし、ちょっと落ち着いた、えっととりあえずナイトマスターとの違いとそれについての考察ね、まず武器だけど槍と腰に剣を二本差してたよ、いつもは25パー削ったら増援と武器交換だったね、最悪増援が3回くると思っててね、最初の増援きた段階でスキル回るかどうか判断するからもしかしたら2回目はヘイト取りきれないかも、使ったら3回目も間に合うと思うからそのつもりで、体感で25パーまでの時間計るからなるべく同じくらいの速度でダメージ与えてね、セッキーは最初は攻撃に参加しないでいいよ、私のHPの減り方みて判断するね、ああ、セッキーのダメージは大体理解してるから多分それで25パーの時間を再計算できるから安心して、ただ問題は槍はいいとして二刀流?二剣流?かな、あんまり相手した事ないのからね、鞘の長さが違ってるように見えなかったから多分両方同じ長さかな?武器を落とされたりとかはないとは思うけど私も攻撃頻度少し下がるかも、そしたら言うから火力落としてね、もしかしたら50パーと75パーで、ううん、可能性だけなら25パーの時もランダムターゲットあるかもだからそこはいつも通りで、相手のVITが上がってる事も考えたら足かけるより突っ込んで転ばせるか間に入る方がいいかな、出来そうならやるね、あとなんかある?」
「一応同じナイットンなんだよな?クラス変わったからって身長変わってたりは?長さが違うと混乱する、って言うぜ?」
「なるほど、それは考えてなかったな、ありがと、違和感があったらその可能性があるね」
「私からはないかな、とりあえず様子見しながら行けそうなら火力貢献ね、了解」
「俺は増援に範囲魔法ぶつける、あとはいつも通りだな、了解」
「あ、アサギ料理食べた?」
「うん、ちょっと前のモブの所で食べたよ、どんくらい変わるのか知りたかったから」
「ああ、俺も飯食っとこ」
「よし、じゃあ支援撒くわよ、・・・よし!準備完了!」
「ありがと、セッキー、じゃあまずはいつも通りにヘイト固定からするね、じゃあ頑張ろう!」
「「おおー!」」
アサギは自分にかけられた支援魔法を確認し、剣に光魔法を付与しロイヤルナイト、ナイットンの前に踊り出た!
「よろしくぅー!!のまず1発!!」
アサギの最初は基本ぶちかましからだ
相手のVITを確認する意味もあるのと直接移動が少し速くなるので多用している
「んー、ちょっと重くなってるね、でもそこまでVIT高くないかな」
ナイットンの左側を2人に見せるいつもの位置についた
「槍の攻撃はー・・・うん、強くなったけどまだ止められるね、ヘイト管理は大丈夫かな、若干早くなってる」
大振りでの攻撃を相手が行う前に時には盾で、時には身体を捻じ込ませ止めていく
相手の突き攻撃は盾を斜めに当てる事で滑らせ、相手の姿勢を崩しながらこちらの攻撃を当てていく
たまに少し距離を開け、相手の前に出る攻撃を誘導し来た所で膝頭を踵で蹴り付ける
いつものナイットン相手の時と同じ、危なさを感じさせないアサギの行動に2人は安堵する
「多分そろそろ25パー削るよ」
その言葉に2人は再度気を引き締めた
「範囲魔法詠唱開始」
マーリンが行動を口に出す
その時いつもの黒い影がアサギの足元に広がった
「いつもより長いわ!」
セッキーの声にアサギがちらりと横目で確認をする
「3、2、1・・・魔法発動」
いつもの増援ならマーリンの詠唱時間はかなりかかるが火力は抜群の魔法1発で広がった影の範囲全てを蹴散らせる
しかし今回は足元の影がいつも以上に広がりそのどこかからランダムで出てくる性質の増援を一匹討ち漏らしてしまった
「捕まえる、その後処理お願い」
アサギの剣の先から手のような光が伸び撃ち漏らした増援を捕獲、手元に引き寄せた
その後マーリンが魔法で攻撃し
「増援全滅」
「了解、大体5パーくらい削ったかな、次まであと20パー、っと槍捨てた、少し離れて!」
「ーーー!!!」
やはりナイットンは喋れないようだ
しかし気合は十分のようで声無き咆哮にのった衝撃がアサギに襲いかかる
「くっ!!いつもより重い!」
少し後ずさるアサギにナイットンが襲いかかる
右か、左か、はたまた両方からか、一本ずつなのか、二本同時なのか、突いてくるのか、アサギはナイットンがどう来ても見えるようにと更に後ろに飛んだ
ナイットンは右手に持つ剣を振りかぶりアサギを追いかける
若干ナイットンの方がはやい、アサギが着地するかしないかの所で頭上から剣が振り下ろされた
「甘いっ!!」
後ろに向かって飛んでいたアサギが地面についた瞬間慣性の法則を無視して前に出る
お気に入りのぶちかましだ、ナイットンが攻撃をしようと前に出ていた事もありカウンター気味にはいったそれはナイットンの身体を硬直させた
そこに襲いかかる炎の矢、マーリンの魔法だ
(アンデットにはやっぱり火が光よね)
アサギが右肩に剣を担ぎながら考える
(スタン中じゃないとなかなか当たらないんだよねー)
それはスキルの前後の行動も決められた攻撃スキル
肩に剣を担ぐと同時に光が剣に集まり、束となって刃となす、発動すると行動が変えられないというデメリットを抱えるそのスキルはアサギの持つスキルで最大の火力を持っていた
「角度も少ししか変えられないからよく見て打たないとね、っと!!」
敵が硬直している最中だったので問題なく攻撃に成功する
しかし攻撃した後にアサギにも若干の硬直があり
「あぶなっ!」
攻撃を受け倒れていたナイットンが、起き上がると同時に剣を振るいアサギのHPを少し削った
そのまま連続攻撃を仕掛けようとしたナイットンにマーリンの魔法が降りかかる
しかしそれでも攻撃は止まらない、ナイットンは攻撃を盾に防がれているのも構わずに攻撃を続けた
アサギはその攻撃を耐えている、そして大振りになりそうな攻撃を選び盾をとっさに引き空振りを誘う
地面に向かっていく剣の軌道をなぞるかのようにナイットンの顔面に盾をぶつけた
「よいしょお!」
ガキーンとまるで金属と金属を合わせたかのような音が響き渡る
盾をぶつけた事により大きくのけ反ったナイットンに次はお前が耐える番だとアサギは連続で攻撃を繰り出した
「まだまだぁぁあ!!」
アサギは今がチャンスと攻撃の手を休めない
避けられる攻撃は避け、止められる攻撃は止めながら攻撃を重ねていった
「ーーーオオオオォォォ!!!」
「マーリン!範囲!」
「任せろ!」
アサギの足元を超え影が広がっていく
「さっきよりも広い!私が纏めるからそれからで!」
「了解!」
影から骨が頭の方から湧き出てくる
膝くらいまで出てきた時アサギは地面に剣を突き刺した
パラディンらしく光属性のそのスキルは足元の影の中に広がり増援されたモブを襲う
光の範囲外にいるモブは剣の先から光をのばして掴み手元に引き寄せた
そこに炎の嵐が巻き起こる
(増援は問題ない、問題はナイットンの変化だ!)
アサギは剣を握り直し、前を見つめた




