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聖騎士の恐怖

時間がぁ・・・たりなぁい・・・

電車の中でしかかけなぁぁぁい・・・

「物欲センサーと言うのは本当にどうにもならないわね・・・」


 ただいま5周目である

 武器は未だに一つもでていない

 迷宮のクールタイム、所謂CTは3時間と少し長いがそれはこちらの世界の事、現実世界では1時間である

 出待ちしているプレイヤーがいる事など微塵も考えてない3人はCTが終わるまで食事、お風呂、宿題などをしていた

 元々3時間は入れないとわかっていたので内部の敵を全滅させていたので一周するのにも少し時間はかかる

 たまに巡回している敵をセッキーがひっかけて多くの敵に囲まれる事があったり、出現率の少し低い中ボスを倒してはドロップがしょぼいと嘆いたり、お風呂が比較的早く終わったマーリンが迷宮の入り口で料理をしていたりと時間はあっという間に巡っていった


「そーいやさっき料理作ってたけど何作ったの?」


 このゲームには満腹度というステータスはない

 ゲーム内でご飯を食べると、ましては美味しい味付けにしてしまうと現実世界で食事を取らなくなってしまうのでは?なんて声があがったからだ


 ではこの世界における料理の存在はどう言ったものか、簡単に言えばバフである

 料理は材料さえあればどこでも作れる

 材料はNPCが売ってたり採取したりモブからドロップしたりと入手するのは簡単だ

 料理は基本的に1時間だけ1種類のステータスをあげる、重ね掛けはできずに後から食べた物が適応される、同じ物を食べると効果時間が延長するが6時間までしか延長させる事ができない

 レアな食材を料理スキルの高い人が使えばより効果の高い料理が作れる


「イベント用にDEXあげる料理とVITのだな、VITは一応2人の分として作ったけど自分で作ってるなら売るか俺が使うかだなー」


「あー、私まだ全然料理あげてないから欲しいな、セッキーは?」


「効果量次第では欲しいけど、ああ、私が作れるのより多いわね、もらっておくわ、ありがとう、いつの間にこんなにあげたのよ?」


「んー、最近野良パーティつまらなくてなー、だからお前らがいない時にあげてたんだよ」


「ん?マーリン野良とか行ってたんだ?」


 野良パーティとは適当に集まってレベリングなどして適当に解散するパーティである

 本来なら野良を繰り返して気の合う仲間を探すのもMMOの楽しさではあるのだが元々3人でやろうとしていたマーリンからしたらただの暇潰しだったようだ


「ああ、でもなー、火力抑えないといけなくてつまらなくてな、うちの聖騎士様はヘイト管理が超絶上手いから俺が最大火力をだしてもヘイトがこっちに来ないじゃん?なかなか野良はそうはいかないからなー」


「ああ、それはわかるわ、私もちょっと野良に混ざった事あるけどどうしても忙しくなるのよね、耐久力も低いしヘイトは流れるし、ほんとうちの聖騎士様は優秀ね」


「そ、そうかなー、くふふふふ」


 うんうん、と2人は頷く


「でもどうやってヘイト取ってるんだ?ヘイト取るスキルそんなにあるっけ?」


「あー、もちろんパラディンのスキルにヘイト取るのはあってそれも取ってるけど多分それだけじゃないかな、ダンチョーに教えてもらったんだよ、ヘイト管理の仕方、例えば相手の行動を阻害するとヘイトあがる、とかね、攻撃する前に止める為に武器の前に盾だしたり、膝蹴って体重移動を邪魔したりね、それの違いじゃないかな?後は盾のレベルがあがって私のヘイトを上げる行動に補正がつくようになりましたー」


「なるほど、色々やってたのにも理由があったのね、それにしても良い装備3つも持ってて羨ましいわ」


「アサギが羨ましいからセッキーの物欲センサーは凄い事になってるんだろうなー」


「んー、そこは否定できないわね、私も特別な装備が欲しいわー」


 アサギが教皇になった時、あの時に一緒にいればセッキーをエルダープリーストにできたのに、そう思う事は何度もあった

 聖騎士でも割り切れない事もあったのだ


「大丈夫だよ、セッキー!出るまで周れば100パーセントだよ!一緒に頑張ろう!」


 今はエルダープリーストの事を話してもなれる訳ではない、いつか任命スキルを使えるまで、その時まで一緒に頑張ろう、アサギはその想いも乗せた


「当然俺の頑張るぜ!俺も欲しいからな!」


 そんなこんなで5周目の対ナイットン戦、25パーセント時のランダムターゲットはセッキーとマーリンを同じ方向にいてもらう事で解決させる


 アサギに来ればただ防げばいい、2人に行けば足をかければいい

 大分足を使うのが上手くなってきたようだ

 ダンチョーに感謝である


「はー、おちねー!!!」


「まあ、確率は知らないけどレアなんかそんなもんでしょ、欲しいのはわかるし落ちたって結果が欲しいのもわかるけどね、まだまだよ」


「んー、でも時間的にも次で最後かな?セッキー、マーリン大丈夫?眠くない?」


「超余裕、時間までまた料理スキルあげてくる」


「私も料理あげちゃおうかしら、素材なら今でも持ってるし」


「じゃあ私ちょっとログアウトするからまた後でね、時間までには戻るよ」


「「はーい」」





 3人が休憩している時、外にいるプレイヤーはと言うと・・・


 そのプレイヤーは迷宮の門番に邪魔だと言われないで、尚且つ中から人が出てきても絶対見逃さないだろうと言う場所に座り込みながら考えていた


(出てこない・・・入り口がこっちなだけで出口は別なのか、まだレベリングしてるのか、もしくは死に戻りしたのか、中でログアウトしたのか・・・いや、中に敵がいるとわかった訳じゃあないし・・・いや、仮に中に敵が居るとしてこんだけの時間狩りしてるなら普通バッグがいっぱいになって戻ってくるはずだ・・・となると別に中にダンジョンがある訳じゃないのか?たまたまなにかのクエストで通過しただけ・・・?)


 ゲーム的に考えればこのような所にはダンジョンがある

 墓地という事、その前に有無を言わさず通さない門番が立っている事

 だからこのプレイヤーがここはダンジョンの入り口だと思うのは自然な事だった


 しかしこのプレイヤーが考えたダンジョンと実際の骨の迷宮との差が思考を別の所に追いやっていた


 まずここがインスタンスダンジョンでありCTがあるので待っている時間の全てで敵と戦っている訳ではないと言う事

 内部の敵を全滅させているとは言えそう広くないダンジョンなのでそこまで敵の種類は多くない

 同じ種類のアイテムはバッグの中で重なるのでそこまで中身を圧迫するほどの種類はないのだ

 しかもこの3人は固定でパーティを組んでいる為に精算作業なんかはいつでもいい

 元々リアルの知り合いで尚且つ野良に行く気がなくなった2人と最初から行く気がないアサギのバッグはもはや共用していると言ってもいい現状だ、その事がバッグがいっぱいなので帰還する、という行為を必要最低限の物にした


 だがしかし、それが骨の迷宮からでない1番の理由ではないだろう

 一番の理由、それは当然


「次こそ武器でるといいなぁ・・・」


 リアルラックのせいである


 この5回までに武器が出ていればダンチョーに報告に戻っていただろう、そしてその時はこのプレイヤーはアサギ達に声をかけれていたはずだ

 つまりこのプレイヤーにもリアルラックが足りてないと言える

 しかしこればかりは・・・こればかりはどうにもならないのである!!!


 作者も何度同じボスを野良で倒し、何人の後続に祝福を贈り、その背中を見送ってきたか!!!


 外にいたプレイヤーは時間も遅くなってきたので帰る事にした


(掲示板で聞き込みしてみるかなー?基本的に教えてくれないよなー、でも別にダンジョンじゃなくてクエストならワンチャンあるか?1人で張り込みも現実的じゃないしな、ダンジョンだとしたら1人じゃ入れない可能性あるしまずは友人に張り込みの協力をしてもらってからかな、掲示板は)


 1人では限度があるのだ、仲の良くなったフレンドに個人チャットを送りながらプレイヤーは王都に帰って行く




 そんなこんなで料理を作りながら時間を潰しているとアサギが戻ってきた

 時間的にもちょうどいいタイミングなので6周目をはじめる


 骨の迷宮に足を踏み入れた時にアサギは違和感を感じた


「あれ?あー、んー・・・んーーー」


「どうしたのアサギ、貴女が前に行かないと私達も進めないわよ?」


「なんか違和感感じない?さっきまでとなんか違うって言うかピリピリ?してるって言うか」


「えー、そんなの別に・・・ねぇ、アサギ、そのピリピリってやっぱり奥の方に感じるの?」


「え、うん」


「じゃあロイヤルナイトが来たのかもしれないわね!!」


「ああ、なるほど、んー・・・」


「どうしたんだ、アサギ、嬉しくないのか?セッキーなんかすげー興奮してるぞ」


「あ、いや、思ってたり強い、かな・・・って」


 その言葉を聞いたセッキーがアサギの肩に掴みかかる


「アサギ!さっき作ったVIT料理あげる!勝つのよ!!イベント用に作ってたけど一番いいのをあげるから!!」


「う、うんうん、頑張る」


「頑張るだけじゃ駄目なのよ!勝つのよアサギ、ねぇわかったの?かーつーのーよー」


 セッキーがアサギを前後に揺する


「うんうん、勝つ!勝つよセッキー、私は超勝つ、いや、もう勝ったかもしれないよ!」


 セッキーがピタリと止まる


「ならいいのよ」


 その笑顔は今までで1番の輝きだった


 これでいなかったらどーすんだ?マーリンはそう思ったが空気を読んだ

 できる男である


「それならいくわよ!はい、これね、アサギ一個しかないからボス前に食べるのよ!よし、準備はいいわね?じゃあ、アサギ、行きなさい!!」


 別にセッキーの分の武器がでるかどうかはわからないんだけどなぁ、アサギはそう思ったが口に出さなかった

 できる聖騎士である


「じゃあいくよー!」


「「おおー!!」」


 今のセッキーは少し怖い、そんな事を一切顔に出す事なく6周目の攻略が始まったのであった

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